ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
5章17話 最高評議会で、次の戦いの幕開けが――(2)
5章17話 最高評議会で、次の戦いの幕開けが――(2)
これについては1つ前の議題よりも慎重に話し合われた。
いきなり2つも上に昇進させる試験をさせていいのか?
いきなり2つも上に昇進させる試験を用意するのは、前例がないのではないか?
ロイ自身が例外的な生徒なのだから、彼についてはケース・バイ・ケースでもいいのではないか?
前例がないから二の足を踏むのは、組織、学院の体制として好ましくはないのではないか?
だとしても、例外をあまり積極的に作るのはよろしくないのではないか?
それを踏まえた上で、それに見合った功績を残しているのではないか?
根本的に、このクラスにロイと互角に戦える生徒なんているのか?
言われてみれば、十中八九、実力に問題がなくても、それを確認するための試験の相手が存在するか?
(前例がないから二の足を踏むと、新しいなにかを見込めなくなる。例外を積極的に作ると、同じ試験をする生徒の中から、損をする人も出るかもしれない。ままならないものだな……)
例外を積極的に作るわけにはいかない。
こう主張して二の足を踏んでいる数人も、別に面倒事を起こしたくなくて、怠慢ゆえにそう言っているわけではないのがもどかしい。
エルヴィスがロイの対戦相手の候補一覧を眺めていた、その時だった。
なぜこいつではダメなのか、そう思える生徒を発見したのは。
「なぁ、このレナード・ローゼンヴェークって男子、オレも聞いたことがある。現時点でロードナイトで、ロイと同じ聖剣使いだったはずだ」
「「「「「…………ッッ!?」」」」」
「こいつではダメなのか?」
「……少々お伺いさせていただきますが、どのような理由で?」
「例外を積極的に作るのがマズイのはなんとなく想像できるが、実力が伴えば誰でも上に行けるのはいいことだ。ロイに限らず、燻ぶっているヤツらはたくさんいるはずだからな」
「えぇ、それは理解できます。今は例外でも、未来では例外ではなくすればいいだけの話ですので……」
「ロイとこのレナードという男子、同じ聖剣使いだし、実力も拮抗していると思われるが……なにか問題でもあるのだろうか?」
自分がこう訊くと、大抵の相手は萎縮して「ありません」と答える。
それを経験則で知っていたので、エルヴィスはなるべく威圧させないように、友達に今日のランチを訊く感じで問いかけた。
「そのレナードという生徒は、いわゆる不良というヤツでして……」
「……サボるのか?」
「えぇ、頭も要領もよく、成績に文句はないのですが、だからこそ、必要最低限だけの日数しか出席せず……」
「いや、待て。サボりぐらい、10代の男子なら誰でもやるだろ……」
「彼の場合、聖剣に選ばれた戦争孤児で、支援制度を二重に使って学費どころか家賃まで無料なのにサボっておりますので……」
「本当に要領がよさそうなヤツだな」
「ケンカもよくするのですが、相手もそういう類の連中で、プライドがあるのでしょうが、彼に負けても被害を訴える人がおらず……」
「もしくは、
「そしてなにより、前回の昇進試験さえ無断欠席しているのです」
(血気盛んで、個人的にはむしろ好きなタイプの騎士なんだが、まぁ、流石に問題児を一番慎重に対戦相手を選ばなくてはならないロイにはぶつけられ――待て)
ふいにエルヴィスは逡巡した。
そして彼は1つの提案をしてみる。
「あえてサボりクセのあるこいつをロイにぶつけて、こいつが欠席した場合、ロイの試験は次に持ち越し、というのはどうだ?」
「エルヴィス様、えげつ……いえ、秀逸なアイディアだと思います」
「今の失言は聞かなかったことにするが……実際、性格はともかく、こいつの実力はどうなんだ?」
「ハッキリと申し上げますと、前回の試験を欠席しなければ、まず間違いなくルーンナイトに昇進できたはずです」
「恐らく、この度の試験では最もルーンナイトへの昇進が確実な生徒でしょう。この2人が戦えば、レナード・ローゼンヴェークが勝ち、ロイ・モルゲンロートが負け、後者は結局、1つ昇進しただけに留まる、ということもあるかと存じます」
「あまり好きになれない言い方だが、そう言うぐらい、こいつの実力は本物、ということだな?」
少しばかり緩慢としていた雰囲気が一転した。
エルヴィスがその場にいた全員に視線を配ると、みなが一様に首を縦に振る。
決まりだった。
「すまないな。部外者なのに、結局はオレが決めてしまう形になった」
「いえ、いい意見を言うのに、その人が部外者か否かは関係ありません。積極的に取り入れていくべきでしょう」
「いかがなされますか? もしもこの試験が実現した暁には、エルヴィスが審判などを」
「そうだな。かなり珍しい聖剣使い対聖剣使いの試験だ。融通が利くようであれば、ぜひともお願いしたいぐらいだとも」
その時、議長が立ち上がり、僭越そうにエルヴィスに1枚の紙を渡した。
「エルヴィス様のご都合もあるとは存じますが、こちらが試験の予定日です。来月から再来月の休日を使い、3週間に及び行われます。一応、お持ち帰りくださいませ」
「あぁ、ありがとう」
そこでふと、今まで退屈そうに窓際で外を見ていたアリシアが近付いてきた。
おおかた、試験の日程でも気になったのだろう。
とはいえ彼女の姿は今、他の人間には見えていないはずだった。ゆえにエルヴィスは背伸びして用紙を覗き込む彼女に反応するわけにはいかない。
それをいいことにアリシアは日程を確認して、娯楽感覚で若者たちの試験を観戦しようと考えていたが――、
(この日程……、ロイさんの運が悪ければ、とても絶望的な精神状態で戦わなくてはならなくなりますが……。ハァ、私はどうするか、今のうちに考えておかないといけませんね……)
こうして、ロイの次の戦いは本人の知らないところで着実に近付いていた。
そして同時に、レナード・ローゼンヴェークという不良――否――ロイにとって初めてのライバルと呼べる存在との出会いも――……
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