第二章 サガ伯爵領のテーマパーク
第1話 サガ領都への道中日記
まず最初に、日記と言えば日付だと思ったのだが、こちらの世界の暦を知らないので適当にする。
もちろんネッロも知らないのでなおさらである。
のっけから日記の定義から外れている日記を書いていたカンパネッロだが、すでに何を書こうか悩み始めていた。
カンパネッロと言う少女はエルフとドワーフのハーフであるエルドルフと言うファンタジー世界の住人である。
しかし、今その体の主導権を握っているのは地球の日本で80年代に生まれたオッサンなのである。
社畜として生きてきたオッサン、向井 一馬に日記を書く習慣なんか無かった。
むしろ、仕事で書く日報が面倒くさいほうの人間である。
だから書こうとしただけで終わるモノだろうが、それはつまり、書こうとはしたということだ。
カンパネッロたちは馬車でサガ伯爵領の領都に向かっているところだった。
「マーマ。」
カンパネッロに抱き着く少女が一人、先日のダンジョン探索でダンジョンマスターによって肉体改造をされて打ち捨てられていた少女である。
それをカンパネッロが助けたことでマーマとなついてきているのだ。
肌は褐色で燃えるような赤い髪の毛と瞳をした少女。
彼女は今その由来を想像できないような恰好をしている。
長く炎のような髪の毛はカンパネッロとお揃いの髪飾りでポニーテールにされている。
助けた直後から生えている羽と尻尾、そして角が邪魔にならないように工夫したシャツとロングのスカートを纏っている。
どちらもこの少女のイメージを損なわないように、薄いピンク色の生地で丁寧、かつ、フリルたっぷりの可愛らしいデザインで決められている。
足元には白のフリルが付いたニーソックスに、厚底の赤いエナメル質のお人形さんが履くような靴を履いている。
右手の手首には赤いバラの意匠がワンポイントで入ったフリルの装飾品を巻いている。
これはどれもカンパネッロが夜なべをしてつっくった一品モノである。
カンパネッロの彼女に対する愛情は意外とはっきりしていて、実際に今もカンパネッロは色違いのお揃いの服を着ていることで明らかだろう。
2人は対照的なデザインになるように衣装を制作したカンパネッロのマジっプリが分かるだろう。
しかし悲しいかな、服装だけでなく胸の大きさも対照的なのであった。
2人とも背は低いが、比べて高くてちっさいほうがカンパネッロで、低くておっきいほうがキャリーノである。
そんな格差があってもカンパネッロの愛情は揺るがない。
だって中身がカズマって言うオッサンだから。
「どうしたキャリーノ。」
少女はカンパネッロから『キャリーノ』と言う名前をもらっていた。
「あのね。サリーお姉ちゃんがキャリーノのこと可愛いって。」
「そうかよかったな。」
「羨ましいとか変わってほしいとか、いっそキャリーノでもとか。」
「キャリーノ、もしいたずらされそうになったらママにちゃんと言うんだぞ。」
「いたずらって、例えば。」
「服を脱がされそうになったり、お胸やお尻に顔をうずめてクンカクンカされたりしたらゼエェッタイにママに言うんだぞ。」
「尻尾の付け根を触らせて、っては言われた。」
「よし、ちょっとぶん殴って来る。」
■■■
サリーはカンパネッロからウメボシを食らった。
「…すみません出来心でした。―――、…だってだってカンパネッロさんがキャリーノちゃんばっかり構っているのが羨ましかったんです。…でも、なんかお二人を見てたら、これはこれでアリ?って思えてきて、…キャリーノちゃんがカンパネッロさんとお揃いの服を着ているのを見たら、もう――――なんか来ちゃったんです。」
「病気だな。」
「…すみません。以後気を付けます。」
「まぁ、変態的なことをしないならキャリーノの相手をしてくれるのはいいけど。」
「…ありがとうございます。…小さい女の子は汚さないように綺麗な心で愛でるものですよね。」
サリーの言い方には若干の不安を感じるカンパネッロだった。―――が、よくよく考えたらカズマもそっちの人だった。
「……ところで、サリーは何処迄付いてくるつもりなんだ。」
