アムールトラ「桃太郎……?」
静鞠 巴
アムールトラ「『桃太郎』……?」
ともえ「そっ! 『桃太郎』!」
アムールトラ「……とは、一体……?」
ロードランナー「なんだよアム姐、知らないのかよ! そんなんじゃ置いてかれちゃうぜぇ?」
イエイヌ「いやいや、私達だってついさっきかばんさんに教えてもらったばかりじゃないですか」
とも「も~、ゴマちゃんったらすーぐ調子のる~」
ゴマ「べ、別にいいじゃねえかっ!」///
アム「……」
とも「えっと、『桃太郎』っていうのはね……」カクカクシカジカ
☆★☆
アム「ふむ……なるほど、面白い」
イヌ「ヒトのあいだでは有名なお話なんですって!」
とも「そうだよ~っ! すっごく有名!」
ゴマ「で、その話を劇にしよう、ってわけだ!」
とも「それでね……主役の『桃太郎』をアムールちゃんにやってもらいたいなーって……」
アム「私が……?」
イヌ「そうです! だってこの主人公一行の役が――」
とも「あたしが『猿』~!」
ゴマ「俺様が『雉』ー!」
イヌ「私が『犬』!」
とも「で、アムールちゃんが『桃太郎』! ってなると、あたし達にぴったりじゃない?」
アム「……そう、なのか?」
とも「そうなのっ!」
ゴマ「ここは一発バシッと決めて、みんなのことビビらしてやろうぜぇ?」
イヌ「いや別にビビらせる必要は……アムールさんなら、迫力出そうですけど」
とも「ねっねっ、どうかなっ?」
アム「……しかし……」
イヌ「どうかここはひとつ……!」
ゴマ「なぁ~、頼むよ~!」
とも「お願いっ!」ウルウル
アム「……」
アム「……分かった。引き受けよう」コクリ
ゴマ「っしゃあ! 流石はアム姐だぜ!」
とも「やったー! ありがとう、アムールちゃんっ!」
イヌ「あはっ! きっと楽しいですよ!」
☆★☆
とも「と、いうわけでっ! 連れてきたよ、かばんさん!」
かばん「わぁ……! ありがとうございます、みなさん!」
サーバル「これで主役たちの方は決まりだねっ!」
アム「……よろしく頼む」
ゴマ「で、他の役はどうすんだよ?」
かば「うーん……それなんですよね……」
サバ「あと何の役があるんだっけ?」
とも「えーっと、まず『お爺さん』と『お婆さん』でしょ? それから……」
イヌ「『鬼』の方々、ですね」
サバ「ねーねーかばんちゃん! 『鬼』ってなあに?」
かば「え? えーっと……この本には『大っきくて、強くて、角が生えてる』って書いてあるけど……」
サバ「へー! ヘラジカみたいだね!」
とも「うーん……? まあ、そう言われればそうかも?」
イヌ「じゃあ、お呼びしましょうよ!」
ゴマ「お! ならプロングホーン様も呼ばないとな! なんたって速いからなっ!」
かば「では、角が生えてるフレンズさん達に声をかけていってみましょう!」
サバ「すっごく強そう!」
アム「……勝てるだろうか……?」
イヌ「演技! 演技ですから! ほんとに戦うわけじゃないですからっ!」
アム「む? ……そうか」
ゴマ「アム姐が本気出したら劇場がもたないぜぇ……」
かば「あはは……えと、じゃあ『お爺さん』と『お婆さん』はどうしましょうか?」
とも「はいはーい! あたし、博士と助手の二人がいいと思う!」
サバ「え~? あの二人がやってくれるかなー?」
イヌ「一筋縄ではいかないでしょうね……」
ゴマ「いやー……無理じゃねぇ?」
かば「……あ! ひょっとしたら、いけるかも……!」
一同「???」
☆★☆
アフリカオオコノハズク「駄目ですね」
ワシミミズク「我々はそんな遊びに付き合っていられるほど暇じゃないのです」
コノ「我々は忙しいのです。この群れの長なので」
ミミ「それはもう、目が回るほどなのです。この群れの長なので」
サバ「ほら、やっぱり!」
イヌ「どうするんです? かばんさん」
かば「えっと……では、とりあえず料理の道具と材料を貸してもらえますか?」
コノ「ほほう? また料理を?」ジュルリ
ミミ「我々にも食べさせるのであれば、貸すのです」ジュルリ
とも「……あ! そういうことか!」
かば「ふふっ、もちろんですよ」
コノ「……? なら、勝手に使うといいです」
ミミ「……何を企んでいるのです……?」
かば「あ、本もお借りしますね」
サバ「???」
イヌ「……ひょっとして……」
☆★☆
かば「これで出来上がり、です!」ホカホカ
とも「お~! おいしそ~!」
サバ「いー匂い! かばんちゃん、これなんて言うの?」
かば「これは『お団子』って言う料理だよ!」
イヌ「やはり……!」
サバ「へ~!」
かば「本当は『きび団子』にしたかったんだけど、本に書いてなくて……」
とも「大丈夫、大丈夫! ちゃんとおいしそうだしっ!」
コノ「出来たのですか、かばん?」
ミミ「出来たのなら早く食べさせるのです」
かば「はい、どうぞ!」
コノ「では、さっそく」パクッ
ミミ「どれどれ」パクッ
モッキュ モッキュ
コノ「こ、これは!」
ミミ「ふんわりと、もっちりとしてて……甘い!」モッキュモッキュ
コノ「柔らかいのに噛みごたえがあって……なんと不思議な……!」モッキュモッキュ
サバ「……」ジュルリ
とも「あたし達も食べていーい?」ニヤニヤ
かば「ええ、どうぞ!」
サバ「わーいっ!」パクッ
イヌ「では失礼して……」パクッ
とも「いただきまーす!」パクッ
モッキュ モッキュ
サバイヌとも「おーいしーっ!」
サバ「これ、すっごくおいしいよ!」
とも「は~、お口の中がしあわせ~……」
イヌ「流石はかばんさんですね……!」
サバ「そうだよ! かばんちゃんはすっごいんだからっ!」エッヘン
かば「えへへ……ありがとう」
コノ「……む!」モッキュモッキュ
ミミ「お前達、あまり食べると我々の分が減るのです!」モッキュモッキュ
とも「え~? こっちのは博士達の分じゃないよ~?」ニヤニヤ
コノ「な! 何を言っているのですっ!」
ミミ「まだそんなに沢山あるのですっ! おかわりをよこすのですっ!」
とも「だって~、ねえ?」チラッ
イヌ「……! そうですね、こっちの分は博士達には渡せません!」
サバ「???」
とも「だって、こっちのは『劇で使う私達の分』だもんね~?」ニヤニヤ
かば「すみません。そういうことなので……」
コノ「な、な……!」
ミミ「なんという……っ!」
コノ「ふ、ふん! 別にいいのですっ! 作り方は見ていて分かったのです! 我々は賢いのでっ!」
ミミ「またヒグマに作らせれば良いのです! 我々は賢いのでっ!」
かば「あ、ごめんなさい。多分材料は……」
とも「ねーねーラッキーさん? 『お団子』の材料はあとどのくらい残ってる?」
ラッキービースト「もう殆ど残ってないヨ」
コノミミ「……っ!」ガーン
イヌ「沢山作りましたからねぇ」
コノ「そ、そんな……!」
ミミ「も、もうこちらのは食べきってしまったのです……」
とも「劇で使うからなー。これ以上はあげられないなー」ボウヨミー
サバ「あっ、そうだ! 二人とも劇に出ればいいんだよっ! そしたらまた食べれるよ!」
コノ「はっ! 確かに……!」
ミミ「……博士」チラッ
コノ「ええ……」コクリ
コノ「仕方がないのです。劇に出てやるです!」
ミミ「だからおかわりをよこすのです!」
サバとも「やったーっ!」ピョン
イヌ「やりましたね、かばんさん!」
かば「よかった……上手くいって……」
コノ「……してやられたのです……」ガックリ
ミミ「……巧妙な罠だったのです……」ガックリ
コノ「やはり『ヒト』とは……なんと恐ろしい……!」
ミミ「かばんもやるようになったのです……」
サバ「だって、かばんちゃんだもんっ!」エッヘン
かば「あはは……」ポリポリ
とも「さて! こっちはこれでオッケーだけれども……」
