解説的な後書きのような何か

 はい、というわけで唐突にやってみたネタ的な何かでした。


 このお話で私が一番やりたかったことは、『桃太郎のお話をけものフレンズらしくしたらどうなるだろう?』ということです。某所で雑談中に降って湧いたこの思いを何とか形にしてみた次第です。開拓者カルテットが桃太郎一行の面子にちょうど良さそうだったのもあります。


 最初は桃太郎=ともえちゃんだったんですが、あんまり出しゃばらせ過ぎてもバランス良くないなと思ったので、物語の主人公にはするけど劇中劇の主人公からは外す、としました。代わりにアムールトラを据えたわけですが、彼女はまあ、何と言いますか……色々と背負わされてしまったキャラクターなので、そのあたりの仄暗さをぼかしつつ入れてみました。特に前日譚は決めていないので、彼女がどんなふうにともえちゃんと出会ったか、どんな過去を持っているか等は皆さんのご想像にお任せします。いわゆる『ビースト』設定を有ったことにするも良し、無かったことにするも良し。なので彼女には今回、『どこか影のある、寡黙で引っ込み思案』なキャラクターになってもらいました。

 話の流れとして、ともえちゃんが演劇にアムールトラを誘う→主人公を演じたことで人気者に→めでたしめでたし、という感じに決めたので、そもそも何故ともえちゃんが誘うことにしたのかという動機になってもらうことの兼ね合いもあって『他人と触れ合うことを恐がっている子』という設定も付けました。


 さて、このお話の主人公のともえちゃんですが、今回彼女は話中で絵を描く描写を入れていません。というのも彼女の略称表記『とも』と関係しているのですが、それは『え』が略されている→『え』が隠されている→見えない所に『え』がある、といった感じで……。何が言いたいのかというと、このお話の始まりがともえちゃん→そもそも皆を焚きつけたのがともえちゃん→裏で糸を引いていた黒幕……『裏で絵を描いた人物』ということでここはひとつ……。

 あまり台詞は多くありませんが、『腹黒さ』とか『なにか企んでいる悪者っぽさ』を感じ取ってもらえたらいいな、と思います。しれっと嘘をつくムーブなんかはあまりけものフレンズらしくない感じですが、最後の種明かしで、実は良いことをしたかったんだなーくらいに読み取ってもらえたなら幸いです。


 そんなわけで、それぞれの略称についてもそれなりな意味合いを持たせてる感じです。名前に漢字が使えないので、普通のss(ネット掲示板でよくある方式)のように書くと名前の長すぎるキャラクターもいっぱいいますし、台詞も読み辛くなってしまうので、名前のうちの二文字を取り出して使いました。以下にキャラ紹介を兼ねて解説してみます。


・アム→アムールトラ

 上記のイメージと合わせて『いざという時、頼りになる姐御』として、ロードランナーの下っ端な感じを出すために『アム姐』呼びから取りました。あとアムネジア(記憶喪失)も『桃太郎』の設定的に良い感じかな、と。


・とも→ともえ

 上記の通りです。あとはかばんちゃんの『かば』表記と合わせて平仮名で。


・イヌ→イエイヌ

 そんなに大した意味があるわけではなく、単に『イエ』では分かりにくいな、と思ったので。話中ではメタギャグ担当です。台詞のいくつかはネットのネタから引っ張ってきたもので、入れなくてもよかったんですがそのほうが話が明るくなるかな、と。ともえちゃんに振り回されつつも、仕方ないなぁと付き合ってあげる人の良い苦労人な感じです。


・ゴマ→ロードランナー

 その……何と言いうか……ごめん。理由は言わずもがな。被害担当の苦労人2、といった感じで。


・かば→かばん

 カバとの被りがあるんで平仮名表記で。ともえちゃんも合わせてヒトは平仮名、としました。また、ともえちゃんと同じく『ん』が隠されている→『ん』は平仮名の最後、終わり→終わりが見えない→かばんちゃんの冒険はまだまだ続いてるぞ、と。話中では劇の監督? ディレクター? 的な立ち位置です。裏の主人公って感じです。


・サバ→サーバル

 『鯖』っぽくて面白かったので。あと『サー』でも『バル』でも伝わらないかな、と。話中ではAD……アシスタントディレクターというか、大道具と小道具を一緒に一人でやってる感じです。なので劇のあいだ、あっちやこっちや飛び回ってます。かばんちゃんのやりたいことを裏でしっかり支えてあげつつ自分もしっかり楽しんでるイメージで。


・コノ→博士

・ミミ→助手

 ギャグ担当。いわゆる『問題のあるフレンズ』担当でもあります。キャラ崩壊著しいですが、食べ物ネタとあっては出さないわけにもいかず……。略称はネクソン版を意識しました。


・ヘラ→ヘラジカ

 こちらも『問題のあるフレンズ』担当。頼めばすんなりやってくれそうなイメージしか無かったので、パワー信者にキャラ崩壊させました。あとは『たつき→たつ鬼』で……。略称は単に頭二文字で。


・プロ→プロングホーン

 こちらも単に頭二文字。『問題のあるフレンズ』その3。やはりキャラ崩壊。ヘラジカもそうだけど小物役はあんまり似合わないなぁ、と思いつつも……。


・オロ→オーロックス

 上二人と違って小物役が似合う似合う。おろおろするのが似合いそうだったので。


・ラビ→アラビアオリックス

 略称はやっぱりネクソン版から。この子の場合一人称すら分からなかったのでオーロックスと合わせてネクソン版から持ってきました。


・ライ→ライオン

・チタ→チーター

 チョイ役な二人。ライオンは頭二文字、チーターは某掲示板某スレから。


・ビバ→アメリカビーバー

・プレ→オグロプレーリードッグ

 チョイ役その2。『アメ』とか『オグ』では分かんないので。


・アラ→アライグマ

・ヘネ→フェネック

 チョイ役その3。アライさんは「あらあら……」といった感じ。フェネックは二次創作でよくアライさんから「へねっく~!」と呼ばれてるイメージから。とりあえずオチ要員。サーバルちゃんよりよっぽどトラブルメーカーやってる気がする……。


