4章13話 帰還、そして初夜
数日後――、
ロイ御一行はようやく癒しの都、ツァールトクヴェレから、王都、オラーケルシュタットに帰ってこられた。
余談だが、ロイが一度別荘に帰った時、彼は本当に感動あまり少々子どもっぽくはしゃいでしまったが……無論、別荘は別荘だ。
王国の住民票に記載されている現住所は七星団学院の寄宿舎ということになっている。
(――――でも、みんなはあそこで、あの別荘で、ずっとずっと、ボクの帰りを待っていてくれたんだよね。今回の戦いのいわゆる自分の帰る場所があの別荘で、そこに実際に帰ってこられた時、改めてみんなに、おかえり、って言われて、本当に涙ぐんじゃうほど感動したなぁ――。でも……)
と、『でも』という接続詞を心の中で呟いた瞬間、少し、ロイは落ち込んだ表情になってしまう。
なぜかというと言わずもがな、果てしなく長くて、そして肉体的にも精神的にもきつい旅路になってしまったが、よくよく当初の目的を思い出せば自明だった。
(あはは……、全然、1mmたりとも慰安旅行じゃなかったなぁ……)
そう、もともとイヴが温泉のチケットをクジ引きで当てて、そこで、ロイは「最近、死にかけすぎぃ!」ということで、身体を休めるために冬休みを利用してツァールトクヴェレを訪れていたのだ。
しかし、リザードマンとの戦いでは身体を燃やされて――、
ガクトとの戦いでは失明して、両足をダメにされて、雪が降る森に残されて――、
最後の戦闘では、本当に死んで――、
これのどこか慰安旅行だ!? ふざけるもの大概にしろ!?
ロイが穏やかな性格でなければ、そう暴れ回っても、なんら不思議ではない旅行である。
しかもその上――、
「あと少しで学院かぁ……」
遠い目をするロイ。その背中には哀愁さえ漂っている気がする。
普段講義を休まない真面目な彼であったが――サボりたかった。追加で1週間……いや、1日だけでいいから冬休みを延長したかった。それはもう、切実に。
グーテランド七星団学院の冬休みはかなり長い方で、ロイの前世の日本の学校の長期休暇なんて比べ物にならない。
というより、日本の休暇が前世の他の国々から見ても、あるいは現世のグーテランドの教育機関と比べても、ありえないぐらい短いだけなのだが……それは置いておいて、とにかく学院の冬休みは本人の体感的にかなり長いはずだったのだが――、
「冬休みって、『冬』の『休』暇って書いて冬休みだよねぇ……。おかしいなぁ、ボク、休んだ記憶がないなぁ……」
なんてことをロイは今、『とある部屋』のベッドに腰かけて嘆いていた。
その部屋は彼の寄宿舎の自室の5倍以上も広く、天井も恐らく5m近くということでかなり高く、ベッドは3人が身体を『大』の字に広げても余裕があるほどで、しかも天蓋付きである。
そして、この部屋の主は今――、
「ロイ様、今、シャワー終わりましたわ……」
と、部屋のドアが開いて、ベビードール姿のヴィクトリア――つまり、ロイと結婚してしまったグーテランドのお姫様が姿を現す。
ベビードールを着ているということで露出度はかなり高く、豊満な胸の谷間や白くて綺麗な太ももさえ、惜しげもなく晒されている。両肩にかかる紐をズラせばベビードールはあっけなくパサッと床に落ちてしまい、一瞬でヴィクトリアを裸にできるだろう。
一国のお姫様のあられもない姿、自分だけが脱がすことを許された王族の下着。
それを視界に入れた瞬間、ロイの心臓はドキッと強く跳ねる。赤面しているのを自覚できて、全身が燃えるように熱い。緊張と興奮がない交ぜになって、ヴィクトリアのその姿を見続けていると頭が沸騰さえしそうだった。
白百合のように穢れを知らない白い柔肌はとにもかくにも瑞々しくて、見惚れて呼吸を忘れるほど美しい。
まるで宝石、トパーズのように綺麗な瞳は熱っぽく潤んでいて、不安げに揺れていた。
これから自分がすることを思うと、なにかを触っていないと落ち着かないのだろう。
自分の幻想的なまでに美しい銀髪、その髪先を細くて長い指先で弄る所作はとても初々しくて可憐である。
グーテランドのお姫様のこのような姿を見られる男性は世界中でただ1人、ロイしかいない。
そう思うとロイは初めてではないはずなのに、彼も彼でソワソワしてきて、すぐにでもヴィクトリアのことを強引に抱きしめたい衝動を抑えるのでやっとになってくる。
「なにか、言ってくださいまし。わたくしの身体、どこか変ですか?」
「ううん、そんなことない。すごく綺麗だよ、ヴィキー」
「~~~~っ」
ロイがヴィクトリアのことを褒めてあげると、彼女は顔から火が出そうなほど赤面して、しかし恥ずかしがらずに彼の隣に座った。
そして、百合のようないい匂いがする。華やかさの中に爽やかさもあり、その匂いに包まれているだけで安心できて、頭がボ~っとして胸が切なくなってくる。気を確かに持たないと、自我がトロトロに蕩けておかしくなってしまいそうなほど魅力的な匂いだった。
そして、だ。ベビードールを着てベッドに腰掛けていたロイの隣に自ら座った以上、ヴィクトリアもすでにそういう気分になっているのだろう。
彼女はロイの腕に抱き着いて、自身の大きくてやわらかい豊満な女の子の部分を、むにゅ――と、形が変わるぐらい押し付けてくる。