イヌ「向こうはどうなってますかね……?」
☆★☆
ヘラジカ「力強さこそが強さだっ!」
プロングホーン「いや、速さこそが強さだっ!」
アム「……」
ゴマ「……ぜぇ……」ゲンナリ
ライオン「いやー、面白いねぇ」ゴロゴロ
チーター「ふんっ! ばっかみたい!」ゴロゴロ
とも「おーいっ!」
ヘラ「む?」
プロ「お?」
アム「……!」
ゴマ「ともえ! イエイヌ!」
とも「むこうは上手くいったよっ!」
イヌ「大成功です!」
ゴマ「おお! やったな!」
とも「で、こっちは?」
ゴマ「……それなんだけど……」
ヘラ「ともえ! いいところに来た!」
プロ「お前達も聞いてくれ!」
とも「へ?」
ヘラ「強さといったら、力強さだろう?」クワッ
プロ「強さとは、より速いことだよな?」クワッ
とも「えぇ……?」
イヌ「……」アチャー
ゴマ「……すまねぇ、止められなかった……」
アム「……すまん」
ヘラ「だから言っているだろう?! 何者をも寄せ付けない圧倒的なパワー! これに勝る強さなど無い!」
プロ「いや、違うな! すべてを置き去りにする圧巻のスピード! これこそが強さだ!」
ヘラ「何を!」
プロ「何だ!」
ゴマ「……出会ってからこっち、ずっとこの調子だぜぇ……」グッタリ
アム「……先にどちらかを連れていくべきだった……」ショボン
とも「あ~……なるほど……」
イヌ「方向性は違えど似たものどうし、と……」
とも「……つまり、どっちも脳きn――むぐっ!」ギュムッ
イヌ「それ以上いけない」
ヘラ「ええい、埒が明かん! ライオン! お前も同じ意見だよな!?」
ライ「え~、どっちでもいいじゃん?」ゴロゴロ
プロ「なあ、おい! チーター! ロードランナー! 共に速さを極めんとするお前達なら、分かってくれるよな!?」
チタ「ちょっと! あんたと一緒にしないでよ!」ゴロゴロ
ゴマ「プ、プロングホーン様ぁ……今はちょっと……その話は置いておいてもらえると……」
プロ「ならん!」
ゴマ「あうぅ……」ガックリ
アム「……」ポンポン
イヌ「……もういっそのこと、勝負して決めてしまったほうが……」
ゴマ「……その勝負の方法で、もう5周くらいは揉めてるぜぇ……」グッタリ
イヌ「そんなに」
とも「……ふーん……?」
アム「……何か、いい案が?」
とも「んー? そだねえ……」トコトコ
アム「……?」
とも「ねーねー、お二人さん?」
ヘラプロ「分かってくれるかっ?」クワッ
ライ「なははは、息ぴったりだねぇ」
とも「んーん、違うよ」フリフリ
とも「……二人は『本当の強さ』って何か、で揉めてるんだよね?」
ヘラ「そうとも! 力こそ強さだ!」
プロ「そうだ! 速さこそが強さ!」
とも「ブッブー、どっちも外れ!」バッテン
ヘラプロ「な、なにぃっ!?」
とも「ふふーん、あたしは知ってるよ? 『本当の強さ』が何かって」
ヘラ「どういうことだ、ともえ!」
プロ「一体何だと言うんだ、お前は!」
とも「それはねー、私達のやる劇に出てくれたら分かるよ!」
ヘラ「劇?」
プロ「何の話だ?」
イヌ「……えっ、その説明から?!」
ゴマ「したぜぇ……何回も、何回も……」シクシク
アム「……」ナデナデ
とも「その劇でね、二人にはアムールちゃんと戦う役をお願いしたいの!」
ヘラ「ほほう?」ピクッ
プロ「……いや、ちょっと待て。それとこれとは話が別だろう?」
とも「いーや、別じゃないよ。その役は『鬼』って言ってね、とーっても強いやつらなんだー」
プロ「『鬼』……?」
ヘラ「なら私にぴったりだな!」フフン
とも「ま、最後は負けちゃうんだけどね?」
ヘラ「なにぃ?!」
プロ「……つまり我々が『鬼』をやって、アムールトラに負けることで『本当の強さ』を知れ、と?」
とも「そういうことっ!」
ヘラ「なるほど……」
プロ「……しかし、そんなことで本当に分かるのか?」
とも「んー、それはやってのお楽しみ、かな?」
ライ「まーまー、やってみたらいいんじゃない? 面白そうだし!」ゴロゴロ
チタ「早く決めなさいよ! このままずっとグダグダしてるつもり?!」ゴロゴロ
プロ「むぅ……」
ヘラ「よし! のった!」
とも「やたっ!」
プロ「……そいつが出て、私が出ないわけにもいかん。私もやるぞ!」
とも「ぃよしっ!」グッ
ゴマ「おお……!」
アム「……流石だな」フッ
イヌ「……ともえさん、ともえさん」グイッ
とも「ん? なに?」
イヌ「……あんなこと言ってましたが、二人が納得するような答えってあるんですか?」ヒソヒソ
とも「んーん、無いよ?」ヒソヒソ
イヌ「ええっ?!」ヒソヒソ
とも「とりあえずやってもらえれば、後は勝手になにかいい感じに見つけてくれるかなーって」ヒソヒソ
イヌ「詐欺だーっ!?」ガーン
アム「……どうした?」
とも「なんでもないよー」シレッ
イヌ「……はは、は……」タラ-
アム「……?」
ゴマ「うぅ……やっと終わったぜぇ……」
とも「お疲れさまっ! でもまだ終わってないよー?」
ゴマ「ぜぇ?」
とも「ねえライオンさん、オーロックスさんとオリックスさんにもお願いしたいんだけど……いいかな?」
イヌ「角が生えてる方々にお願いしていってるんですよ」
ライ「んー? あー、いいよー。勝手に連れてっちゃってー」ゴロゴロ
とも「ありがとう!」
ヘラ「ほう……あいつらもか!」
アム「……あと何人だ?」
とも「んー、とりあえず4人も居てくれれば大丈夫だよ!」
ゴマ「じゃあ、役者集めは終わりかー?」
イヌ「一旦皆さんと合流しましょう!」
☆★☆
アメリカビーバー「ここをこうして、こう……こんな感じでどうっすか?」
かば「……はい! 良いと思います!」
ビバ「じゃ、お願いするっす!」
オグロプレーリードッグ「了解であります!」
サバ「まっかせてーっ!」
カリカリ ガタガタ トンテンカンテン ギッコンバッタン
とも「わぁ……! もうこんなに出来てる!」
イヌ「すごいですね!」
ヘラ「おお……ここが決戦の舞台か!」
プロ「ふむ……決着をつけるにふさわしいな!」フンスッ
ゴマ「プ、プロングホーン様、お、落ち着いてください……!」
オーロックス「お、俺、もう緊張してきた……!」ドキドキ
アラビアオリックス「や、やめてくれよ……わ、私までっ……!」ドキドキ
アム「……ずいぶんと手際の良い……」キョロキョロ
コノ「当然なのです。我々がついているので」
ミミ「さっさと済ませて、おかわりを頂くのです」
サバ「ねーっ! 二人とも手伝ってよー!」
コノ「我々は頭脳労働派なのです。我々は賢いので」
ミミ「作業は分担して行ったほうが効率が良いのです。我々は賢いので」
サバ「さっきから見てるだけじゃない!」プンスカ
かば「あ! 皆さん戻ってこられましたね!」
とも「『鬼』役、集めてきたよー!」
ヘラ「来たぞ、かばん!」
プロ「故あって協力させてもらおう!」
オロ「よ、よ、よろしく……」ガチガチ
ラビ「こ、こ、こっちも、よろしく……」ガチガチ
かば「はい! よろしくお願いします!」ペコリ
とも「とりあえず役者はこれでオッケーかな?」
かば「そうですね……では、まず先に手分けして劇場を完成させて、それから練習に入りましょう!」
一同「おーーっ!!」
☆★☆
ビバ「じゃあ、俺っち達はこのへんで!」
プレ「劇、楽しみにしてるであります!」
かば「ありがとうございました! お二人のおかげで、こんなに早く……!」
ビバ「いやいや、かばんさんの要望が分かりやすくて、指示が出しやすかったおかげっすよ!」
プレ「きっとそうであります! 『お団子』もおいしかったでありますし、必ず上手くいくでありますよ!」
かば「……っはい!」ペコリ
とも「じゃっ、またねっ!」ノシ
ビバプレ ノシ
とも「……よしっ! 次は練習だっ!」
