ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
4章10話 みんなの前で、ただ1人に伝えたくて――(1)
4章10話 みんなの前で、ただ1人に伝えたくて――(1)
エルヴィスが帰ったあと。
この日はラピスラズリの月の2日で、つまるところ月曜日だった。
当然、シーリーンやアリスたちは学院に通っている。
なので放課後、みんながロイのお見舞いにやってきてくれた。
「お兄ちゃん、入るよ~?」
と、イヴの声が聞こえたのと同時に、病室の引き戸が開く。
「弟くん、お見舞いにリンゴを持ってきました。あとで切りますからね♪」
言うと、マリアもイヴに続いて入室してきた。
そして――、
「ほら! アリスっ、入って入って?」
「ぐっ……わかっているわよ」
最後に、シーリーンと、彼女に背中を押されたアリスが入ってくる。
が、なぜかアリスの頬には乙女色が差していた。しかも瞳を潤ませて、きゅっ、と、口を
ちなみにその後ろのシーリーンはというと、そんなアリスを見かねた様子で、彼女の背中をトン、と、優しく叩く。
結果、一歩前に出るアリス。
そうして病室の中はベッドの上で上半身を起こしているロイと、彼と向き合うように立つアリスが中心になった。どうも2人の様子を見守ろうとしているらしく、他の3人は一言も喋らない。
「――アリス」
「ひゃ、ひゃい!」
アリスがなかなか喋ろうとしなかったので、ロイは助け舟を出すつもりで彼女の名前を優しく呼んだ。
一方、アリスはなぜかロイを相手に緊張していて、思わず舌を噛んでしまう。
恥ずかしさのあまり、ますます顔を赤らめるアリス。
そんなアリスが微笑ましくて、ロイはクスクスと口元を緩めた。
「アリス」
「……なにかしら?」
「正直、ボクは今回の騒動で、本気で、自分がいいことをしたのか、悪いことをしたのか、判別が付かないんだ」
「――――」
「仮に、あくまでも仮にだけど、良し悪しの基準をアリスだけに絞ったところでもそうだ。アリスが結婚することがなくなって喜んでいるっていう可能性だけじゃなく、実はもうボクと先輩がくる時点で、どんな理由にしても結婚を認めていて、なに邪魔をしているの、って、怒っている可能性もあるしね」
「ロイ……」
「だから、聞かせてほしいんだ」
「うん」
「ボクはキミに対して、胸を張れることをできていたかな?」
瞬間――、
アリスはロイに近付いた。
一歩、一歩、ゆっくりと。
まるで世界がスローモーションになったような感じがする。
そして、アリスはロイのベッドの目の前にくると――、
――その存在を確かめるように、彼に思いっきり抱き付いた。
「あっ、アリス!?」
「バカね――ロイ、あなたは間違いなく、私を救ったのよ」
アリスは苦笑交じりに泣きそうになる。
そんな彼女に、ロイは続きを促した。
「じゃあ――」
「うん、他の誰かにとって悪いことだとしても、私にとって、ロイはいいことをしてくれた。それは、それだけは、私にとって紛れもない事実よ」
「そっか」
「えぇ」
「――よかった。――ボクは自分らしく生きても、誰かのためになれたんだ」
そっと、ロイはアリスの背中に左腕を回す。
するとアリスもそれに応えるために、さらに彼を抱く腕に優しく力を込めた。
ロイはアリスの背中に回された腕を、身体に当たっている胸を、そして生きている証明である体温を、全身で感じる。
これが、これこそが、自分の守ったモノなんだ、と、自分で自分に言い聞かせるように。
抱擁を交わすロイとアリス。
そんな2人の様子を、シーリーンは優しい微笑みを浮かべながら、イヴは少しだけ納得がいっていない感じで、マリアは少しアリスのことが羨ましそうに、ずっと、ずっと、邪魔をしないで見守っていてあげていた。
「ねぇ、ロイ」
アリスが愛おしそうにゆっくりと、ロイの耳元で彼の名前を囁いた。
続いて彼女は名残惜しそうにロイから身体を離して目をあわす。
嗚呼、名残惜しいけれど、『これ』はロイの顔を正面から見て言わないといけないことだ、と、自分で自分を応援して――。
「――なにかな?」
ロイがアリスに語りかける。
2人は互いに、互いの目を見て穏やかにはにかんだ。
もしかしたら、拒絶されるかもしれない。
もしかしたら、シーリーンがいるから、自分の想いは叶わないかもしれない。
だが、それでもいい、と、アリスは心の中で、誰にもナイショで決意を改める。
拒絶されるよりも、伝えられない方がイヤだ。
想いが叶わないとしても、ロイにはせめて、この気持ちを知っていてほしい。
一般的にいう、断られるとか、振られるとか、そういうリスク。
告白なんてモノは、そのリスクを恋心が乗り越えた時にのみ言葉にできるものだ。
リスクなんて顧みない。
リスクを背負ってでも、心から溢れたこの気持ちを、今、ロイに伝える。
「――私は、ロイが好き。――私を、あなたの恋人にしてください」
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