ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
5章16話 最高評議会で、次の戦いの幕開けが――(1)
5章16話 最高評議会で、次の戦いの幕開けが――(1)
「そういえば――」
学院の廊下を歩きながら、先日、エルヴィスにアリシアと呼ばれた女児が呟いた。
「エルヴィスさんはどうして、ロイさんがなにか策を用意しているとわかったのですか?」
「身体の動かし方だ」
アリシアに訊かれると、隣を歩いていたエルヴィスが答える。
「幻影魔術を喰らう前になんらかの衝撃で爆発してしまえば、元も子もないからな。やはりロイも決闘中、それ相応の動き方をしていた」
「具体的には?」
「特に顕著だったのは【絶火、天焦がす緋華の如く】に包囲された時だな。ジェレミア卿を言葉で攻撃していたらしいが、無意識のうちに焔を警戒しすぎていた。実際、ロイなら焔を最速で突破して、あとからヒーリングする、なんて戦いもできたはずなのに」
「警戒するのはおかしい、というわけではなく、過剰な警戒が怪しい、というわけでしたか」
「まぁ、爆弾を仕込んでいたのだから、今思えば当然の反応だ。だが、意識をそちらに向けすぎていれば、少なくともあの局面を制したのはジェレミア卿だったかもしれない」
ふと、エルヴィスはアリシアを一瞥した。
それに気付き、アリシアは彼に微笑んでみせる。
「どうかなさいましたか?」
「いや、違和感が未だに拭えないと思っただけだ」
「この外見で、特務十二星座部隊の序列第二位、という違和感ですか?」
120cm前後の身長。
まるで5歳児レベルの童顔。
胸はまったく膨らんでおらず、おしりも申し訳程度にしか曲線を描いていないほど小ぶり。
白い柔肌はとても綺麗で、やわらかそうで、滑らかそうで、水滴を落としても弾きそうなぐらいハリがある。
見るからに若さに溢れ、瑞々しさが零れるような子どものはずだ。
なのに、その穢れを知らない純情可憐な幼女は、大人顔負けの色っぽさを垣間見せて、上目遣いで第五位を煽るように問いかけた。
「あぁ、だが、実力が伴っているならば些末なことだな。失礼した」
「いえいえ、お気になさらず。違和感を覚えるのは、至極普通のことかと」
と、そのタイミングで2人は目的地である部屋の前に到着した。
ドアをノックして、返事がくるとドアを開け入室した。
「これはこれは、エルヴィス様、本日はご足労いただき、誠にありがとうございます」
「いや、それはかまわないのだが――」
(私は今、
(――なにも見えないし、聞こえないし、ということか)
空気振動の制御によって、アリシアの声はエルヴィスにのみ聞こえた。
やり取りが一方的になってしまい、彼の思考がアリシアに伝わることはなかったが、自ら存在を隠したのだ。彼が勝手に話を進めても問題はないはずだ。
「エルヴィス様?」
「いや、本来これはオレの管轄外の話し合いのはずだ。どのような理由であれ、参席させてもらえることに、こちらこそ感謝すべきだろう。ありがとう」
「滅相もありません。むしろ特務十二星座部隊の方特有の観点から、ぜひともご助言をいただきたいぐらいです。それではこちらに」
「失礼する」
促されると、エルヴィスは用意された席に向かう。
(なぜ部外者なのに用意された席が、議長の次の上座なのだ……)
とはいえ、ここで適当な誰かを選んで席の交換を申し込んでも、ただの変人だ。
過剰な扱いだとは思ったが、上座は上座、断る理由もなかったので、大人しくエルヴィスは席に着く。
「さて、引き続き在校生の昇進試験について話し合いを進めていきますが――エルヴィス様が来てくださったことです。先に件の生徒、ロイ・モルゲンロートについて進めるのはいかがでしょうか?」
「いいのか、予定を変更して?」
「かまいませんとも。順番はどうあれ、全員分を終わらせて初めて会議が終了できますので」
「エルヴィス様もご存知でしょうが、昇進試験では同じレベルの実力を持つ生徒同士を戦わせます。日程の調整や会場の確保など、他にもいろいろありますが、ひとまず、今回はロイ・モルゲンロートの対戦相手を選ぶ会議だと考えてくださいませ」
「あぁ、流石にそこらへんは弁えている」
正直、エルヴィスとしては視察というよりは見学のつもりだった。
そして同時に、対戦相手を選ぶぐらいならば、早々に終わるだろうとも思っていた。
彼は確かに王国七星団内部にて強い発言力を持っていたが、別に様々な話し合いに首を突っ込んで、なににでも一枚噛みたがる厄介なオジサンではない。
なににでも専門家という人はいるし、門外漢が口出ししてもいいことはないだろう。
ゆえに、視察ではなく見学、有望な聖剣使いの今後が気になることもあり、自分が知らないことを勉強しておこうと思ったのだ。
対戦相手なんて実力が同じなら誰でもいいだろう、そう甘く見積もって。
しかし、議論は混迷を極める。
その理由として――、
「前提として、ロイのヤツを『ナイト』から『ロードナイト』に上げるのは確定」
「はい、やはりジェレミア卿を倒した実力を考えれば妥当かと」
「厳密に言えば、幻影魔術を突破した技量、ではありますが……」
「それで問題なのが、ロイのヤツを『ロードナイト』から『ルーンナイト』に上げるための試験の相手か……」
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