かば「はいっ! がんばりましょう!」
☆★☆
コノ「……では、この『お団子』を持っていくがいいです……」
ミミ「……頑張ってくるのです……」
アム「……」コクリ
グイッ
アム「……?」グイグイ
アム「……手を、離してくれないか?」
コノ「……かばん……話が違うのです……」
ミミ「……この『お爺さん』と『お婆さん』の役では……『お団子』が食べられないのです……」
かば「うえぇっ?! えーっとぉ……」
サバ「さっき食べてたじゃん!」
コノ「それはそれ、これはこれ、なのですっ!」
ミミ「せっかく劇に出ているというのに、食べずに渡す役だったとは……」
コノ「……お前、『雉』の役と交換するです。そうすればたべ――きっと、いい感じになるです」
ゴマ「ふぇえっ?!」
ミミ「いやいや博士、ここはこの助手にお任せを」
コノ「いやいや助手、それには及ばないのです」
コノミミ「いやいやいやいや――」
ゴマ「ど、どんだけ『お団子』食べてえんだ……?」
イヌ「……なんだか、別のお話に出てきそうな『お爺さん』と『お婆さん』ですね……」
とも「じゃーもーしょうがない! 『お爺さん』と『お婆さん』が『お団子』を食べるシーンも入れちゃおうよ!」
かば「ええっ?! ……いいのかなぁ?」
とも「いいんじゃなーい? 分かりやすいほうが、さ?」
かば「……? じ、じゃあ、『桃太郎』に渡す前に一度、『お団子』を食べるシーンを入れてみましょう!」
コノ「よしきたです!」
ミミ「そうこなくては!」
☆★☆
コノ「もぐもぐ……こんなにおいしい『お団子』を食べれば……」モッキュモッキュ
ミミ「もぐもぐ……きっと『鬼』退治も楽勝なのです」モッキュモッキュ
アム「……では、行ってくる」スタスタ
コノ「……ふむ、良い役に仕上がったのです」ケプッ
ミミ「これなら観客も大満足なのです」ケプッ
かば「あ、あはは……」
サバ「あんまり食べてると、なくなっちゃうよー?」
かば「うん、だからサーバルちゃんもつまみ食いはほどほどにね?」
サバ「なんで分かったのーっ?!」ガーン
かば「いや……だって、二人に渡してもらってる数と、持って行ってもらってる数が合わないから……」
ゴマ「まだまだあるけど……本番までにごっそり減ってそうだぜぇ……」
とも「あっはっはっ! ほんとおいしそうに食べるよね~、あの二人」
イヌ「何か……執念が違いますよね」
かば「うーん……あんまり変えすぎると、元のお話から離れていっちゃいそうな……?」
とも「……だめ、かな?」
かば「だめ、というよりは……元のお話を考えてくれた人に申し訳ないなぁ、って……」
とも「……あたしは……」
かば「……?」
とも「あたしは、いいと思う。うん」
とも「だって……せっかくみんなで一緒にやるんだもん。楽しくやれたら、それが一番だよっ!」
かば「……楽しく……」
とも「そうそう、楽しく楽しく! でもって、お話を考えてくれた人には『ありがとうございました!』でいいんだよっ!」
かば「……そうだね!」
サバ「かばんちゃーんっ! 次はどうしたらいいの?」フリフリ
かば「あ! えと、次はイエイヌさんの出番だから……これを持って行って!」
サバ「わかったーっ!」タッタッタッ
かば「……ねえ、サーバルちゃん」
サバ「ん? なになにー?」
かば「サーバルちゃん……今、楽しい?」
サバ「うんっ! 初めてやることばっかりで面白いし、楽しいよっ!」ニコッ
サバ「かばんちゃんは?」
かば「……! うん! 僕も楽しいよ!」
とも「……」ニコニコ
イヌ「どうしたんです?」
とも「んーん、なーんでもないっ!」
イヌ「……? そうですか」
とも「ただ……思ったより上手くいきそうだなーって」ニヤリ
イヌ(まーた悪い顔してる……)
とも「さ! 出番、出番!」
イヌ「あ、はい!」
☆★☆
ヘラ「やーやー、我こそはヘラジカだっ!」ドンッ
オロ「だから違うって! 今、俺達は『鬼』なんだから『鬼』だって言わなきゃ!」
ヘラ「む! そうか! そうだった、失敬!」
ラビ「本番、大丈夫かなぁ……」ブルブル
プロ「なに、そのための練習だ。失敗を恐れるな!」ドンッ
ゴマ「流石はプロングホーン様っ! かっこいい!」キラキラ
ヘラ「ほう、いいことを言うじゃないか! その通りだ!」
ラビ「お前はもっと反省してくれぇっ……!」
オロ「ヘラジカ……やっぱやべえよぉ……!」
かば「あ、あはは……で、では、次のシーンは戦いになるんですが……」
かば「……そうですね、『桃太郎』さん達は中央の目立つところに、『鬼』さん達はそれを囲むような位置に移動して下さい!」
アム「……分かった」スタスタ
とも「うあ~! 囲まれるぅ~!」キャッキャッ
ゴマ「緊張感無えなぁ……」
イヌ「ま、まあ、まだ練習ですし……」
ヘラ「で、それからどうするんだ?」
かば「えと……じゃあ、まずイエイヌさんと向かいのオリックスさんから戦ってもらって、後は順番にお願いします!」
イヌ「はい!」
ラビ「わ、私からっ?!」タジッ
オロ「が、がんばれっ!」
とも「リラックス、りら~っくすっ!」
プロ「大丈夫だ! お前なら勝てる!」
ゴマ「勝っちゃダメですよっ?!」
プロ「む?」
☆★☆
ヘラ「ぐはあっ! ……ま、まいった! 降参だ!」
ヘラ「……どうだ?」
かば「はいっ! すごく良かったです!」
サバ「すごいよみんなー! 最初よりずっと上手くなってるっ!」
ラビ「ほんとかっ!?」
オロ「おお……なんだか、いけそうな気がしてきたぞ、俺!」
コノ「まずまず、といったところです」モッキュモッキュ
ミミ「あなた達にしては、上出来なのです」モッキュモッキュ
サバ「あーっ! また食べてるー?!」
ゴマ「しかもムダに偉そうだぜぇ……」
コノ「ムダではないのです。偉いのです。この群れの長なので」ケプッ
ミミ「それに、出番の前には補給が必要なのです」ケプッ
サバ「もー! ほら次っ、出番だよ!」ササッ
イヌ「……今、小道具と一緒に『何か』も取りましたね……」ヒソヒソ
とも「いっぱい動いてくれてるからねー。お腹すくんじゃない?」ヒソヒソ
かば「それでは、次が最後のシーンですっ! それが終わったら一度休憩しましょう!」
一同「おーっ!」
☆★☆
イヌ「みなさーん! お茶が入りましたよー!」
かば「ありがとうございます!」
サバ「これもいい匂いだね!」
コノ「ほう、『りょくちゃ』ですか……」
ミミ「たいしたものなのです」
サバ「何が?」キョトン
コノ「『お団子』を添えるとバランスが良いのです」モッキュモッキュ
ミミ「教えた甲斐があったのです」モッキュモッキュ
ゴマ「あれだけ食べてまだ入るのかよっ……!」
とも「まあ、おいしいからねー」モッキュモッキュ
イヌ「はい、アムールさんもどーぞ!」
アム「……頂こう」
アム「……」フーフー
イヌ「あ、それはもう冷ましてありますから……」
アム「……っ! そっ、そうか」///
とも「……」ニヤニヤ
ゴマ「と、ともえぇ……ぷぷっ、笑っちゃ悪いぜぇ?」ニヤニヤ
アム「……」ジトッ
ゴマ「ひぇっ!」ビクッ
とも「んふふ、ふーふーするアムールちゃんかわいい」
アム「なっ?! そ、そんなことは……ない……」タジタジ
イヌ「ま、まあまあ……誰にでも得意じゃないことはありますから……」
とも「むしろ、あたし的には大丈夫なサーバルちゃんのほうが意外かな?」
サバ「うみゃ?」
とも「あ、なんでもないよー。こっちのはなしー」ヒラヒラ
イヌ「……それにしても」チラッ
ワイワイ ガヤガヤ
ヘラ「お前達もようやく硬さが抜けてきたな!」
プロ「うむ、この調子でいけば大丈夫だ!」
オロ「おう! まかせろ!」
ラビ「やれるっ……私達ならやれる!」グッ
ヤルゾー! オー!
