二 殿の睦言(むつごと)
水鳥の羽のような柔らかな夜具の上でくつろぎ、
荒事好きで筋骨隆々。黒々とした体毛と
近頃、
「
顔を寄せて頬ずりをした。
「お
小倫は顔をしかめて、二人のひっついた頬の間に手の平を差し込む。
「ほお、何と柔かくて可愛らしい手と指だ。食べてしまいたい」
ぱくりと指を
「どうか、
「何と、では誰に、この指をくれてやると申すのか」
「小倫もいつか人並みに兄分を持ち、衆道の契りをいたします。その者に小倫の全てを差しあげたいと思います。そしてその者のすべてを小倫は頂戴したいと思います」
「ほお、すべてとは何だ。金か刀か。それとも城か」
からかうように殿が言う。
「まさか、そのような物ではございません。愛する者の心と体と命が欲しいのです」
よく澄んだ
「なんと、強欲な奴。おまえには、わしのすべてを与えているつもりだが、わしを念者とは思ってくれぬのか。わしでは兄にはなれぬか。ふん、年寄り扱いか。寂しいことよ。こんなに
ため息をつき、好色そうな顔を曇らせる。
「どうか、そのようなことを、おっしゃらないでくださいませ。小倫は、この世で一番、殿のことをお
甘えて、殿の胸毛にしがみつく。
「
狂おしく叫んだ。
小倫は夜具と分厚い殿の胸の間に押しつぶされながら、息も絶え絶えに言う。
「殿の立派なお刀に、たっぷりと丁子の油を、お塗りいたしましょう」
それは、
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