ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
4章4話 ひとりで、抱え込んで――(1)
4章4話 ひとりで、抱え込んで――(1)
昨夜、シーリーンには事情を説明したものの、イヴとマリアはまだ本当のことを知らなかった。
とはいえ20歳も年上の男と政略結婚させられるなんて、あまり大っぴらにしていい事実ではない。偽物の関係とはいえ一度は恋人同士になってしまったのだから、誤解を解く場合、その過程でどうしても政略結婚のことを話さなければならなくなる。
アリスは後ろめたさがあったものの、それを良しとしなかった。
そしてロイの方も、アリスの気持ちを優先して、イヴとマリアには伝えないことに決める。
「お兄ちゃ~ん、大好きだよ~♡」
「弟くん、両手に花ですねっ♪」
だからイヴとマリアが対抗心を抑えられず、ロイに甘えてくるのも必然だったのかもしれない。
「お兄ちゃん、ギュッ♡」
「イヴも姉さんも、少し暑いから……」
「どんなに暑くても離れませんからね?」
放課後、王都、城下街のメインストリートをいつもの5人は歩いていた。
いつもの5人とは言わずもがな、ロイ、シーリーン、アリス、イヴ、マリアのことである。
「ねぇ、アリス、イヴちゃんとマリアさんはどうしたの?」
「シィに加えて、表向きは私までロイと付き合うことになったでしょ? お兄ちゃん、もしくは弟くんを奪われないように、対抗心を燃やしているんじゃないかしら?」
事実としてアリスの言うとおりだった。
ロイと、彼の両腕に抱き付く姉妹を少し後方から眺めながら、シーリーンとアリスは前の3人に聞こえないように会話を続ける。
「ぐぬぬ……、アリスはともかく、シィは本物の恋人さんなのにぃ……。シィの目の前でイヴちゃんもマリアさんも、ロイくんにくっ付きすぎだよぉ……。シィもロイくんとイチャイチャしたいのにぃ……」
「すっかりシィはロイにメロメロなのね」
軽く、少しだけ呆れたようにアリスは言う。
一方で、シーリーンは小柄な身長に不釣り合いなほど大きい胸を自信満々に張った。
「アリスもシィの立場になったらわかると思うよ? ロイくん、本当に白馬の王子様みたいだったもん♡」
「ロイの目線で見たら違うかもしれないけれど、ヒロインであるシィの目線で見たらそうでしょうね」
「えへへ~、シィはロイくんにとってヒロインかぁ~♡ アリスも嬉しいことを言ってくれるね」
心の底から嬉しそうに微笑むシーリーン。
そんな彼女の隣を歩いて、ふと、アリスは少しだけ寂しい感じになる。
「シィはすごいわね」
「シィが? ロイくんじゃなくて?」
「言っていたでしょ、ハーレムを認められるって」
「うん、それが?」
「私も一夫多妻制については本人たちが幸せならいいと思うけれど、シィほど前向きにはなれそうにないから」
「? どういうこと?」
「その制度の社会的な意味を頭では理解していても、仮に私に好きな人ができて、その人がハーレムを作ったら、私にまで愛情は回ってくるのかなぁ、って、想像したら不安で、ね……」
「なら、ロイくんなら安心できるかも」
シーリーンは即答する。瞳に疑心はなく、口調にも迷いがない。
心の底からロイのことを信頼していて、彼と恋人であることに安心しているのだろう。
「ロイくんなら、きっと、絶対に、ハーレムを作ったとしても全員を平等に愛してくれると思うよ?」
「それ、ロイのことを持ち上げすぎじゃないかしら?」
「そうかなぁ?」
「なら、シィはなにを根拠にロイのことを信じているの?」
「ふふ、信じたいことが信じることの根拠だよ?」
そう言い切ってみせるシーリーン。
無論、ロイは悪い人間ではない。人として当たり前な優しさを持っているし、なにかを彼と約束するような時は、大半の人は彼に「彼なら約束を守るだろう」という一定の信頼感を抱くはずだ。
だがシーリーンはそれ以上だった。
自分がロイのことを信じたいから全面的に信じている。
相手であるロイではなく、彼を好きになったシーリーン自身の中に、信じられる理由、根拠がある。
なんとなく、アリスは――、
(そんな関係、羨ましいわね)
――と、ロイとシーリーンの関係が眩しく感じた。
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