コノ「――では、呼び込みはあの二人に任せるですか?」
かば「はい。あのお二人は顔が広いと思うので、お願いできたらな、と」
ミミ「妥当ですね。かばんが頼めば、一も二も無くすっ飛んでいくはずです」
コノ「きっと山のように連れてくるですよ」
サバ「じゃあ私、二人のこと探してくるよ!」
かば「サーバルちゃん……お願いね!」
ワイワイ ガヤガヤ
イヌ「……なんだか、みなさんノってきましたね?」
とも「うんうん、いい感じいい感じっ!」
ゴマ「なんだかんだ言ったって、みんな楽しいのが好きだからな!」
イヌ「ですねぇー」シミジミ
アム「……」
とも「……」ウズウズ
とも「ぃよし! 休憩おわりっ! 練習しよっ!」バッ!
ゴマ「えっ、はやっ?!」
イヌ(たぶん、誰より一番はしゃいでますね……)クスッ
☆★☆
かば「それでは最後に、始めから最後まで通してやってみましょう!」
コノ「よしきたです」
ミミ「やるのです」
ヘラ「うむ! しまっていこう!」
プロ「本番だと思ってやろうではないか!」
オロ「おっしゃあ! やるぜ!」
ラビ「よし! 決めるぞ!」
ゴマ「油断するなよ、みんな!」
イヌ「がんばりましょう!」
アム「……よし」
とも「んじゃ、始めようっ!」
一同「おーー!!」
――――――
かば「むかーし、むかし、あるところに『お爺さん』と『お婆さん』が二人仲良く暮らしていました」
かば「その日も、いつものように『お爺さん』は調べものをしに図書館へ」
かば「『お婆さん』は縄張りの見回りへと出かけて行きました」
コノ「では、いってくるです」
ミミ「気をつけていってらっしゃいです。『お爺さん』」
コノ「『お婆さん』も、なのです」
かば「そうして『お婆さん』が見回りをしていると、川にさしかかりました」
かば「すると、なにやら大きなものが流されてきているのを『お婆さん』が見つけました」
ミミ「あらまあ! なんと大きな桃なのでしょう!」
かば「それは、とてもとても大きな桃でした。いったいどこから流されてきたのか、まるで分かりません」
かば「やがて、どんぶらこ、どんぶらこ、と桃が『お婆さん』の前までゆっくりと流れてきました」
ミミ「おいしそうな桃なのです。持って帰って、『お爺さん』と一緒に食べるのです!」
かば「そうして『お婆さん』は、桃をよいしょと持ち上げ、巣まで持って帰りました」
かば「しばらくすると、『お爺さん』が図書館から帰ってきました」
かば「帰ってきた『お爺さん』に、『お婆さん』はこう言いました」
ミミ「『お爺さん』、『お爺さん』。今日はこんなに大きな桃を拾ったのです」
コノ「おお! とてもおいしそうな桃なのです。半分づつ、分けて食べるのです」
かば「そして、『お爺さん』が桃を二つに割ろうとした時でした」
アム「……」パカッ
コノ「おやまあ!」
ミミ「なんということでしょう!」
かば「桃がひとりでに真っ二つに割れたかとおもいきや、中から一人のフレンズが出てきたではないですか」
コノ「いったい、どなたでしょうか?」
ミミ「お名前は、何というのですか?」
コノ「どこから来たのですか?」
ミミ「なぜ、桃の中に入っていたのですか?」
アム「……分かりません」フルフル
かば「『お爺さん』と『お婆さん』はいろいろと尋ねてみましたが、名前も、どこにいたのかも、なんで桃の中に入っていたのかも分かりません」
コノ「それは困りましたね」
ミミ「きっと、いろいろと不安でしょう。落ち着くまで、好きなだけゆっくりとしていってください」
アム「……ありがとうございます」ペコリ
コノ「では、お友達になりましょう!」
ミミ「こちらは『お爺さん』、私は『お婆さん』です」
コノ「あなたは桃から出てきたので、『桃太郎』と呼びましょう」
ミミ「どうでしょうか?」
アム「……はい、よろしくお願いします」ペコリ
かば「こうして、桃から出てきたフレンズは『桃太郎』と名付けられ、『お爺さん』と『お婆さん』の友達になりました」
かば「そして、三人は一緒にすごすことになりました」
コノ「ふう、ふう」ヨタヨタ
アム「……どうしました?」
コノ「巣が壊れかけているので、直す材料を運んでいるのです」
アム「……ならば、私が運びましょう」ヒョイッ
コノ「おお! なんと力持ちな!」
かば「『桃太郎』は、とても力持ちでした」
ミミ「うーん、うーん」
アム「……どうしました?」
ミミ「どうやら、縄張りのどこかにジャパリまんを落としてきてしまったようなのです」
アム「……ならば、私が探してきましょう」シュバッ!
ミミ「おお! なんと素早い!」
かば「『桃太郎』は、とても素早く動けました」
かば「しかし、それだけではありません」
アム「……見つけてまいりました」
ミミ「おお! それは確かに私が落としたジャパリまん!」
コノ「見つけたのなら、黙って食べてしまうことも出来たでしょうに!」
ミミ「なんと正直なのでしょう!」
かば「『桃太郎』は正直者で、そしてなにより、とても優しいフレンズでした」
かば「そうやって、しばらく一緒にすごしていた三人でしたが、ある時『桃太郎』はこう言いました」
アム「……『お爺さん』、『お婆さん』、私は図書館へ行ってみようと思います」
コノ「それは、それは」
ミミ「どうして図書館へ行くのです?」
アム「……自分が何者なのか、知りたくなったからです」
かば「しばらく経ちましたが、自分のことは何一つ分からずじまい。いよいよもって『桃太郎』は、自分のことを知りたくなりました」
コノ「では、私が連れていってあげましょう」
アム「……いえ、それにはおよびません。私は一人でも大丈夫です」
ミミ「おやまあ!」
コノ「それではひとつ、おやつをこさえてあげましょう!」
かば「どんなに力持ちで素早い『桃太郎』であっても、お腹がすいてしまえばどうしようもありません」
かば「そこで『お爺さん』は、図書館で教えてもらったおやつを作って、『桃太郎』に持たせてあげることにしました」
コノ「これは『お団子』という食べ物です。これを持ってお行きなさいな」ドッサリ
アム「……こんなにたくさんは、一度に持っては行けません」
ミミ「ならば三人で分けましょう」
かば「たくさんの『お団子』を三人で分け、それを持って『桃太郎』は図書館へ行くことにしました」
この「もぐもぐ、うむ、良い出来です」モッキュモッキュ
ミミ「もぐもぐ、とてもおいしいのです」モッキュモッキュ
アム「……もぐもぐ、これは本当においしい」モッキュモッキュ
アム「……それでは『お爺さん』、『お婆さん』、行ってまいります」
コノ「この道を真っ直ぐ行けば、図書館に行けるのです」
ミミ「気をつけるのですよ」
アム「……」コクリ
かば「こうして『桃太郎』は図書館に向けて出発しました」
かば「『お爺さん』に言われた通り、道に沿って真っ直ぐ進みます」
アム「……」テクテク
イヌ「えーん、えーん」シクシク
アム「……どうしたんだい?」
かば「すると、道の途中で泣いているフレンズに出くわしました」
かば「『桃太郎』はそのフレンズを慰め、どうして泣いていたのかを聞きます」
イヌ「ジャパリまんが食べられなくて、お腹がすいて悲しくなって、泣いていたんです」
アム「……どうしてジャパリまんが食べられないんだい?」
イヌ「『鬼』達が、私のジャパリまんを持って行ってしまったのです」
アム「……なんとひどいことを!」
かば「その話を聞いて、『桃太郎』は怒りました」
かば「そして、何とかしてあげようと思います」
アム「……まずは、これをお食べ」スッ
イヌ「これは?」
アム「……『お団子』という食べ物だ。とてもおいしいよ」
かば「『桃太郎』はまず、お腹のすいているその子に『お団子』をあげました」
イヌ「もぐもぐ、おいしい!」モッキュモッキュ
イヌ「ありがとうございます! おかげで元気になりました!」
アム「……それはよかった」
アム「……では、その『鬼』達はどこへ行ったんだい?」
イヌ「あちらの方へ行きました!」スッ
かば「その子が指したのは、図書館とは違う方向の道でした」
かば「しかし、『桃太郎』は迷いません」
アム「……よし、ならば私が追って、ジャパリまんを取り返してこよう」
イヌ「まあ! なんてやさしい方なのでしょう!」
イヌ「どうか、あなたのお名前をきかせて下さい!」
アム「……私は『桃太郎』という。きみは?」
イヌ「私は『犬』です!」
イヌ「『桃太郎』さん、私も一緒に行かせて下さい!」
