ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
1章4話 新しい気持ちで、接することが難しくて――(2)
1章4話 新しい気持ちで、接することが難しくて――(2)
「えへへ~」
一方で、シーリーンも大好きな白馬の王子様に頭をナデナデされて、顔がとても幸せそうにデレデレになっている。
嬉しくて嬉しくて、自然と笑みが零れてきて、彼女の心の方はロイくん大好き! という気持ちでいっぱいになっていた。
以前まで、彼女は女の子として生まれたことを不安に感じていた。
しかし今では、大好きなロイが男の子で、そのロイにこうして頭をナデナデされるなら、女の子として生まれてきてよかった、と、思えるぐらいには、自分の性別に対して前向きになれていた。
「うぅ……、シーリーンさん、ズルいよ。登校しただけでお兄ちゃんにいい子いい子されるなんて……」
「まぁ、これでシーリーンさんが毎日学院にこられるなら、わたしたちは我慢した方がいいですね。――あっ、いや、違う!」
ふと、マリアはロイに近付いた。
彼女のお姫様カットのロングストレートから、上品で甘めな女の子の匂いが香ってくる。
距離の縮め方に一瞬驚いたロイだったが、次の瞬間、彼はさらに驚くことになった。
即ち、マリアがロイの頭を撫で始めたのである!
「どっ、どうしたの、姉さん?」
「ふふっ、わたし、気付いたんですよね」
「な、なにに……?」
「ズバリ! 弟くんがシーリーンさんの頭をナデナデすることと、わたしが弟くんの頭をナデナデするのを我慢すること、あるいはイヴちゃんが弟くんからナデナデされることを我慢することは、必ずしも同義ではない! ですよね♪」
「流石お姉ちゃん! 略してさすおね!」
健やかに発育した大きな胸を張って、マリアは自信満々に宣言する。続いて有言実行と言わんばかりに、すぐにロイの頭をナデナデするのを再開した。
シーリーンが目の前にいるとはいえ、そしてマリアが血の繋がった姉とはいえ、美少女に頭をやさしく撫でられているのだ。流石にロイでもドキドキを100%我慢するのは難しい。
「弟くん、きちんと毎日登校して偉いですね~♡ お姉ちゃんの自慢の弟くんです!」
「あ、ありがと、う? ぅん?」
「お兄ちゃん、わたしも、わたしも!」
大好きなお兄ちゃんからの頭ナデナデをイヴはせがんだ。
ロイはいったんシーリーンから手を離して、今度はイヴの頭を撫でてあげる。
すると、イヴは気持ちよさそうに目を細め、やはり嬉しそうににやけ始めた。
「いや、待って。やっぱり――」
「どうしたの、ロイくん?」
「いくら元・不登校児だとしても、ボクに頭を撫でてもらうために、シィは通学することを便利な方便として使いすぎじゃないかな?」
「ぐはっ!?」
「姉さんも、もっとまともな褒める理由、なかったの?」
「弟くんが反抗期です! さっきのはわたしの本心からの言葉だったのに!」
「お兄ちゃん、わたしは?」
「イヴは……セーフかな。シィみたいになにかを建前に使っているわけじゃないし、姉さんいみたいに変な理由で強引にこじつけてないし」
「やったぁ!」
「イヴちゃん、ズルい! シィがロイくんの恋人なのに!」
「姉より褒められる妹がいてはならないんです!」
と、その時だった。
「ちょっと、ロイ! こんなところで女の子とイチャイチャするなんて……風紀が乱れちゃうじゃない!」
尖った耳が印象的なエルフの少女、アリスが登校してくる。
緑豊かな森を吹き抜ける風のようにサラサラで、エルフ特有の金色のツーサイドアップは、城下の街を縫うような爽やかな風に滑らかに揺れる。
サファイアのように蒼い凛とした瞳は、なぜか少しだけ攻撃的に、なぜか少しだけ拗ねた感じで、美少女3人とイチャイチャするロイのことを睨んでいた。
そんな金髪の美少女エルフ、アリスはロイに近付いて、彼の頬を少しだけつねってみせた。
「い、痛いよ、アリス……」
「当たり前じゃない、わざと痛くしているんだもの」
「な、なんで最近、そんなに不機嫌なの? 拗ねているっていうか、なんていうか」
「~~っ、ロイがシィと学内でイチャイチャして、風紀を乱しているからよ!」
確かにロイの言うとおり、最近、アリスはどこか不機嫌そうだった。
周りから見たら拗ねている、妬いている、つまらなそうにしているのは明らかなのに、本人は決してそれを認めようとしない。
しかし、逆に本人からしたら、たまったものではなかった。
ロイとシーリーンの仲睦まじい姿を見てしまうと、胸が苦しくなって、切なくなって、最終的にはモヤモヤしても、自分の感情に名前を付けることができていないのだから。
「まったく」
と、ここでアリスはようやくロイの頬を解放した。
そしてシーリーンの前で、彼女の恋人であるロイの手を握って、強引に学内に連れて行く。
「ほらっ、ロイ、早く行くわよ。講義が始まっちゃうじゃない」
「ちょ……っ、アリス!?」
「あぁ~っ! アリス! ロイくんはシィの恋人さんなんだよ!?」
「お兄ちゃんがアリスさんにも奪われたよ!?」
「ハァ、残念ですけど、わたしは場所が違うのであっちに行きますね? もっと弟くんと近い年に生まれたかったですね……」
このような調子で、シーリーンは学院に、少しずつ、しかし確実に復帰しつつあった。
これはその朝の光景。
しかし、その光景に、1つ、アリスは自分でもよくわからない気持ちを芽生えさせていた。
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