4章13話 夜の教室で、風紀を乱して――(2)



 十数分後――、

 ロイとアリスは誰もいない暗い講義室で2人きりになる。


 窓からは中庭や街のガス灯の明かりが差し込むものの、目が慣れてこないと少し足元がおぼつかないぐらいには暗い。

 だが逆に目さえ慣れてしまえば、窓から見える夜景はとても綺麗で、ここはまるで夜景を眺める丘のようにも思えた。


 静まり返った薄暗い夜の学院に、恋人同士の男の子と女の子が2人きり。

 その事実を改めて認識すると、アリスはふと、ロイの身体に抱き付いた。


「あっ、アリス!?」

「ねぇ、ロイ、私ね? まだ不安なのよ」


「ふ、不安?」

「そう。もしかしたら、今、私は夢を見ているだけで、目を覚ましたら本物の政略結婚が始まるんじゃないか、って。不安というより、なんていうか、心細いのよね」


「――――」

「1人じゃ、寂しくて……お願い、ロイ」


「な――に?」

「私に一生忘れられない傷を付けて?」


 そう言われて、ロイの心臓がバクバクと物凄い勢いで早鐘を打ち始める。

 その言葉の意味が通じないほど、ロイはもう、子どもではなかった。


「もしもこれが夢で、痛いと夢から覚めるって言うのなら――その痛みは、一番幸せな痛みがいいわ」


 アリスはなおのこと強く、ロイのことを抱きしめる。

 そのエルフ特有の女の子らしく細い身体は、かすかに震えていた。


 アリスの胸がロイの身体に押し付けられる。

 大きくもないが小さくもなく、アスリートみたいにバランスの取れた健康的な曲線を描く膨らみだった。


 すごくやわらかい。


 だが肉体的な感触以上に、自分の好きな女の子が、自分の身体に女の子の大切な部分を押し当てている。

 という事実そのものに、ロイは嬉しくて、だけど死ぬほど気恥ずかしくて、身体が火照りを覚え始める。


 好きな女の子が、自分から胸を当ててくる。

 好きな女の子が、自分になら触られてもいいと許してくれている。


 初めてではないはずなのに、ロイは初めてのようにドキドキした。

 それもそうだろう。ロイにはシーリーンがいるが、実は彼女からの許しは出ている。


 境界させ曖昧になった背徳感と高揚感。

 ウソ偽りなく生まれて初めての経験、感覚に、すでにシーリーンがいるロイも、いつもは真面目なアリスも、愛し合いたいという衝動にれていた。


「わかったよ、アリス」

「――ぅん」


 アリスは頬を赤らめて、小さく、本当に小さく頷いた。


「でも、痛かったとしても、なにも変わらないよ。そもそも夢なんて、見ていないからね

「――――」


「だから、痛いのに夢じゃなくて現実で、ボクに初めてを捧げた、ってことになっても――」

「恨まないわよ。むしろ、それが一番いいわ」


 そこまで聞いてロイは一回、アリスの花の蕾のように可憐で、桜色の唇を自分のそれで塞ぐ。

 次にアリスの身体をまるでガラス細工を扱う時のように、大切に、優しく講義室の机の上に横たわらせた。


「そういえば……当たり前だけど初めてって、痛いのよね?」 

「えっ? よくそんなふうに聞くけど……」


「じゃあ――


Es心から muss von引き出された Herzenモノで kommenなければ, was人の auf心を Herzen惹きつける wirkenことは sollできない. Es wird貴方 sein, dass man derjenige愛して warから, wie私は viel私に es tutとって, wasどれ fürほど sichかけ selbstがえの einenない Wert自分 hat, danachなれた liebst du michだろうか. Ich今は weißまだ es nochわから nichtない. Aberだけど diesesこの想いは Gefühl本物 ist realだから, also私は werdeきっと ichこの es sicher選択を nicht悔やま bereuenない.


――【夢のごとき御伽噺】イデアール・シュテルネンリヒト


 瞬間、ロイの身体がムズムズしてきた。

 ムズムズしてきたと言っても、最初から性欲が湧いてくるわけではない。


 身体の表面、つまり肌が、性感帯でもないのに、そこを弄られるよりもさらに数百倍ぐらい気持ちよかったのだ。

 その焦れったい感じにより、副作用としてそういう気分が湧いてくる感じである。


 それにしても、と、ロイは思う。

 肌が服に擦れただけでこんなにも気持ちいいのなら、より大切なところをアリスに触ってもらったら、どれだけ気持ちいいのだろうか、と。


「あ……っ、アリ、ス、これは?」

「エルフ・ル・ドーラ家に代々伝わる、性の魔術よ。簡単に言うと、身体の感度を弄らせてもらったわ」


 事実、ロイだけではなく、アリスも太ももをかなり内股にして、物ほしそうにモジモジと擦り合わせていた。

 頬はますます赤らんで、時間が経つにつれて、吐息が荒く、扇情的になっていく。


「その……こ、こっ、これならっ、なんていうか……初めてでも、気持ちよくなれると思うのよ」

「え?」


「え……ってなによ?」

「それじゃあ痛みなんてわからないんじゃない?」


「うぐ……ロイのイジワル」

「えっ?」


「……察しなさいよ。建前がないと、恥ずかしいことぐらい」


 不満げに頬を膨らませるアリス。

 彼女にしてはやたら子どもっぽい仕草だった。


「でも、いいの?」

「えっ?」


「ここ学院だよ? 昼間はいつも、みんなが勉学に励んでいる講義室だよ? そんなところで愛し合うなんて――」

「むっ」


「優等生のアリスがこんなことしていいのかな~?」

「べ、っ、別にいいじゃない。勉強よりも大切なことがあるんだから……。それに、いつも優等生であることを求められていたからかしら? すごく……、その……、こ、興奮、してる、のよ……」


「――――」

「ねぇ、ロイ? 今夜だけ、一緒に風紀を乱しましょう?」


 そうして、アリスはバラのような微笑みを咲かせて、今宵、純潔を最愛の男の子に捧げたのだった。


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