アム「……いいだろう。一緒に『鬼』達を追いかけよう」
かば「こうして『桃太郎』は、『犬』と一緒に『鬼』達を追うことにしました」
イヌ「くんくん、くんくん。『桃太郎』さん、こっちです!」
アム「……『犬』は鼻がきくのだね」
イヌ「探して、追いかけるのが得意なんです!」
かば「『犬』は『鬼』達の匂いを嗅ぎ分けられたので、二人は迷わず進むことが出来ました」
とも「えーん、えーん」シクシク
イヌ「『桃太郎』さん、『桃太郎』さん! この先で、誰かが泣いています!」
かば「するとまたしても、進んでいる道の先に泣いている子がいました」
アム「……どうしたんだい?」
とも「ジャパリまんが食べられなくて、お腹がすいて悲しくなって、泣いていたんです」
アム「……どうしてジャパリまんが食べられないんだい?」
とも「『鬼』達が、私のジャパリまんを持って行ってしまったのです」
アム「……なんとひどいことを!」
かば「またしても、『桃太郎』は怒りました」
かば「そして『犬』と同じように、お腹をすかせているその子に『お団子』をあげました」
とも「もぐもぐ、おいしい!」モッキュモッキュ
とも「ありがとうございます! おかげで元気になりました!」
アム「……それはよかった」
アム「……さて、行かなくては」
とも「どちらに向かうのですか?」
イヌ「私達は今、その『鬼』達を追っているんです!」
アム「……きみと同じく、この子も『鬼』達にジャパリまんを持って行かれてしまったんだ」
アム「……だから、君のぶんのジャパリまんも私が取り返してこよう」
とも「まあ! なんて親切な方なんでしょう!」
とも「どうか、あなたのお名前をきかせて下さい!」
アム「……私は『桃太郎』という。こちらは『犬』だ」
イヌ「あなたは何というんですか?」
とも「私は『猿』です!」
とも「『桃太郎』さん、私も一緒に行かせて下さい!」
アム「……いいだろう。一緒に『鬼』を追いかけよう」
かば「こうして『猿』が仲間に加わり、三人で『鬼』達を追います」
イヌ「くんくん、くんくん。どうやら、この崖の下へ降りていったようです!」
アム「……こんなに高い崖を降りたのか」
かば「三人の前に、すとんと落っこちてしまいそうな崖が現れました」
かば「流石の『桃太郎』も、これはどうしようもありません」
アム「……さて、どうしたものか」
とも「ここはひとつ、私にお任せを!」
かば「そう言って『猿』は、あたりから蔦をたくさん集めてきて、それを器用に編んでいきました」
かば「長く、長く、崖の下に届くまで編んだそれを、近くの木に結んでこう言いました」
とも「さあさあ! これをつたって降りましょう!」
アム「……『猿』は手先が器用なのだね」
とも「作ったり、使ったりするのが得意なんです!」
かば「『猿』の垂らした蔦を使うことで、三人は難なく崖を降りることが出来ました」
ゴマ「えーん、えーん」シクシク
イヌ「『桃太郎』さん、『桃太郎』さん! この先で、誰かが泣いています!」
かば「するとまたまた、進む先に泣いている子がいました」
アム「……どうしたんだい?」
ゴマ「ジャパリまんが食べられなくて、お腹がすいて悲しくなって、泣いていたんです」
アム「……ジャパリまんを、『鬼』達に持って行かれたのだね?」
ゴマ「その通りです! どうして分かったのですか?」
アム「……この『犬』と『猿』も、同じように泣いていたからだ」
かば「そして前の二人と同じように、お腹をすかせているその子に『お団子』をあげました」
ゴマ「もぐもぐ、おいしい!」モッキュモッキュ
ゴマ「ありがとうございます! おかげで元気になりました!」
アム「……それはよかった」
アム「……さて、行かなくては」
ゴマ「どちらに向かうのですか?」
とも「私達は今、その『鬼』達を追っているんです!」
アム「……だから、君のぶんのジャパリまんも私が……いや」
アム「……よければ、君も一緒にジャパリまんを取り返しに行かないか?」
ゴマ「はい! もちろんです!」
ゴマ「私は『雉』です! あなたのお名前は?」
アム「……『桃太郎』という」
ゴマ「どうして『桃太郎』さんは『鬼』達を追うのですか?」
かば「『雉』達三人とは違い、『桃太郎』は『鬼』達にジャパリまんを持って行かれてはいません」
かば「しかし『桃太郎』にとって、それは当然のことでした」
アム「……それは、ひどいことをするやつらを放っておけぬからだ」
ゴマ「まあ! なんて正義感の強い方なんでしょう!」
かば「こうして『雉』が仲間に加わり、四人で『鬼』達を追います」
イヌ「くんくん、くんくん。どうやらこの川を渡って行ったようです!」
アム「……こんなに太い川を渡ったのか」
かば「四人の前に、太く流れの速い川が現れました」
かば「流石の『桃太郎』も、これはどうしようもありません」
アム「……さて、どうしたものか」
ゴマ「ここはひとつ、私にお任せを!」
かば「そう言って『雉』は高く高く飛び上がり、『桃太郎』達でも飛び越えられる川幅の場所を見つけました」
ゴマ「あそこなら、渡れそうですよ!」
アム「……『雉』は、高く飛べるのだね」
ゴマ「飛んだり跳ねたり、動き回るのが得意なんです!」
かば「『雉』の見つけた場所から、四人は簡単に川を渡ることが出来ました」
かば「順調に進んでいた四人でしたが、やがて進む先は険しい山道へと変わっていきました」
イヌ「くんくん、くんくん。『鬼』達はきっとこの先です!」
かば「『犬』が先導した先で、とても大きな岩が道を塞いでいました」
かば「『雉』はともかく、ほかの三人は飛び越せそうにありません」
とも「うーん、これは困ったなあ」
アム「……ここは私に任せてもらおう」
アム「……えいやっ!」ズズズッ
かば「かけ声とともに、『桃太郎』は大きな岩を道からどかせてしまいました」
イヌ「なんと力強い!」
アム「……私は、こういうことが得意なんだ」
かば「こうして『桃太郎』達は、道の先へ進むことが出来ました」
かば「そして、ついに……」
ゴマ「いた! いました! 『鬼』達です!」
とも「とうとう追いついたぞ!」
イヌ「さあさあ、私達のジャパリまんを返してもらおう!」
かば「道の先、山のてっぺんに『鬼』達はいました」
オロ「んー?、なんだぁ、お前らぁ?」
ラビ「一体なんの用だ?」
アム「……お前達が、この三人のジャパリまんを持って行った『鬼』で間違いないな?」
オロ「あー? なんのことだぁ?」ニヤニヤ
ラビ「さっぱり分からんなぁ?」ニヤニヤ
イヌ「とぼけないで!」
とも「忘れたとは言わせない!」
ゴマ「早く返してくれよ!」
オロ「ちっ! おーい! お前らも来いよ!」
プロ「どうした、どうした?」
ヘラ「なんだこいつらは?」
ラビ「ジャパリまんを返してくださぁ~い、だってさ!」ケラケラ
プロ「ふん、あれは私らが“貰った”ものだ」
ヘラ「いまさら返せと言われて返せるか!」
かば「『鬼』達は偉そうに、ふんぞり返りながらそう言います」
アム「……もう一度聞く。お前達が、この三人のジャパリまんを持って行った『鬼』か?」
かば「『桃太郎』は静かに、ゆっくりと、確かめます」
ヘラ「いかにも! 我らがその『鬼』で間違いないぞ!」
プロ「それがどうした?」
アム「……どうして、そんなひどいことをする?」
ヘラ「決まっている! 腹が減っていたからだ!」
プロ「我らは強い! 強いものは、好き勝手して良いのだ!」
ヘラ「弱いやつがいけないのだ!」
イヌ「なんて自分勝手な!」
とも「じゃあ、私達がお腹をすかせていてもいいって言うの?!」
ヘラ「そんなこと、知ったことか!」
アム「……もういい、分かった」
プロ「ほう、そうか! 分かったのなら帰れ!」
かば「『鬼』達のあまりの言いように、さしもの『桃太郎』も限界です」
アム「……強いものは、好き勝手して良いのだったな?」
プロ「その通りだ!」
アム「……ならば、私達がお前達に勝って、ジャパリまんを取り返しても、文句は無いな?」
ヘラ「んん? はっはっはっ! まさか我らに勝つつもりか?」
アム「……そのつもりだ!」
かば「『桃太郎』は、いまだかつて無いほどに怒っていました」
かば「それはもう、山が割れるような噴火のように、空を引き裂く雷のように、すべてを吹き飛ばす嵐のように、怒っていました」
プロ「ええい、生意気な!」
ヘラ「囲め! 一人も逃がすな!」ザッ!
