ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
3章6話 通学の途中で、ニセコイが――(2)
3章6話 通学の途中で、ニセコイが――(2)
「実は私! ロイと付き合っているの!」
「「「「「――はぁ!?」」」」」
アリス以外、5人の驚愕の声が重なる。特にシーリーンとレナードの声は特大だった。
そんな5人を意に介さず、というよりも、意に介する余裕がなく、アリスはロイに近寄ると見せ付けるように彼と腕を組んだ。
いつもは不純異性交遊に厳しい彼女が、胸まで積極的に押し付けてきている。
その光景を見て、シーリーンに至っては「あばばばばばばば……」と壊れかけてさえいた。
(お願い……っ、ロイ、私に話を合わせて!)
(そうは言われても……っ)
小声でそう言われ、ロイは困惑しながらも周囲を確認した。シーリーンは今にも泣きそうだし、レナードは自分のことを本気で殺しそうな目をしている。
そしてイヴとマリアもやはり面白くなさそうで、ロイに説明を求めるような目をしていた。
「手を繋いだことはもちろんあるし、キスだってしたわ!」
「ロイくん……、アリスが相手だったらハーレムも許すのに、なんで言ってくれなかったの?」
確かに、シーリーンは以前、自分が認められない相手とロイが仲良くするのがイヤなだけで、自分が認められる相手となら、ハーレムも許せる、という類の発言をしていた。
彼女の価値観を基準にするなら、この場合、ハーレムを秘密にしていたことが問題らしい。秘密もなにも、そういう事実はないのだが……。
「ロイ、テメェ! アリスとは友達! みてぇなこと、昨日は言っていたじゃねぇか!」
今にも殴りかかりそうな勢いで、ガンを飛ばしながらレナードが声を荒らげる。
当然、ロイ自身もレナードの怒りを理解できた。でっち上げられた新事実とはいえ、この事実を採用するなら、自分が悪いことになるのは百も承知だ。
しかし、アリスはどうにも自分に話を合わせてほしいらしい。
意味がわからないが、少なくとも、切羽詰まっているのだけは理解できた
「シィ、ゴメン! 実はボク、アリスとも付き合っていたんだ!」
「むぅ~、別に一夫多妻制は法律で認められているからいいけど、ロイくんって新聞読むよね? キチンと話し合わないと、法的には良くても修羅場で事件が~、って、1ヶ月に1回は新聞に載っているよ?」
「う、うん、本当に反省している……」
「テメェ! 俺にも謝罪はねぇのか!?」
「せ、っ、先輩もすみませんでした! 秘密の関係にアリスが憧れていまして、許可なく他人に言うのも、約束を破ることだと思って……」
「ケッ、やっぱテメェは気に喰わねぇ」
と、ここでレナードはロイに近付き胸倉を掴んで、強引に彼の顔を引き寄せた。
そして苛立ち交じりにロイに物申す。
「やっぱよォ、俺はアリスを諦めねぇ。最初から言ってくれりゃ、俺だって悔しがっただろうけど、それも人生の糧だと思って成長しようとしたかもしれねぇんだ。ロイ、あの化け物が言っていた然るべきのちの再戦で、その時こそテメェからアリスを奪ってやる。覚悟しておけ、クソ野郎」
決定的に言い放つと、レナードはそのまま
その場に残されたのは(どうしてこうなった……)と嘆くロイと、(むぅ……ロイくんのバカ)といじけているシーリーンと、(さらに状況がややこしくなってしまったわ……)と冷や汗をかくアリスと、イヴとマリアだけだ。
そう、すでに講義が始まる直前ギリギリで、周囲に他の人は誰もいない。
だが始業の時間さえ失念して、ロイは重要な2つの問題について考える。
1つは今後、アリスの偽物の恋人役を恐らく、ロイは長い期間、続けなければならないということ。
もう1つは結局、レナードは諦めず、むしろ躍起、意固地にさせてしまったということだ。
「ねぇ、アリス、これって――」
「……巻き込んでしまって、ゴメンなさい」
他の3人に聞こえないように、2人はそれだけ言葉を交わす。
そしてロイは気付いた。
否、最初から気付いていた。
これはラブコメにありがちな、周囲を欺くために偽物の恋人を演じるアレだ!
「あっ、お兄ちゃん! 鐘が鳴っちゃったよぉ!?」
「わたしたち、遅刻確定ですね」
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