2章4話 寄宿舎で、ロリ巨乳メイドと――(2)



 そしてイヴは、ベッドに腰を下ろしたロイの隣に座る。

 余談だが、メイドであるクリスティーナは立ったままだ。


「さて、詳しいここの規則を説明させていただきますが、朝食のお時間は毎朝6~7時でございます。皆様で一斉にいただくのではなく、こちらで用意させていただきますので、お好きなタイミングで食べていただいてけっこうです。夕食は毎晩7~8時で、食べ方は朝食と同じでございます」


 次に、

「入浴時間ですが、基本的に朝でも夜でも、お好きな時間に浴室をご使用いただいてもらって大丈夫でございます。時間帯で男湯と女湯が分かれているのではなく、最初から浴室を別々にしてございますゆえ」


 続けて、

「夜間の外出は基本的に禁止でございます。毎日、夜の9時までにはお戻りくださいませ。外泊の場合は、その日の朝までに担当のメイド、ご主人様とお嬢様の場合はわたくしにお申し付けください」


 加えて、

「また、夜間は11時以降、自室から出るのはご遠慮くださいませ。わたくし個人といたしましては、そのぐらいいいと存じますが、メイド長がうるさいもので……。あっ、ですがお手洗いだけはセーフでございます」


「はは……」


 反応に困り、ロイは曖昧な笑いしか出せなかった。

 クリスティーナはメイドにしては少々お茶目な性格らしい。

 そのクリスティーナは最後に――、


「最後に、ご主人様とお嬢様にはこれを」

「これは?」「うぅん?」


 ロイ、次いでイヴの順番に渡したそれは、宝石を中央にはめ込んだ薄い石板だった。

 縦に10cmを少し超えるぐらい、横に5cmを少し超えるぐらい、厚さは1cm未満といったところか。


「ここで暮らす生徒全員に無料で配布されるアーティファクトでございます。ざっくり申し上げますと、念話、お互いにそれさえ所持していれば、離れていても会話ができる優れものです」


「す、すごいよ! どうやってそんなことできるの!?」

「魔術の詠唱って、実は空気だけじゃなくて液体に向かっても響かせられるからね。超高温で液体にした金属に詠唱を響かせて、再び固体に戻したモノがアーティストだよ」


「これはわたくしも常に携帯しておりますので、ご用命の際には、こちらでわたくしをお呼びくださいませ。当然、これがあれば11時以降もご兄妹で会話することも可能でございますし、ご主人様にガールフレンドができた時も、これで深夜までイチャイチャできます♪」


「むぅ! お兄ちゃんはわたしのお兄ちゃんだよ! ガールフレンドなんて、わたしの許可なく作りませんよ~だ」

「えぇ……ボク、ガールフレンドを作るのにイヴの許可いるの?」


「勿論! 正論! ゆえに無論! だよ、お兄ちゃんっ♡ わたしこそ、お兄ちゃんのお嫁さんになる運命なんだもん♡」


 ロイは思わず困った表情かおを浮かべてしまう。

 一方、彼の困り顔を見てクリスティーナは楽しそうに、しかし手で口元を隠してクスクス笑った。


 可愛い笑顔というとか、女の子らしい所作というか。

 流石に直接年齢を訊くことはできないだろうが、案外、ロイと近い年齢なのかもしれない。


「このアーティファクトの使い方は、本当に魔力を込めて念じるだけでございます。ご主人様が仰ったとおり、すでに詠唱はこの金属の板の中に埋め込まれておりますので」


「了解だよ!」

「ただ、念話の相手は、一度中央の宝石を、別のアーティファクトの宝石にかざしたその持ち主に限られますので、お気を付けてください。それと僭越ながら、ご主人様とお嬢様がご到着なされる前に、わたくしが3人のアーティファクトにお互いの宝石をかざしておきました。ですので、ご主人様、お嬢様、わたくし同士なら、もう念話できる状態にあります」


「ありがとうございます」

「ではでは、わたくしはいったん、これで失礼させていただこうと存じますが、他に、今の時点でなにかご用命はございますでしょうか?」


「いえ、大丈夫です」

「大丈夫だよ!」


 爽やかに言うロイに、元気いっぱいで少し幼い感じのイヴ。

 それを確認すると、クリスティーナは「失礼いたします」と断ってから、部屋を出た。


「そういえばさぁ、このアーティファクト、姉さんも持っているのかな?」

「お姉ちゃん?」


「うん、これで念話できるなら、姉さんともいつでも話せると思って」

「むっ、わたし、まだ手で数えるぐらいしか、お姉ちゃんと会ってないんだよ……」


 そう、ロイとマリアは7歳差で、ロイとイヴは4歳差だ。

 ということで、マリアとイヴの年齢差は11歳もある。


 事実、イヴが生まれた頃には、マリアは村から王都に旅立っていた。

 それに改めて気付いたロイは、イヴの頭を、ポンポン、と撫でる。


「なら、なるべく早く姉さんに会いに行こうね? 早くお話するために」

「っ、うんっ」


 先ほどから2人はベッドに腰をかけっぱなしで、イヴはロイの隣に座っていた。

 ロイに頭をなでなでされて、嬉しくなったイヴ。彼女は兄の胸に飛び込んで、ベッドに押し倒したあとに、頬をスリスリさせる。


「お兄ちゃん、優し~い、大好きだよ~♡」

「はいはい、ボクもイヴが大好きだよ」


 と、そのようなやり取りが1~2分続いたあと、ふと、ロイはイヴの肩を掴んで、自分の身体の上からどかす。

 そしてイヴをベッドに置いたまま、スッ、と立ち上がった。


「ちょっとお手洗いに行ってくる」

「ハイハイ! お留守番は任せてよ!」


 イヴがそう言って、発育前の胸をえっへん、と、グーで叩いた。

 ロイはお言葉に甘えて彼女に留守番を任せて、各階のつきあたりにあるトイレに向かった。


 トイレは男女共用とはいえ、しっかり鍵が使えるようになっている。

 そして今、鍵はかかっていない。


 ロイがトイレのドアを開けると――、


「きゃあ……っ」


 か細い悲鳴が聞こえた。


「えっ!?」


 結果から言うと、トイレの中に女の子が入っていたのである。


 女の子は幸いにも用を足したあとで、一番恥ずかしいシーンは見られなかった。

 だがそれでもスカートをめくって、おしりを丸出しにして、下着を履こうとした瞬間だったのだ。


 ロイからすれば、見えない方が物理的におかしいカッコウだった。


 白くてぷにっとした、やわらかそうで大きめなおしりも。

 女の子がスカートを持ち上げすぎたため、偶然にも視界に入ったくびれた細いウェストも。


 色白の素肌が眩しく健康的で、滑らかな曲線を描く、女の子らしい肉感的な太ももも。

 そして、女の子の一番大切な花の――


「す、すみません……っ! で、っで、でも、鍵がかかっていなかったんです!」

「い、いえ! こちらこそお見苦しいモノを見せてしまいましたね……っ!


「って、あれ?」

「……んっ?」


 2人してお互いの顔を見合う。

 この女性、かなりの童顔だが女の子という感じではなく、歳は20歳前後に思える。


 大切なところを見られて赤らんだ頬。潤んだ瞳。恥ずかしくてモジモジ揺らす身体と胸。

 しかし彼女の方も、恥ずかしくてロイから逃げるように身体を逸らしているのに、彼のことをチラチラ窺い続ける。


「姉さん?」

「弟くん、ですよね?」


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