オロ「おう!」ザッ!
ラビ「後悔させてやる!」ザッ!
ゴマ「か、囲まれた!」オロオロ
イヌ「ど、どうしましょう?!」オロオロ
とも「こ、恐いよう」オロオロ
アム「……みんな、聞いてくれ」
かば「怯える三人に、『桃太郎』は言いました」
アム「……恐がることはない。たとえ戦うことが得意でなくとも、出来ることがあるはずだ」
アム「……私でも、奴ら全員を一度に相手することは出来ない。少しの間だけ、時間を稼いでほしい」
イヌ「わ、分かりました!」
とも「恐い……けど!」
ゴマ「やれるだけ、やってみます!」
かば「『桃太郎』の言葉に、『犬』も『猿』も『雉』も、勇気を振り絞ります」
ヘラ「ええい、何をゴチャゴチャと! かかれえぃ!」
プロ「思いしらせてやる!」
オロ「うおおおっ!」
ラビ「まずはお前からだ!」
イヌ「簡単には、負けませんよ!」
イヌ「ウ~、ワン! ワンワン!」
ラビ「うおっ!? な、なんだ?!」タジッ
かば「まず『犬』が、大きく吠えて相手を威嚇し、怯ませました」
とも「えいっ! えいっ! このっ!」ポイポイッ
ヘラ「いたっ! いたたたた!」ポコンポコン
かば「次に『猿』が、落ちている石を拾って、相手に投げつけました」
プロ「このっ! 卑怯だぞ! 降りてこい!」
ゴマ「へっへーん! やーだよっ!」バサッバサッ
かば「次に『雉』が、相手に捕まらないくらいの高さまで飛び上がり、挑発して怒らせました」
オロ「ふんっ!」ガシィ
アム「……」グッ
オロ「くっくっく、捕まえたぜ!」グググッ
オロ「この俺の、自慢の力に勝てるかぁ?」ニヤニヤ
アム「……」ヒョイ
オロ「へ? え、え? ちょ、ちょま……っ!」
アム「……ふんっ!」ポイッ
オロ「うわああああっ!」
かば「そして『桃太郎』は、力自慢の相手を、簡単に投げ飛ばしてしまいました」
アム「……」ズンズン
イヌ「ワンワン! ワンワン!」
ラビ「ええい、やかましい! 黙らせてやる!」
アム「……」ポンポン
ラビ「なんだ!? 今忙し……い?」
アム「……ふんっ!」ブンッ
ラビ「ぐはっ……!」ドサッ
イヌ「『桃太郎』さん!」
アム「……よくがんばったな」
かば「次に、『犬』に気を取られていた『鬼』を、一撃で倒してしまいました」
ヘラ「な、なにぃ!? あの二人がやられただと?!」
プロ「そ、そんな……!」
プロ「くっ、あんなやつの相手など出来るかっ!」ダッ
ゴマ「あ! 逃げた!」
アム「……一人も逃がさん!」シュバッ
プロ「ぐはあああっ!」ドサッ
かば「次に、逃げ出した『鬼』に素早く追いつき、また一撃で倒してしまいました」
かば「これで残る『鬼』は、あと一人」
ヘラ「ふ、ふん! どいつもこいつも腰抜けばかりだ!」
アム「……」ズンズン
ヘラ「うおおおおっ!」ダッ
アム「……ふんっ!」ブンッ
ヘラ「ぐああああっ!」ドサッ
とも「や、やった!」
イヌ「『桃太郎』さんが勝った!」
ゴマ「流石は『桃太郎』さん!」
かば「こうして最後の『鬼』もまた、『桃太郎』は一撃で倒してしまいました」
かば「『桃太郎』は、倒した『鬼』に跨がり、こう言います」
アム「……どうだ、参ったか?」ジロリ
ヘラ「ま、参った! 降参だ!」
アム「……お前達は?」
プロオロラビ「参った! 参りました!」
アム「……ならばジャパリまんは返してもらうぞ」
かば「そして『桃太郎』は、『鬼』達からジャパリまんを取り返しました」
イヌ「『桃太郎』さん! ありがとうございました!」
とも「おかげでジャパリまんが戻ってきました!」
ゴマ「これでまた、お腹いっぱいジャパリまんが食べられます!」
アム「……礼にはおよばん」フルフル
かば「三人で『桃太郎』にお礼を言いますが、『桃太郎』はゆっくりと首を振ります」
アム「……きっと私一人であったなら、とてもここまではたどり着けなかっただろう」
アム「……私は強い。だがそれは、なんでも出来るということではないのだと、君達に教えてもらった」
アム「……だから、これは私だけのおかげじゃない。みんなのおかげだ」
かば「『桃太郎』は気付いていました」
かば「『雉』がいなければ、きっとあの川は渡れなかったでしょう」
かば「『猿』がいなければ、きっとあの崖を降りられなかったでしょう」
かば「『犬』がいなければ、そもそも『鬼』達を追いかけることが出来なかったでしょう」
かば「得意なことはそれぞれ違うけれど、みんなで力を合わせれば、きっとなんでも出来るということを」
イヌ「あれほど強いのに……!」
とも「なんてつつしみ深い方なんでしょう!」
ゴマ「やっぱり、流石は『桃太郎』さんだ!」
アム「……おや?」
かば「それでも『桃太郎』を褒める三人をよそに、『桃太郎』が何かに気付きます」
ラビ「うう……」シクシク
オロ「ああ……」シクシク
プロ「……」シクシク
ヘラ「お、お前ら……な、泣くんじゃない」メソメソ
アム「……どうしてお前達が泣く?」
かば「なんとあの強がっていた『鬼』達が、めそめそと泣いているではありませんか」
かば「負けたことが悔しくて、泣いているのでしょうか?」
ヘラ「そ、それは、すっかりお腹がすいてしまっているから……」メソメソ
プロ「と、とてもひもじくて、悲しいのです」メソメソ
オロ「お腹すいたよぉ~……」シクシク
ラビ「あぁ……何か、食べもの……」シクシク
アム「……自分達の分のジャパリまんはどうした?」
プロ「そ、それはもう食べきってしまっていて……」
ヘラ「私達にとっては、量が少ないのです」ションボリ
かば「『鬼』達は、それはもうたくさん食べるものですから、とっくに自分達の分のジャパリまんは食べきってしまっていたのです」
かば「だから、ほかのフレンズ達のジャパリまんを持って行ったのでした」
イヌ「私達に同じ思いをさせたくせに!」
とも「私達だって、たくさんたくさん泣いたんだから!」
ゴマ「こんなやつら、放っておきましょう!」
オロ「ううぅ……」シクシク
ラビ「そんなぁ……」シクシク
かば「そんな身勝手に巻き込まれた三人は、いまだに怒りが収まりません」
かば「しかし、『桃太郎』は違いました」
アム「……お前達、そんなに腹が減ったのか?」
ヘラ「は、はい……それはもう、ぺこぺこで……」
アム「……これを、お前達にやろう」スッ
プロ「こ、これは?」
アム「……『お団子』という食べ物だ」
オロ「た、食べ物っ!」ガバッ
アム「……きちんと分けて食べるんだ」
ラビ「は、はい!」
かば「『桃太郎』は、残っていたすべての『お団子』を『鬼』達に渡してしまいました」
イヌ「『桃太郎』さん!? どうしてですか?!」
とも「あんなにおいしい『お団子』なのに!」
ゴマ「納得いきません!」
アム「……まあ、待て」
かば「怒る三人を、『桃太郎』は制します」
かば「そして『鬼』達は、すぐさま『お団子』を食べ始めました」
かば「言われた通り、きちんと四人で分けて」
ヘラ「もぐもぐ……こ、これはっ!」モッキュモッキュ
プロ「もぐもぐ、なんておいしいんだ!」モッキュモッキュ
オロ「うめぇ……うめぇよぅ~」モッキュモッキュ
ラビ「こんなにおいしいもの、初めてだ!」モッキュモッキュ
かば「そしてあっという間に平らげてしまいました」
アム「……お前達」
ヘラ「は、はい!」
プロオロラビ「な、なんでしょうか?」
かば「もうすっかり元気になった『鬼』達ですが、『桃太郎』には逆らえません」
アム「……何か、言うことがあるだろう?」
ヘラ「何か……って」
プロ「なんだ?」
オロ「さぁー?」
ラビ「何だろう?」
アム「……誰かに、何かをしてもらった時は、お礼を言うんだ」
ヘラ「……はっ! あ、ありがとうございます!」ペコリ
プロオロラビ「ありがとうございます!」ペコリ
