ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
3章6話 実戦演習で、女の子たちから歓声を――(3)
3章6話 実戦演習で、女の子たちから歓声を――(3)
身を屈ませ、裏拳が自らの頭上を過ぎ去ったタイミングで出した合図。
そして丁度詠唱が終わったタイミングで、次はロイの目の前に岩石のような拳が迫りくる。
だが剣でガードする必要はない
強引に回避行動に移る必要もない。
だから――ッッ、
「GUOOOOO!?」
殴られる直前、純白に光るガラスのような防壁が、真正面からゴーレムの拳を受け止めた。
その1秒にも満たない隙をロイは無駄にしない。流水のような動きで、彼はゴーレムの懐に潜り込む。
「ッッ、ダッ、ア、ッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
風を斬る音さえ鳴らし、力強く、一直線に斬撃を撃ち込んだ。
その衝撃は大気は軋ませ、甲高い激突の音は晴天に響く。
しかし、ゴーレムの身体に切れ目を入れることができても、切断には至らず――、
――傍から見れば最悪なことに、聖剣が抜けなかった。
「――援護お願い!」
「
後方から不可視の強風が吹き荒ぶ。
あまりにも突発的な風の打撃に、ゴーレムの図体さえよろめいた。
その間に聖剣さえそのままに、ロイは強化した肉体で後方へ跳躍する。
と、ここで模擬戦を遠くから見守っていた講師が、ロイとアリスにアドバイスを送った。
「ゴーレムは確かに粘土でできている。けど今の身体は岩石そのもののような硬さを誇っているぞ。聖剣とはいえ、一刀両断するのは難しいからな!」
講師の発言に、2人の戦いを見守っていた生徒からも残念そうな声が漏れる。
というより、一刀両断できなくても、攻撃に必ず使う剣が手元にないのだから当然だった。
「ロイ! 大丈夫!?」
「大丈夫だよ、計画通り」
「えっ?」
「アリス、再度懐に潜るから、防御お願いできるかな?」
「う、うん……」
「それと、その次に重力操作にあわせてジャンプをしようと思う」
しかしロイは焦らない。
なぜならば、前みたいに、別に死ぬわけではないからだ。
「なるほど、そういうことなら、準備OKよ」
「了解!」
再度、ロイはゴーレムに突撃を仕掛ける。
言わずもがな、今度は手元に武器がなにもない状態でだ。
「GOOOOOOOOOO!!!!!」
「アリス、これじゃない!」
叫ぶと、アリスが返事するよりも早くロイは大きく跳躍した。
そしてゴーレムさえ飛び越え、それの背後に着地する。
「GUO!!!!!」
刹那、振り向きざまの裏拳が迫る。
が、やはり身を屈めて躱してみせた。
「
そして紡ぎ終わるアリスの詠唱。
並びに、その時間があれば繰り返されるゴーレムの連撃。
「詠唱零砕! 【光り瞬く白き円盾】ッ!」
再びロイを守るアリスの魔術。
究極的には、魔術の難易度と術者本人の技量に左右されるだろう。
とはいえ詠唱零砕はエルフのように魔術適性が高くないと、学院に通っているうちは模擬戦だろうと的確にできるようなモノではない。パートナーとの初戦闘ならなおさらだ。
詠唱零砕の長所は主に2つ。
1つは言葉を使わないため、相手にどのような魔術を撃つか先読みされないところだ。
そして今重要なのは、難易度が低ければ、声を出すよりも早く詠唱を脳内で黙って詠めることである。
「跳ぶよ!」
「OK!」
有言実行、ロイは肉体強化を全開にして真上に跳躍した。
すでに先ほど、ゴーレムよりも高く跳べるか検証済みである。
だからアリスもそれを理解して――、
「詠唱追憶!
時間差で発動するアリスの重力操作の魔術。
その結果、グン……ッッ! と、ロイの身体に強烈な重力がかかった。
「まさかあいつら……ッッ!」
講師が叫ぶがもう遅い。
エクスカリバーは絶対に折れない。
さらに刀身が幅広で、横向きにすれば物を載せて持ち上げることも可能。
つまりロイの計画とは――、
「いっけええええええええええええええええ!」
ゴーレムの身体から抜けないままのエクスカリバー。
重力が増加された状況で、ロイはこれを隕石のように勢いよく踏み付けた。
そして爆散。
腹部には限定されたが、轟音を立ててゴーレムの身体が砕けたのである。
「ウソだろ!? 聖剣を
講師の解説は正しい。
力点はロイは自身、作用点はエクスカリバーが抜けないままのゴーレムの身体。
支点と作用点がほとんど同一の座標にある状態で梃子の原理を利用し、ゴーレムの上半身と下半身を強制的にお別れさせたのである。
「……ッッ、ロイ! まだゴーレムは壊れきってないわ!」
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