ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
1章15話 決闘のあとで、さらに決闘を――(4)
1章15話 決闘のあとで、さらに決闘を――(4)
(俺がアスカロンで防いだあと、あいつが次になにをするのかが推測できねぇ!)
レナードの悪いクセだった。ロイならば考えるよりも先に身体が動くのだろうが、彼の場合は逆で、動くよりも先に考えてしまう傾向にある。
ロイのスタンスもレナードのスタンスも一長一短ではあるが、今に限って言えば、レナードのそれは悪手だった。
「クソがァ! アスカロン……ッッ」
考えても答えが見付からないうちに限界を迎え、最終的にレナードはアスカロンで【魔術大砲】を斬ろうとする。
だが、それは間違いだった。
「爆ッ、散ッ!」
「……ッッ!?」
なぜか、アスカロンで斬る前に【魔術大砲】が破裂した。
斬ることはおろか、まだ1mmも【魔術大砲】に触れていなかったのに、である。
奔流する暴力的な魔力の災禍、それはまるで魔術的な竜巻や渦潮のようでさえあった。
暴風が轟々と辺り一帯を蹂躙して、常軌を逸した量の魔力が、肌をジリジリと焦がし尽くそうと不可視の二次攻撃を開始する。
魔術師が魔力を感知する際に使うのは皮膚感覚だ。圧倒的な光が閃光弾になるのと同様に、圧倒的な魔力も魔術的な目眩ましとして作用する。
状況は絶望的と言っても過言ではない。これよりも強い魔術は数多くあるが、流石は魔王軍との戦争でも多用されるほどに、
そして数秒後――、
――砂煙が晴れると、そこには満身創痍になったレナードの姿があった。
流石にアスカロンは壊れなかったが、右手がボロ炭のように焦げていて、どうやら右足に至っては骨折したらしい。
左手で身体の側面を押さえているあたり、肋骨を2本か3本折ったのかもしれない。
「君の聖剣、アスカロンと言ったか」
「ゲホ……っ」
レナードはもはや、言葉を返すことができない。
代わりに口から血の唾を吐き捨てて、ギラついた双眸でアリエルを(俺はまだ負けちゃいねぇ、まだ戦える)と、そう主張するように睨むだけだった。
「アスカロンのスキル、まるで見当も付かない。しかし、ただ1つだけわかることがあるとしたら、スキルの発動条件がスキルの対象にしたいモノを斬る、ということだ」
「カハ……テメェ……っ」
「なら、斬られる前に魔術を解除すればいいだけの話だろう? 魔術を解除する時、普通は解除の対象である魔術がなんらかの暴走を起こさないように慎重に解除するものだ。が……今回はあえて被害が出るように解除したのだ。普通の解除よりも手間がない」
涼しげな
翻ってレナードは苦虫を噛み潰したような
「…………ッッ、
だが、レナードはまだ諦めていない。
ヒーリングすれば、全快することは叶わなくても、剣を振るうことぐらいはできるはずだから。しかし――、
「……ッッ、な、ぜ?」
何度詠唱しても、彼を回復させる魔術は発動しなかった。
それに一瞥をくれながら、答え合わせしてあげられる余裕さえ見せて、アリエルは実際に語り始める。
「――【零の境地】を永続発動しているのだよ。聖剣使いである君にあわせて剣でたとえるなら、【零の境地】という剣で一回だけ敵を斬るのではなく、切っ先を突き刺して、そのまま剣を抜かないようなものだ」
これでレナードの回復手段はなくなった。
そしてトドメと言わんばかりに、アリエルは右手の親指と人差し指を軽快に鳴らす。
刹那、【魔術大砲】が顕現した。
動くことが不可能な敵など、いつでも撃ち抜けると言わんばかりに、【魔術大砲】はアリエルの頭上で待機している。
もうこれ以上、勝敗が揺れ動くことはない。
アリエルは最後に1つ、レナードに聞きたいことを聞くために訊いた。
「レナード君、君の負けだ」
「――――」
「最後に言い残すことはあるか?」
ふいに、レナードはアスカロンの切っ先を地面に刺した。
次にアスカロンを柄から手を離して、自分から進んで攻撃を受けるように、両腕を広げて【魔術大砲】を受け入れる構えを取る。
言い訳はしない。
駄々をこねたりも、ウジウジしたりもしない。
負けは負けだ。自分は負けたのだ。
潔さだけが自分の取り柄である。
だが、潔いことと全てを諦めることは、全くの別だと信じて――、
「俺はテメェに負けた。だが、絶対に次は勝つ」
「倒すことには変わりないが、やはり、嫌いになれないな、君たちのような若者は」
やり取りはそれで終わりだった。
アリエルの頭上で待機していた【魔術大砲】がついに発射され、レナードに向かって迫りくる。そして10分の1秒にも満たない刹那のあと、レナードを中心に大規模な爆発が起きたのだった。
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