かば「『鬼』達は、そろって『桃太郎』にお礼を言いました」
アム「……ほかにも、言うことがあるだろう?」
ヘラ「ほかにも……って」
プロ「なんだ?」
オロ「さぁー?」
ラビ「何だろう?」
アム「……誰かを怒らせるようなことをした時は、謝るんだ」
ヘラ「……はっ! ご、ごめんなさい!」ペコリ
プロオロラビ「ごめんなさい!」ペコリ
かば「『鬼』達は、そろって『桃太郎』達に謝りました」
イヌ「むー……」プイッ
とも「……そんなのっ!」
ゴマ「そんな簡単に、許さないからな!」プンプン
かば「それでも『犬』『猿』『雉』の三人は、まだまだ怒り足りないようです」
かば「しかし、『桃太郎』は違いました」
かば「『桃太郎』は、もう怒ってはいませんでした」
アム「……君達」
イヌ「はい!」
とも「なんでしょうか?」
ゴマ「どうしたのですか?」
アム「……相手が謝ったのなら、許してあげないといけないよ」
かば「『鬼』達に向けて、『桃太郎』は改めて聞きます」
アム「……もう、誰かのものを勝手に持って行ったりしないか?」
ラビ「はい、しません!」
アム「……もう、誰かを泣かせるようなことはしないか?」
オロ「はい、しません!」
アム「……もう、弱いものを馬鹿にしたり、いじめたりしないか?」
プロ「はい、しません!」
アム「……もう、強いからといって、好き勝手しないか?」
ヘラ「はい、しません!」
アム「……ならば良し。私は許そう」コクリ
アム「……君達も、許してやってはどうだ?」
かば「『桃太郎』は、三人にやさしく問いかけます」
イヌ「……『桃太郎』さんが、そう言うのでしたら……」
とも「……ずっと怒っていても、仕方ないもんね!」
ゴマ「……分かりました! 許します!」
かば「こうして三人は、『鬼』達のことを許したのでした」
ラビ「おお……!」
オロ「許してくれるのか!」
ゴマ「でも! またやったら『桃太郎』さんに言いつけるからな!」
プロ「うっ、それはもう、こりごりだ!」
とも「もうしない?」
ヘラ「しない、しない!」ブンブン
イヌ「じゃあ、もう怒りません!」
かば「これで、みんなは仲直りです」
アム「……これで良し。では――」
ググゥーー
かば「すると突然、誰かのお腹が、グゥーと大きな音で鳴りました」
ヘラ「やや! 申し訳ない……」
とも「ついさっき『お団子』を食べたのに!」
イヌ「もうお腹がすいちゃったんですか!?」
プロ「いや、実を言うと私も……」サスサス
ゴマ「本当にお腹が減ってたんだな……」
オロ「さっきの『お団子』、うまかったなぁ……」サスサス
ラビ「ああ、本当に……」チラッ
アム「……さっき渡したので全部だ」
ラビ「ええっ?!」
オロ「そ、そんなぁ……」ガックリ
イヌ「なんだかそう言われると……」
とも「もう一度、食べたくなっちゃうなぁ」サスサス
かば「みんな口々に、またあのおいしい『お団子』が食べたい、と言い始めました」
ゴマ「『桃太郎』さんは、どこであの『お団子』を手に入れたのですか?」
アム「……『お爺さん』に作ってもらったのだ」
ヘラ「『お爺さん』?」
アム「……物知りで、『お婆さん』と仲良しな、私の友達だ」
プロ「そ、その方々はどちらに!」
イヌ「ぜひお会いしたいです!」
ラビ「そして、できれば……」
とも「ぜひ『お団子』を!」
かば「こうしてみんなに言いつのられては、流石の『桃太郎』でも、どうしようもありません」
アム「……わかった、わかった。そこまで言うのなら仕方ない。私から『お爺さん』に頼んでみるとしよう」
アム「……では、ついてまいれ!」
一同「はい!」
かば「そして『桃太郎』は、『犬』『猿』『雉』と『鬼』達をつれ、来た道を戻って行きます」
かば「山を下り、川を超え、崖を登って……」
かば「とうとう、『お爺さん』と『お婆さん』がいる巣まで戻ってきました」
アム「……『お爺さん』、『お婆さん』、ただいま戻りました」
コノ「おやおや、ようやく戻ってきたのです」
ミミ「何か、分かりましたか?」
アム「……いえ、それなのですが……」
アム「……まず、皆を紹介させてください」
コノ「みんな?」
アム「……皆、こちらが『お爺さん』と『お婆さん』だ」
ゾロゾロ
ミミ「あれまあ!」
一同「こんにちは! 初めまして!」ペコリ
イヌ「『犬』です!」
とも「『猿』です!」
ゴマ「『雉』です!」
ヘラプロオロラビ「『鬼』です!」
コノ「ど、どうもです……」ペコリ
ミミ「一体どうしたというのですか?」
かば「一度に大勢やってきたものですから、『お爺さん』も『お婆さん』も、たいそう驚きました」
アム「……皆、あの『お団子』が食べたいと言うので、連れてきました」
アム「……どうか、もう一度『お団子』を作ってもらえませんか?」
アム「……お願いします」ペコリ
一同「お願いします!」ペコリ
コノ「……そこまで頼まれては、仕方がないのです」
ミミ「……ではひとつ、もう一度『お団子』をこさえましょう」
アム「……ありがとうございます」ペコリ
一同「ありがとうございます!」ペコリ
かば「『お爺さん』と『お婆さん』は、再びたくさんの『お団子』を作り、それをみんなに分けてあげました」
イヌ「もぐもぐ、やっぱりおいしい!」モッキュモッキュ
とも「もぐもぐ、うん、おいしいね!」モッキュモッキュ
ゴマ「もぐもぐ、どんどん食べられる!」モッキュモッキュ
ヘラ「もぐもぐ、おお、これだ!」モッキュモッキュ
プロ「もぐもぐ、これが食べたかった!」モッキュモッキュ
オロ「もぐもぐ、うめぇ!」モッキュモッキュ
ラビ「もぐもぐ、幸せだ~!」モッキュモッキュ
コノ「もぐもぐ、みんなが喜んでくれて、良かったのです」モッキュモッキュ
ミミ「もぐもぐ、ところで『桃太郎』?」モッキュモッキュ
アム「……はい、なんでしょうか?」
かば「『お婆さん』が『桃太郎』に聞きます」
ミミ「図書館には、行かないのですか?」
アム「……」フルフル
アム「……もう、良いのです」
アム「……知りたかったことは、みんなが教えてくれました」
かば「結局、『桃太郎』は図書館へは行きませんでした」
かば「みんなと出会ったことで『桃太郎』は、自分に何が出来て、何が出来ないのかを知りました」
かば「みんなはそれぞれ違うから、自分とみんなを比べてみることで、『桃太郎』は分からなかった自分のことを知ったのでした」
かば「だからもう、『桃太郎』は迷いません」
かば「こうして『桃太郎』とみんなは友達になり、いつまでも、いつまでも、仲良く一緒に暮らしましたとさ」
――――――
かば「はい、皆さんお疲れさまでした!」パチパチパチパチ
サバ「すっごーいっ! すごいよみんな!」パチパチパチパチ
とも「いやいや、かばんさんのナレーションも良かったし、サーバルちゃんのおかげですっごくスムーズだったよ!」
かば「そ、そうかなぁ……えへへ」テレテレ
かば「サーバルちゃんも、ごめんね? いっぱい走り回らせちゃって……」
サバ「大丈夫大丈夫っ! すっごく楽しかったよ!」
イヌ「さて、ではまたお茶を入れてきますね!」
とも「あ、手伝うよー!」
コノ「また『りょくちゃ』で頼むです」モッキュモッキュ
ミミ「やはり『お団子』には『りょくちゃ』なのです」モッキュモッキュ
ゴマ「まだ食べてる! しかも偉そう!」ガーン
アム「……よく、そんなに食べれるな……」
コノ「この程度、朝飯前なのです」ケプッ
ミミ「朝食には『かれーらいす』がいいのです」ケプッ
ゴマ「……おぉぅ……」ドンビキ
プロ「はっはっはっ、いいじゃないか! よく食べれば、それだけ長く走れるからな!」
ゴマ「いや限度ってありますよっ!」
アム「……」ポリポリ
ヘラ「やあやあ『桃太郎』! お疲れさまだ!」バシーン!