「…私邪魔ですか。」
「そうではないけど、もともとはキウラキの街を出るまでに一緒に旅をするかの答えを出すって話だっただろ。けど、結局は成り行きで同行することになっちゃったからさ、そこんところどうするつもりなんだ。」
「…カンパネッロさんに迷惑がられてもついていくつもりです。カンパネッロさんと行動してすぐにジオング教団の手がかりを掴めましたじゃないですか。―――…それは結局あぁなっちゃいましたけど、それでも、―――…いえ、だからこそこのままお別れはしたくないです。」
「OK,同行は今更なしだって言うつもりはないけど、むしろ寿命の話だよ。」
「…寿命?」
「俺はエルフとドワーフのハーフたるエルドルフだぞ。ヒューマンとは寿命に差があるはずだ。それで、何処迄付いてくるつもりだ。」
「…ジオング教団を壊滅できても、死ぬまでついていきたいです。」
「自分で歩けなくなって足手まといになってもか。」
「…その時はカンパネッロさんの手で始末してください。」
「ホントーに――――病気だな。」
「…あと、私って普通のヒューマンじゃなかったりするんですよ。」
「さよかぁ。」
サリーの目がマジなため何とか軽く締めたいところのカンパネッロは、今後の計画として一つの案を用意しておくことにした。
「サリーが本気なんだというなら、前に自分が言ったように俺の方針には従ってもらうぜ。」
「…ハイ勿論です。」
カンパネッロことカズマはこれはこれで面白い思い付きだと思ったので、機会があれば真剣に取り組もうと考えた。
「…これで実質的にはカンパネッロさんの恋人ですよね。」
「残念――――俺の彼女は
「…そんなぁ。」
「カズマ♡―――――ワタシ恋人は何人いてもいいと思うな。」
カズマがキメ顔で決めゼリフウを言ってる頭の中で恋人のカンパネッロさんからの
■■■
「姉御来てください。」
サリーとの話にひと段落が付いた時に御者台でキャリーノの話し相手をしていてくれていた十六夜から声が掛けられる。
カンパネッロたちが乗っている馬車は先日のクエストで使用していたのと同じ馬車であるが、それとは別にもう一台、亡くなった冒険者の遺体を運ぶためにギルド協会が貸し出してくれた馬車がある。
後者の方は「サガの風」の構成員2人が御者を務めている。
カンパネッロは彼等と挨拶を交わしたときから十六夜の姉御呼びがうつってしまっているので極力関わりたくないと思っている。
つまりモブである。
カンパネッロが御者台へと向かうと馬車は2台とも足を止めており、モブ2人の騒ぎ声が聞こえてきていた。
「どうした、オオカミかぁ、それとも熊でも出たのか。」
「盗賊です。盗賊が出ました。」
「それって俺が出てもいいのか?」
「何言ってるんですか。むしろ姉御の見せ場じゃないですか。」
たかが盗賊に地面や巨人が爆散する一撃を放つカンパネッロに出てくれと言う。
「………この世界の盗賊には人権ってものが無いのか。」
「何言ってるんですか。盗賊ってれっきとした魔物ですよ。人権なんてあるはずがないじゃないですか。」
人ではなく完全に魔物扱いの盗賊に、なんでそこまでの扱いを受けて迄盗賊なんかやってんのだろう、と、疑問と憐れみを持つカンパネッロだった。
とはいえ、用心棒を依頼として受けている以上蹴散らす、もとい、お引き取り願わなければならない。
なので馬車から降りてみれば、なるほど、30人くらいの人影に囲まれていた。
しかし、
「なんか皆さん黒いオーラを纏っているけど、なんかこう、ダークサイド的なスーパーパワーに目覚めているとか?」
「へ?あぁ、姉御は魔物に詳しく無かったんですよね。盗賊はドッペルゲンガー系の魔物ですから、オーラぐらい出ますよ。」
「盗賊のドッペルゲンガー?なんでそんなニッチなものに。」
「奴らは人間の集団に寄生しては、働きたくないとか、遊びたいとか、暴れたいとか、人の
「なるほど分かった。と言いたいが、なんで最後だけ女に限定した。」
「そうして成長した奴らはこうして盗賊となって街や人を襲うんです。」
なるほど、と改めて思うカンパネッロ。中身は魔物だけどやってることは確かに盗賊である。そして人間の盗賊が元ではないと。