 こんな感じですね。改めて見てみるとむしろ捻ってるほうが少なかったか……。まあ、分かりやすさ重視には出来たんじゃないかなぁ。


 さてさて、では本題。【『桃太郎』をいかにけものフレンズらしくするか】をテーマに改変してみた次第です。

 まず『普通の桃太郎』のお話って分かります? 私は分かりませんでした。有名な作品にも関わらず、特にコレ! と決まった作者がいないため、原典と呼べるようなものがないんですよね……。調べれば調べるほどどつぼにはまってしまって、どれを元に改変していいのやら、と……。なのでもういいか、と基本の部分だけ押さえてあとは順次捏造していき、各キャラクターに演じさせたらこんなだろうなー、くらいの軽い気持ちで書いていきました。作中でともえちゃんに言わせてますが、『楽しくやれたら、それが一番』なのかなって。

 まず思ったのは上記の通り開拓者カルテット四人と桃太郎一行の一致ですね。さて、そこからけもフレナイズドしていくにあたって思ったのは、『桃太郎とけものフレンズの相性の悪さ』です。ほんと相性悪いんですよ。だって、『強い桃太郎が動物を家来にして鬼をぶっ倒しに行く』ですよ? とてもじゃないけど、けもフレらしさのかけらも無いじゃないですか! なので、まず改変したのは『役柄同士の上下関係の有無』です。綺麗さっぱり無くすため、『お爺さん』『お婆さん』も固有名詞扱いで、友達同士な関係にしました。当然、『桃太郎』とも友達です。人間目線では不自然極まりないですが、劇中劇を見ているフレンズの視点からは『仲良しなフレンズ達のとこに新しいフレンズが加わった』ように見えるはずです。それなら彼女達にとって特別珍しいことでもない、普通のことと受け取ってもらえるはずです。

 なので次は『桃太郎』の状況、状態についてです。赤ん坊から成人(15~16歳)まで育てて、というのは……やはりけものフレンズらしくないな、と。フレンズ達も元は動物ですから、赤ん坊が生まれる→それを育てる、という過程が分からないわけではないかもしれませんが、どうせならかばんちゃんのフレンズ化の状況に被せて『なにも覚えていないフレンズ』が突然現れるほうが彼女達にとってリアリティが有りそうに思います。


 こうして劇を見ているお客さん=フレンズ達に分かりやすいように改変していけば、それはけものフレンズらしい劇になるんじゃないかな、と考えました。ようは刺抜きですね。

 劇中『持って行く』と、盗む、奪い取ることを柔らかく変えてみたり、最終的にみんな友達になってハッピーエンドにしてみたり……。鬼達が財宝をため込んでいる、というのもきっと伝わらないはずなので、大事なもの=ジャパリまんにしました。すると当然、鬼がジャパリまんを奪っていく=鬼はお腹がすいている=きび団子で解決、と相成りました。

 きび団子を単なる『お団子』にしたのは読者へのリアリティのためですね。フレンズ達にとってはきび団子も『お団子』も同じ未知の食べ物ですし、別に『きび団子』でもお話は成り立ちます。でもじゃあ、『カレーライス』の作り方が載ってるような料理本にきび団子の作り方が載ってるか? となると……変かな、と。材料的にも黍が必要ですし、むしろ黍が無いほうがリアリティがあると思いました。

 あとは仲間にする過程ですね。『餌をやるからついてこい』ではあまりに人間本意すぎます。ですので『お団子』は、動物を従えるためのアイテム→お腹をすかしている子を助けるアイテムに改変しました。あとはフレンズならみんな持っているであろうジャパリまんを、取り返しにいくぞ! となれば話は分かりやすいかと。

 最後は鬼達との和解ですね。打ち倒しておしまい、なら相手はセルリアンでいいやとなってしまいますが、それもけもフレらしく無い。なので、相手も同じフレンズとし、改心して友達になる、といったほうがよりけもフレらしいかと思いました。『お団子』を和解のアイテムに使えるのも便利でしたし。ただ、一番難しかったのは『悪役』という存在そのものです。『強いものは好き勝手して良い』。人間からみれば鼻で笑ってしまえるほど分かりやすい悪役の台詞ですが、動物の世界ではそれが当たり前です。弱肉強食、というやつですね。フレンズ達にとっては『鬼』にも『桃太郎』達にも共感できるようなシチュエーションにしておいて、最後は『桃太郎』が勝つ→動物の倫理のままではいけないよ、とお説教っぽい教訓話で締めた形です。あと、さりげなく配給のジャパリまんが足りてない→ボス、無能! と見えない所でディスる形になってしまったのは申し訳ない。仕方のない犠牲、コラテラルダメージというやつだ。


 そんなわけで劇中劇『フレンズ達による桃太郎』が出来上がりました。いかがだったでしょうか? 楽しんで頂けたなら幸いです。長くなりましたがこのあたりで終わろうと思います。


 読んでくれて、ありがとうございました。


 静鞠 巴


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アムールトラ「桃太郎……?」 静鞠 巴 @shizumari_tomoe

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