第43話ガン=カタ、バリカタ、魔物マシマシ
バックショットを撃ち尽くし、角に隠れる。
すぐにオルトロスを左手に持ち替えてシリンダーを開く。
流れる様にエジェクターロッドを押して空のショットシェルを排莢、右手でバンダリアからショットシェルが収まったフルムーンクリップを取り出しリロード。
本体を振ってシリンダーを正しい位置へ。
左手にオルトロスを持ったまま、右手でレッグホルスターからホーネットを抜く。
先制の銃撃でかなりの戦果を上げた筈だ。
血の匂いは濃いし、何体かの物凄い断末魔の悲鳴や、藻掻きのたうち回る音が通路に反響して聞こえる。
だから近づく音に気付くのが遅くなった。
功が来た方角から見て、正面の暗闇から光る斬撃が高速で飛来する。
恐ろしい速度で飛んで来た実態の無い斬撃は、振り向いた功の右脇腹から左腰までを、存分に斬りつけた。
「ぐぼっ!」
予想外の方角からの攻撃をモロに受けた功は、凄まじい打撃音と共に派手に吹っ飛んだ。
斬撃は鎧を抜く事は無かったが、実際に斬り付けられたような重い衝撃までは、完全に防ぐ事は出来なかった。
受け身を取る事も出来なかった功は激しく背中から転倒するが、ここでも鎧が守ってくれた。
そのままの勢いで後ろに一回転して距離を取り、何とか気持ちと体勢を立て直す。
ホーネットを構えた所でもう一度光る斬撃!
風切り音が高いのが、斬撃の鋭さを物語っている。
反射的に右足で床を蹴って避ける。
その拍子にポケットからライトスティックが溢れ落ちた。
衝撃で既にポケットの中で発光していたスティックを蹴り飛ばし、敵の姿を確かめる。
《ブリッコーネかっ⁉︎いや、違うな》
人型なのでブリッコーネかと思ったが、アレよりは随分小さいし、シルエットも違う。
猿だ。
だが、勿論普通の猿では無い。体高は150cm程、短足で全身毛皮で覆われている。
動きは猿そのものだが、恐ろしく俊敏だ。
特徴的なのは、左手の手首から先がカマキリのような長い鎌になっており、右腕は鎌ではないが、異様に長い。
眼は小さく、見えているのか分からない。鼻は尖って大きく、蝙蝠のような耳もデカい。
オホオホと鳴く尖らせた口から見える牙は確実に肉食獣のそれだ。
そして何よりキモい!
それが後から後から湧いて来る。
全部で7体。
飛び跳ねながら通路一杯に広がって功に迫り、一斉に斬撃を飛ばして来る。
《シールド!》
凄まじい音を響かせてシールドにぶつかった斬撃は、そのままシールドを粉砕して対消滅した。
《少し込める魔力が弱かったか》
しかしこれでどれだけ魔力を込めれば斬撃を防げるかの見当はついた。
だが、当然それだけで奴らの攻撃は終わらない。
床だけではなく、壁やあまつさえ天井まで飛び跳ねて、三次元機動しながらやって来た猿はあっという間に功に肉迫する。
距離を詰めて今度は肉弾攻撃するつもりのようだ。
《後手後手だ!チクショウ!》
しかもここは狭い通路で、壁に追い立てられた功は半包囲された絶望的な状態に追い込まれる。
だが、
《大丈夫、見える》
左の2匹が足下と首に向け同時に鎌での直接斬撃を放ち、正面の2匹がすくい上げるような鎌と斬り下ろす鎌、右の3匹の内1匹は少し離れた位置から斬撃を飛ばし、残る2匹は突きと袈裟懸けの斬り下ろし!
左の2匹以外は微妙にタイミングをずらしての嫌らしい攻撃だ。
功は左足で足下を襲う鎌を踏みつけ、同時に左手のオルトロスの銃身で首に来る斬撃を払う。右側の三匹の攻撃はヘキサシールドを展開して防御。
込める魔力は取り敢えず攻撃3回分を防げれば良い分だ。
体重移動し正面下の斬り上げを右足の蹴りで軌道を逸らし、斬り下ろしの猿の鎌を敢えて右肩の装甲で受ける軌道に入りホーネットを猿の喉に発砲、頭を千切り飛ばす。
慣性の斬撃を右肩で受けつつ、そのままホーネットを下に向け、斬り上げ猿の眉間に発砲。
残り5。
オルトロスで払った左からの斬撃が軌道を変えて再び襲って来るのを、身体を右に捻りながら左のエルボーアーマーで跳ね上げ、足を入れ替えて鎌を踏んだ猿の顔面に右足の後蹴り、同時に右の猿達から少し間を取る。
攻撃を受けたシールドがまたも対消滅したが、折り込み済み、オルトロスで斬撃を飛ばした猿にサボットスラグを発砲!胸に大穴を開ける。
右手のホーネットを背中に回し、左腕で斬撃を払った猿に背中越しにノールックで発砲、鎌を生やす肘に当たり千切れる。
ここまで2秒。
オルトロスの狙いを右の突きの猿に変え、バックショットを発砲、結果も見ずにホーネットを右に返して袈裟斬り猿に発砲!
残り1.5匹。
オルトロスを左に返して腕を千切り飛ばした猿に止めを刺し、後ろ蹴りした猿に射線をずらしたオルトロスの狙いを定める!
胸に激しい衝撃!
「がっ!」
肺の空気が唾と共に盛大に吐き出され、視界が上から下に流れて仰向けに倒れる!
訳も分からず倒れながらホーネットの残弾2発を盲目的に発砲!
床に叩きつけられたが、胸の衝撃に比べたら撫でられた様なものだ。
取り敢えずシールドをまた展開し、ネックスプリングで立ち上がる。
間一髪でシールドに被弾!四発目でシールド消滅。
更にシールド展開。
息を吸い、咳き込む。胸はズキズキと痛むが骨は折れてはいない。
革ジャン鎧の防御力の高さに頭が下がる。一番防御力の高い胸の生体装甲(マウンテンロックスキッパーの硬い鱗)に当たったのが良かったのだろう。生体装甲ならではの靭性が無ければ破壊されていたかもしれない。
残弾の無くなったホーネットを仕舞い、オルトロスを右手に持ち替える。左手でもう一丁のホーネットを抜き撃ち最後の猿を討ち取る。
猿達の死体の後ろには床を這う新手の魔物!
甲高い音を立てて何かがシールドにぶつかり対消滅。
ぶつかった瞬間粉々になったのは石の欠片だ。
新手の魔物は石を散弾の様に飛ばして来る魔物の様だ。
数は5。
その後ろに猿が4。
《お替りは要らないって・・・》
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