アム「ぐっ……!」グラッ
ヘラ「なかなかいい演技だったじゃないか! 見直したぞ!」
アム「……お前達もな」サスサス
オロ「へへっ! だろう?」ニヤリ
ラビ「慣れればなんてことないなっ!」
ヘラ「うむ! これなら本番も大丈夫だ!」
ゴマ「あ! ちょっと待て! それ『ふらぐ』ってやつ――」
アライグマ「かばんさーーんっ!!」ズダダダダ!
かば「アライグマさん! どうしたんですか?」
サバ「あれー? アライグマ、なんでもう戻ってきたの?」
アラ「ふっふっふー、たーっくさん集めてきたのだ!」ドヤァ
かば「あ、集めて……」ガタガタ
サバ「き、きた、って……」ブルブル
アラ「もっちろん、頼まれた通り、お客さんをたーっくさん! なのだ!」
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ
「劇って、なにやるんだろー?」「『ももたろー』っていう題名らしいよ?」「どんなのかなぁ?」「楽しみだな!」「いつの間に準備してたんでしょうね?!」「おやつも出るってー」「いやー……確か朝に手伝ったばっかりだったんすけどねぇ?」「きっと何か考えがあるんでありますよ!」「いやー、楽しみだねぇ」「ふんっ! どうしても、って言うから付き合ってあげるだけなんだから!」「わーい! よく分かんないけど、たーのしー!」「おいおい、まだ早いよ!」「ふふっ、どんな劇かしらねぇ」「ふわぁー! お客さんいっぱいだにぇ~」「……ここで歌ったら、気持ち良さそうね……」「ちょっと、やめときなさいよ……」「ふん、どいつもこいつも暇だな!」「まあまあ、いいじゃないですか」「そうですよ! 暇ってことは、それだけ平和ってことですから!」「……こっち見んなっ!」「隠れてるほうがかえって目立ちますよ?」
ゾロゾロ ゾロゾロ ゾロゾロ ゾロゾロ
かば「ひぃー!」ガクガクブルブル
サバ「えーーっ!!? なんでーー??!」
アラ「なんで、って……ちゃんと頼まれた通りに……」
フェネック「アライさーん、またやってしまったねぇ」
アラ「フェネック?!」
かば「ふ、フェネックさん……」
ヘネ「『明日に』って部分が抜け落ちちゃったんだよねー」
サバかば「えーーっ!」
ヘネ「一応、止めたんだけどねー……アライさんだし、ね?」
アラ「ご、ごめんなさいなのだ! 一旦、みんなには帰ってもらって……」
かば「……いえ、お客さんを案内してあげて下さい!」
サバ「かばんちゃん?!」
かば「せっかく来てもらえたんだし……それに、さっきは上手くいったんだから、もう一度っ……!」
かば「サーバルちゃんは準備をお願い! 僕はみんなに説明してくるよ!」
サバ「……! うん! 分かったよっ!」ダッ
アラ「まっかせるのだ!」ダッ
ヘネ「はいよー」ダッ
かば「みんなーっ! 今から本番、始めます!」
イヌ「ブーーッ!! げほっ、えほっ!」
とも「わ! きたなっ! ……って、本番?!」
ゴマ「やっぱり『ふらぐ』だったっ!!」ガーン
アム「……何故そんな急に?」
かば「えと、アライグマさんが――」
アム「もういい、分かった……」ゲンナリ
とも「あー……アライさんかぁ……」
ゴマ「……ぜぇ」ゲンナリ
イヌ「えふっ! ズビッ! ど、どにかく急ぎましょう!」
☆★☆
アム「……ふぅ」クタァ
とも「よっ! お疲れさま!」
アム「む! ……ともえか……」
とも「そーそー、あたしあたし!」
とも「……まーた、こんな所で一人になっちゃって~」
アム「……流石に疲れた」
とも「だよねー? いきなり本番だったもん」
とも「でも大成功だったじゃん! お客さんもいーっぱい喜んでくれて!」
アム「……そうだな」フッ
とも「あ、今笑った?」
アム「……! き、気のせいだ」
とも「もー、誤魔化さなくていいのにー」ブー
とも「にしても、大人気じゃん、『桃太郎』さん?」
とも「『かっこいい!』とか、『サイン下さい!』とか、『お団子ちょうだい!』とかさ!」
アム「……あれには参った……」
とも「え~? いいじゃん別に。あたしなんて『どうして私じゃなくてあなたが猿の役なんですかっ?!』って詰め寄られただけだよ?」
アム「……」
とも「……」
とも「……誰もみんな、アムールちゃんのこと……恐がってなかったよ?」
アム「……っ!」
とも「だからね……」
とも「だから、アムールちゃんも……みんなのこと、恐がらなくて良いんだよ?」
アム「……ぅ!」ジワッ
とも「みんなのとこ、もどろ? ね?」ナデナデ
アム「……わ、私は……!」ポロポロ
アム「……私も、成れるだろうか……『桃太郎』みたいに……!」ポロポロ
とも「……成れるよ……絶対」ギュッ
ゴマ「アム姐~、どk――むぐっ!」ギュムッ
イヌ「シーッ、お静かに」
イヌ「いま、いいとこですから、ね?」
ゴマ「……?!」ムーッムーッ
☆★☆
ライ「やー、なかなか楽しかったよー!」
ヘラ「ふふん、そうだろうそうだろう!」フンスッ
プロ「やられ役と聞いてはいたが……やってみると、意外といいものだな!」
チタ「だったら、私との勝負もあんたが負けたことにしといてよねっ!」
プロ「いや、そうはいかん!」
チタ「なんでよっ?!」
とも「まーまー、落ち着いて落ち着いてー」トコトコ
ヘラ「お! もどったか、ともえ!」
プロ「ん? なんだアムールトラ達も一緒だったのか」
アム「……ああ」
ライ「どこ行ってたのさ?」
イヌ「ちょっと気分転換に……ねぇ?」
ゴマ「お、おう! ちょっと散歩してただけだぜぇ!」
ヘラ「それより、ともえ! 分かったぞ、お前の言いたかったことが!」
とも「へ?」キョトン
プロ「速さでもない、力強さでもない……」
ヘラ「みんなで力を合わせる『群れの力』こそが『本当の強さ』だったんだな!」
プロ「お前はこれを私達に伝えたかったんだな!」
ヘラ「そうだろう?!」
とも「……えっ? あ! うんうん、そうそうそんな感じ、その通り!」コクコク
イヌ(完っ全に忘れてましたね、あれは……)
イワビー「いやー楽しかった!」
ジェーン「素敵でしたねー!」
フルル「『お団子』おいしかったー」
コウテイ「そうだな……私達のライブにも、なにか生かせないかな?」
プリンセス「んー……劇をやっちゃうと、ライブに充てる時間が減っちゃうし……」
マーゲイ「難しいですねぇ……」
かば「……あ! だったら、歌って踊りながら劇をやったらいいんじゃないですか?」
とも「あ、それ知ってるー。『ミュージカル』って言うんだよ!」
マーゲイ「……! その話くわしく!!」クワッ
fin
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