好きな女の子の胸が自分の腕に押し付けられているのだ。ロイが嬉しくないはずがない。ずっとこうしていたいぐらいである。
しかし女の子、ヴィクトリアにだって性欲はあるのだ。ロイのその想いと同じぐらい、彼女も自分の胸を、好きな男の子に押し付けてみたかったのだろう。
同じように触り心地がこの世のモノとは思えないほどの胸であっても、シーリーンも、アリスも、ヴィクトリアも、絶妙に差異があった。
一番大きく膨らんでいて、フワフワとやわらかいのがシーリーンの胸で、他の誰よりも敏感で形がいいのはアリスの胸だろう。そしてヴィクトリアの胸はというと、まだ腕に押し付けられているだけなので、そこから判断するしかないが、シーリーンとアリスよりも、とにもかくにも肌が綺麗できめ細やかで、まるで熟した果実のように瑞々しくて触り心地があまりにも心地良すぎた。
「ロイ様」
「んっ? なに?」
「シーリーン様とアリス様は……その、なにか仰っていましたか?」
「シィは帰ってきたらシィの番だからね! って約束してきて、アリスは愛情を注ぐなら3人平等に、つまり全員に同じぐらいの愛情を注ぐこと! って注意してきたよ」
「そ、そうでしたか……」
どうして今、『このような状況』になったのかというと――まず、すでにロイはヴィクトリアと結婚して王族の一員ということになっていたのは前述のとおりだ。
でなければ【聖約:生命再望】を発動できなかったのだから当たり前だが……それで、結婚から数日経っているが、本日王都に戻ってきて、落ち着くことができて、いわゆる初夜という時間を2人は過ごすことになったのである。
アルバート曰く「なにをするのも勝手だが、なにをするにしても、まず、2人でゆっくりと語り合う場、落ち着ける時間を設けなさい」とのことだ。
これにいやらしい意味は100%ないとは言えないが、しかし実際ほとんどなく、流石にロイの最近の出来事は千変万化という言葉が可愛く思えるほど波乱に満ちていたので、心の整理をしたまえ、という意味で、配慮してくれたに違いない。
で、シーリーンとアリスの反応は今、ロイが説明したとおりだった。
無論、アルバートが配慮にどのようなニュアンスを込めたとしても、結婚をすませた男女が初めての2人きりの夜にすることといえば、どう考えても1つしかない。
「ヴィキー」
「は、はいっ!」
「目、瞑って?」
「――――」
ロイに言われたとおりにヴィクトリアは目を瞑る。
女の子らしい夢見がちな長いまつげは不安げに揺れて、まるでロイのことを扇情しているようである。
華奢な両肩はわずかに震えていてが、しかし唇を自分から突き出してきているあたり、不安もあるけど、ヴィクトリアだって興味があるし、ここまできたのだ。
初めての経験を期待しているのだろう。
そして――、
ロイはヴィクトリアのあごをクイッ、と上に向かせて――、
「――――」
「んんっ――、は、ぁ、んっ――――」
ついに、ヴィクトリアはロイにファーストキスを捧げた。
やわらかい、やわらかい、想像を絶するぐらいやわらかい。同じ人間という種族でも、女の子というだけで信じられないぐらい唇がやわらかかった。
瑞々しくて、小さくて、可愛らしくて、愛くるしくて、そして、やはりどうにもこうにもやわらかい。
ロイはヴィクトリアのことが好きで、好きで、愛おしくて、もう一生、息が吸えなくても唇を離したくないとさえ思ってしまう。
しかし一方――ファーストキスで、ヴィクトリアもスイッチが入ってしまったのだろう。
2人は両想いだったが、ヴィクトリアはまだ処女だった。ゆえに、もしかしたら拒まれるかもしれないという不安もあったのだが――流石にここまでくれば、あとはもう、興味があったことを全部、最愛のロイにお願いするだけだった。
理性が蕩けて、身体が動きたいように勝手に動く。身体の至るところの火照るような切なさを、我慢する理由なんてなにもない。
初めて思春期というモノを、言葉ではなく、感覚として知ったのだろう。
ただひたすらに、ロイで自分を満たしたい。
どうにもこうにも自分を抑えることができず、なんとヴィクトリアはファーストキスなのにも関わらず、その状態のままロイの手を自分の胸に誘導した。
そこまでされれば、むしろ胸を揉まないための逃げ道はない。ロイに胸を揉まれて、感じて、ヴィクトリアは嬉しそうに身体を揺らす。
しかしそれだけで自分の中に溜まるなにかをヴィクトリアは発散できず、なんと今度は、またもや自分からロイのことをベッドに押し倒した。結果、彼女がロイに馬乗りになる形になった。
と、そこでロイは薄々と察してしまう。
シーリーンとの愛し合いの特徴が〈
シーリーンとアリスだって、ロイとこういうことをするのは大好きだった。というより、世界で一番好きなことと言っても過言ではない。
とはいえ十中八九、スイッチが入ったヴィクトリアはシーリーンよりも、アリスよりも、シンプルにいやらしいことに貪欲だった。
「~~~~っ、ろ、ロイ様――」
「なっ、なに、ヴィキー?」
「――その、い、淫乱な処女は、お嫌いですか?」
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