2章3話 寄宿舎で、ロリ巨乳メイドと――(1)



 クリスティーナ・ブラウニー・リーゼンフェルト。


 通称・クリスはこの寄宿舎を運営する王立グーテランド七星団学院に雇われた、寄宿舎の使用人である。

 この寄宿舎には20人近くのメイドが働いていて、3~5人ぐらいの学院の生徒の世話を、1人のメイドで受け持つらしい。で、ロイとイヴの担当メイドがクリスティーナとのことだった。


 服装はメイド服。

 甘い匂いがするライトブラウンの長髪を1本の三つ編みにして、肩にかけていた。瞳の色は翠玉すいぎょく、つまりエメラルドのような翠でタレ目。

 身長は135cmを少し超えるぐらいとかなりの小柄だが、しかし胸はやたら豊満で、メイド服のボタンがはち切れそうなぐらいである。


「ブラウニーって、どういう種族なの?」

「簡単に説明させていただきますと、家事、つまり料理、掃除、洗濯をお手伝いする妖精さんでございます♪ ふふん、いかがでございますか? もう種族全体の性質からして、メイドって感じがしてこないでございましょうか?」


 イヴに訊かれると、自慢げにふわふわむにむにの豊満な胸を張ってクリスティーナは答えた。


 今、彼女は使用人ということでイヴのトランクを代わりに持っている。

 だが、胸を張った際に、重さで「おっとっと」と少しだけよろめいた。案外ドジっ娘なのかもしれない。

 ちなみにロイは「女の子に重い物を持たせるわけにはいかないから」と、やんわり断っている。


「以前村で読んだ本によると、ブラウニーの成人の約7割が、男女関係なく、どこかのお屋敷とか、こういう学校の施設とかでメイドや執事、庭師や料理人をしているらしいよ。――ですよね?」

「はいっ、もう、ブラウニー=メイドの種族と認識してもらって結構でございます!」


「あと他には……種族を通して小柄だったり、髪が少々ウェーブ気味だったり、そういうのが特徴かな?」

「うぅ……そうなのでございます~。髪がぼさぼさなメイドって、メイド失格な気がいたしますから、毎日長い髪を三つ編みにして押さえているのでございます~。とほほ……」


(前世での趣味がネットサーフィンで助かった。よく覚えていたな、ボク)


 3人は高級そうな絨毯が敷かれた寄宿舎の廊下を歩く。

 クリスティーナが先導する形であちこちを案内し、その後ろにロイとイヴが付いていた。


「談話室と食堂と浴場、おまけで使用人室は1階、お手洗いは各階のつきあたりにございます」

「は~いっ」 と、イヴ。


 実際に談話室と食堂と浴場の入り口の前の廊下を通ってから、クリスティーナが先導する形で階段を上る3人。

 階段そのものもあり得ないぐらいゴージャスだし、手すりにはやたら手の込んだ意匠が彫られている。踊り場にはラッパを吹く天使を模したステンドグラスまで飾られていた。


 ちなみに、この寄宿舎も、ロイが言うところのロマネスク建築である。


「本来、2階と3階が男子生徒の部屋となっております。ですがご主人様にはお嬢様、つまり妹様がいらっしゃるとのことですので、本来女子フロアの4階に、お嬢様と隣同士でお部屋を用意させていただきました。むふふ、ご主人様はラッキーでございますねぇ」


「やったよ、お兄ちゃん!」

「いいんですか? 女子フロアは男子禁制とかじゃ……」


「特に男子禁制というわけではございません。4~5階に遊びに行く男子生徒の皆様もけっこうおります。フロア別に下の方が男子、上の方が女子とした方が下着盗賊対策になるからという理由でございますし、他の理由など、揃って見えてスッキリしているから、ぐらいしかございませんので。あと、全ての個室には鍵も付いておりますゆえ」


「そうですか」


 階段を上りながら以上の説明をされたが、ついに、3人はお目当ての4階に辿り着く。

 男子禁制ではないとはいえ、多くの年頃の女の子が暮らしている空間に足を踏み入れたのだ。不意にロイの鼻孔をふわっとした、女の子のやわらかくて甘いいい匂いがくすぐった。花の香りに近いかもしれない。


「こちら、401号室がご主人様のお部屋、お隣の402号室がお嬢様のお部屋でございます♪ トランク以外のお荷物はすでにわたくしがお部屋の中に運んでおきました!」


「ありがとうございます、クリスさん」

「ふふっ、ご主人様はメイドにも敬語をお使いになさるんですね? 呼び捨て、タメ口でけっこうでございますよ?」


「えっと……、メイドに接し慣れていないもので」

「ほほう、わたくしがご主人様の、は・じ・め・て♪ のメイドでございますか。光栄でございますっ」


「それに、相手がメイドさんだとしても、対等に接したいですから、最初は敬語かなぁ、って」

「優しいのですね。クス、わたくし、そういう男の人は好きでございますよ?」


「はは、からかわないでください」

「むぅ~、お兄ちゃんがわたし以外の女の人とイチャイチャしているよぉ……」


 廊下で話していても、イヴのトランクを持っているクリスティーナを疲れさせるだけだと思ったので、ロイは一先ず自室のドアを開けた。

 しかしその背後にて――、


(メイド相手に対等に接する、でございますか……。もちろんすごく嬉しいですが……あれ? そういう文化がある異国の御方でございましたでしょうか……?)


 それで一方――、

 ロイの目の前に広がったのは、ふかふかのベッドに、木製の机とイスと本棚。そしてチェスト、つまりロイの前世の日本でいうヨーロッパ風のタンス。

 窓の外には夕日に染まる王都、オラーケルシュタットの街並みが広がっていた。


「じゃあ、イヴ、クリスさんからトランクを返してもらって、隣の部屋に」

「うんっ、わかっているよ?」


 言うと、イヴはクリスティーナを連れて隣の部屋に行く。

 で、数秒後、イヴと手ぶらになったクリスティーナがロイの部屋に戻ってきた。


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