ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
1章8話 挑発のあとで、決闘を――(1)
1章8話 挑発のあとで、決闘を――(1)
紛うことなく、ロイがアリエルに白状したことは不敬に値する。ゆえに本来、アリエルがロイに礼節を払う必要などどこにもない。
だからアリエルがロイに応えたのは、この少年に覚悟には応じなければならない、という一種の良心が理由だった。貴族としての矜持、ノーブルオブリゲーションの一種と捉えてもいいだろう。
(なんでもかんでも不敬罪にすればいいというものではない。民意を汲んで初めて、貴族は庶民の上に立つことができるのだから)
アリエルは内心でそう呟き、ロイの目を見て彼の真価を量る。
若さゆえか、愚直ではあるが嫌いにはなれそうにない。そこで王国の上流階級、貴族として、アリエルはこの少年にどう向かい合えばいいかを考えた。
自明。
目の前の少年の双眸に宿る覚悟は『戦う覚悟』だ。
ならば、面と向かって戦ってやるのがアリエルの流儀である。
「私が勝てばアリスは連れていく」
「ボクが勝ったら、アリスさんを学院に留まらせてください」
実はアリエルはグーテランド七星団学院の卒業生だった。
幸いにも、学院の決闘場は卒業生でも使えたので、こうして今、そこでロイとアリエルは決闘に臨もうとしている。
観客はシーリーンとアリス、そしてイヴとマリアの4人しかいない。
その4人の想いを一身に背負って、ステージの上で、ロイはアリエルと対峙する。
もう空は完璧に夜の色になっていた。
まるで寿命を迎えそうな星が煌々と燃えるように、西の果てに夕日がほとんど沈んでいる。
その煌めきを背に、ロイは右手を前方にかざした。
純白の輝きを瞬かせ、黄金の風が渦巻き始める。そして――、
「 顕現せよ、エクスカリバー 」
主に参集を命じられた騎士のように、颯爽とエクスカリバーはロイの右手に顕現する。
己が聖剣を両手で構えて、ロイは気高く光る切っ先を貴族であるアリエルに向けた。
翻ってアリエルはいつでも魔術を撃てるように右手をロイに向け、静かに、ゆっくり、息を吐く。
次いで調子を整えるように、右足を2回足踏みさせた。
そして――、
「来たまえ」
――そのたった一言で、決闘が始まった。
「
早々にロイは肉体強化の魔術を自分の身体にキャストする。
疾風のごとく駆け抜けて、ロイはアリエルに速攻を仕掛けようとした。
対してアリエルは――自分の左足を2回、その場で足踏みさせるだけ。
だが、たったそれでロイの速攻は阻まれた。
突如としてロイは走っている最中にバランスを崩して、強く前方につんのめる。
(これは……
なんとかロイは身体のバランスを立て直す。
だがその時すでに、アリエルの次の一手は発動していた。
アリエルは右手の親指と人差し指を高速で3回鳴らす。
その瞬間――、
「これは……ッ!?」
「――
「しかも詠唱を零砕してトリプルキャスト……ッッ!!!」
大気が唸るような重低音を木霊しながら、3つの魔力の砲弾がロイを討つべく轟々と迫る。
ダメだ。これは今の自分の
その結果、決闘場そのものを揺るがすような大爆発が巻き起こった。
爆風がシーリーンたちのいる観客席まで届き、竜巻を彷彿させるような上昇気流がステージの中心に荒れ狂う。
「ハッ」
と、アリエルは鼻で笑う。
ロイの思惑などお見通しなのだろう。
しかしその上で――、
(この疑似的な煙幕で、少しでも時間を稼げれば……!!)
事実として、ロイは時間を稼ぐことに成功した。
しかし彼が灰燼の中から聖剣を振りながら、アリエルに突撃しようとした、次の瞬間のことだった。
塵芥が舞う領域から、ロイがアリエルのところまで辿り着くと――十中八九、アリエルはロイがどの方向から突撃してくるのかを察知していたのだろう。
彼は予め右手の親指と人差し指を鳴らす構えで向けて終えていたのだ。
「索敵魔術!? しかも、また詠唱を零砕して……ッッ!!!」
「――爆ぜたまえ」
刹那、【魔術大砲】が至近距離で発動する。
以前、ジェレミアに受けた【魔弾】とは比較にならない、圧倒的な暴虐がロイに襲いかかろうとした。左右にステップしても避けきれないし、後方に跳躍したところで、【魔術大砲】の射線からはどう足掻いても外れない。
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