ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
3章8話 喫茶店で、放課後デートを――(1)
3章8話 喫茶店で、放課後デートを――(1)
「エクスカリバーの本来のスキルは封印されている!?」
放課後、城下の街の小洒落たカフェのオープンテラスに、アリスの声が響いた。
「だからさっきの講義では、なにも使えなかったんだ」
「本当なんですか、イヴちゃん、マリアさん?」
「うん、そうだよ~」
「まぁ、どうもそうらしいんですよねぇ」
アリスとイヴとマリア。
3人は今日が初対面であったが、ここまでの道中で自己紹介を済ませている。
どうしてこのような展開になったのか?
もともと、ロイとアリスは2人きりで下校しようと考えていた。だが学院の門扉を抜けたところで、ロイを待っていたイヴとマリアに見付かったからである。
それで今は互いに親睦を深めるために、メインストリートのカフェで、少し遅めのティータイムを楽しんでいた。
「ロイ、それってなにか、理由でもあるのかしら?」
紅茶を一口、口に含んで静かに飲んだあと、ティーカップをソーサーに戻しながらアリスは訊いた。
「ボクも一応、エクスカリバーの使い手だから、なんとなくはわかるんだけどね」
「エクスカリバーのスキルが?」
「うん、エクスカリバーのスキルは『使い手の剣に対するあらゆる理想、イメージを反映する能力』なんだよ、たぶん」
「具体的には?」
「例えば、ボクが斬撃を飛ばしたいとイメージすれば斬撃が飛ぶ。エクスカリバーの大きさを調節したいと思えば調節できるし、さっきのゴーレムみたいに、なかなか斬れない物体でも、斬ろうと思えばなんでも斬れる。とか、こういう感じかな」
「強すぎない?」
「ただ、あくまでもエクスカリバーは剣だからね。究極的にはボクの認識に左右されるだろうけど、剣の領分、剣本来の使い方を越えるイメージは反映できないと思う。持ち主を瞬間移動させろ! とか」
「だとしても、だったらさっきの模擬戦って――」
「お兄ちゃんがスキルを使えていたら楽勝だったんだよ!」
「逆に、スキルを使えないのに倒せたのって、それはそれですごいんですけどね♪」
ロイとアリスの会話にイヴとマリアが混じる。
イヴは苺タルトを食べていて、マリアはチーズケーキを食べていた。
ちなみにロイはアリスと同じく紅茶を頼んでいる。
「それで、封印っていうのはどういうこと?」
「ボクが初めてエクスカリバーを石から抜いた時、なんていうか、エクスカリバーの情報が頭の中に直接流れ込んできたんだよね」
「えぇ、それで?」
「で、どうやらボクがエクスカリバーのスキルを使うには、エクスカリバーに見合う使い手にならなくちゃいけない。つまり、騎士としてさらに強くならなくちゃいけないらしいんだ」
「ロイって、現時点でも同年代の騎士の中ではトップクラスの実力よね? それでも足りないの?」
「あはは……面目ない」
言うと、ロイは困ったように笑う。
「ところでアリスさん! お兄ちゃんって同級生の間ではどんな感じなの?」
「それって、やっぱりロイのファンについて?」
「わたしもイヴちゃんも、やっぱり弟くんのことが心配ですからね」
「確か……入学してから今日までで、告白されたのは4回だっけ?」
「うん、でも、断らせてもらったけどね。悪い言い方になっちゃって気が引けるけど、その4人とも、けっこう頻繁に男子に告白している、って、噂っていうか評判を聞いたから」
「ふぅ~、安心だよぉ」
「入学してすぐに告白してくる女の子は、やはりそういう感じの子が多いんですかね……」
「他に私の知る限りでは、手作りのクッキーを渡してきた子。お昼休みにランチに誘ってきた子。私と一緒に受けていない講義で、隣の席に座ってきた子。この女の子たちは健全な男女交際を望んでいそうだけれども……一番過激、っていうか学院の風紀が本当に乱れると思ったのは、ロイの前でわざと転んで、パンツを見せつけてきた女の子ね」
「お、お兄ちゃんに、ぱ、パンツ……」
「弟くんにそんなことを……」
2人揃ってモジモジするイヴとマリア。
イヴもマリアも、白い頬を赤らめて、恥ずかしそうに俯き、両の太ももの付け根をモジモジ擦り合わせた。
「2人が恥ずかしがるのもわかるんですけど、私としては、やっぱり学院の風紀を乱すのが許せないわ!」
「アリスらしいね」
「当然よっ、私には目標があるもの」
「けど、そういうアリスもその時、現場にいて、顔を真っ赤にして注意しそびれたけどね」
「ちょ、ちょっと! そういうこと言わないで!」
結局、アリスもロイにからかわれて赤面してしまった。
「ちなみに、イヴちゃんとマリアさんの方はどうなんですか? ロイを紹介して~、とか。今度お部屋に遊びに行って、ついでにロイのお部屋にも入っていい~、とか」
「言われたよ! すっごい、すっごい、何回も言われたよ!」
「わたしもかなり言われましたね」
「わたしと友達になる前に、お兄ちゃんを友達として紹介して~、って、いくら能天気なわたしでも普通に怒るよ!」
「わたしなんか、弟くんと付き合ってもいーい? なんて訊かれたこともありますからね。いや、それを決めるのは弟くんですから……」
「この国、本当に大丈夫かなぁ……」
ふと、ロイは前世の日本を思い巡らせる。
今の自分は、有名な芸能事務所で一番人気の男性アイドルのような状態なのだろう。
そんな国中が羨むような人物が自分たちの学び舎にやってきたら……一応、こうなるの理由がないわけではない。
ただ、理由の存在が免罪符にはならないだけで……。
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