いつかの話
【大変面白いお話でした。語り部としても秀でているのですか?】
「どうだろうね。お話をしたのは初めてだよ」
約束通り、女は彼らに会いに来た。訪れた街の近くを通っていると聞いたので、来てみた次第だ。バラムが小さくなるほどの距離にもかかわらず、方向転換してこちらに近寄ってきたときは少し怖かったが。
【我々にとっては郷愁を覚えるお話でした。その少女はどうなったのですか?】
「ふふ。少女は大人になり、男に貰ったギターを背負って街を出ました。遠い遠い涙の意味を求めて」
【なるほど。我々は少女の運命に幸運を祈るばかりです。この広い荒野で一人の人間を探すのは困難でしょうから】
「そうだね。でも、会えると信じてればきっと会えるんだよ。それよりさ、新曲作ったんだ。聞いてみて欲しいんだけど」
【すみません。一つだけ少女のことを聞いておきたいのです】
「うん?なにかな?」
【少女は何故男を探すのでしょう。男についていくのならば、別れを告げられたあの日についていけばよかったのではないでしょうか】
彼らの疑問に、女はクスリと笑う。
少女はどのような思いで、男を見送り、どのような結果を求めて彼を探しに旅立ったのか。
「それは、きっと再開したときに答えが出るんじゃないかな」
女は少女の結末を語らない。このお話は、それで終わらなかった少女と男の物語なのだから。
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