「姉御、僕はむしろ魔物じゃない盗賊がいるってことが疑問なんですが。」
「まぁ、居るとこには居るもんなんだよ。そうゆうの。」
とりあえず、雑談はそのあたりにしてカンパネッロは戦闘態勢をとる。
今まで襲ってこずに囲むだけの盗賊の意図は分からないが、だからこそ油断はできない。
「【レット・ドーロ】」
呪文1つでカンパネッロの手に2メートルほどのハルバートが現れる。
現状、カンパネッロが持つ最強の武器であるハルバートはカンパネッロの瞳と同じ色をしていた。
それがカンパネッロの瞳の色であり、ハルバートの材質でもあった。
ミスリルは鉄よりも比重が高く、耐熱性にも優れている。加えて、素の状態でも魔力を持っているために加工は主にドワーフにしかできない貴重品である。
カンパネッロの持つそれならば屋敷が買えるほどに、お値段込みで超重量級の武器である。
それを片手で構えるカンパネッロ。140㎝ほどしか身長のない彼女ではまるでおもちゃのようにも見えてしまう。
「うぁらぁぁぁぁ!先手必勝。」
しかし、放たれた一撃は盗賊の体を頭から真っ二つに切り裂いた上に地面ごと爆散させてしまった。
通常、魔力を持つ魔物は同じく魔力で攻撃しなければ致命傷を与えるのは難しい。
なので通常の武器には「魔石」と言うものが埋め込まれているのだが、カンパネッロはそれをつい昨日まで知らなかった。
なので、彼女の武器には「魔石」が備わっていないものばかりであった上に、手持ちに魔石一つなかったのだ。
唯一ミスリル製のハルバートは材質により魔力を持っていたが、どちらかと言うと魔法の触媒に向いているため攻撃にはいまいちだった。
そんな中でカンパネッロになったカズマが強敵の魔物に一人で挑んでしまった時に思い付いたのが、【魔力付与】と言うスキルだった。
簡単に言うと、カンパネッロが持っている魔力を自身の体や装備品に付与して強化するというものだった。
結果的に、カンパネッロは魔物退治のセオリーから外れた特別なスキルでもって魔物を退治できるようになっていた。
今後は他の武器にも魔石を仕込んで強化していくつもりであるが、今はミスリルの触媒の効果もあって、最も攻撃力の発揮できるハルバート、カンパネッロの父の遺品で、彼の名前が付けられた【レット・ドーロ】がメインウエポンである。
最初の一体に一撃を振り下ろした手ごたえはゴブリンを魔石なしの大剣で切った時より重たかった。
続いて横薙ぎの斬撃を放つも―――1体目は余裕だが2体目で勢いが落ちる。3体目には致命傷を与えられるものの、―――振り抜けない。
それでも盗賊たちをたやすく倒して見せているようで、仲間からは称賛の声が上がっている。
しかし、盗賊たちには恐怖心がないのかじわりじわりとと囲みを狭めてくる。
どんな企みがあるか分からないが、できるだけ近づけさせないほうがいいと判断したカンパネッロは、一度に多くを倒すよりも前に出たヤツを素早く倒す方に戦術を変えた。
足回りへの魔力を増やすことで機動力を上げて馬車の周りを駆け回り確実に盗賊を倒していく。
サリーも魔法で応戦するも、機動力が無いので馬車のそばにいるため死角が多い。のでその死角をカンパネッロは重点的に攻める。
と、残り10体ほどになったところで盗賊の動きが変わる。
明らかに誘っている動きだった。
さてどうしたものかと少し考えてからサリーに視線で話しかける。
そしてカンパネッロは盗賊の誘いに乗って飛びかかった。
その背後から身を隠していた黒い獣、何体もの盗賊が合体したような奴が襲い掛かる。
それを読んでいたカンパネッロは背後の獣に向き直り迎え撃つ。
それと同時にサリーが魔法で誘っていた盗賊に攻撃―――――せずに、獣のほうに魔法を放っていた。
ぶっちゃけ2人は視線で会話なんてできていなかったのだ。
そのため背後ががら空きになったカンパネッロに盗賊たちが攻撃を仕掛ける。
「マーマ、あぶなーい。」
ドカンと一発、横から放たれた鉄拳、いな、岩拳によって盗賊の1体が吹っ飛ばされて黒いモヤと散った。
「キャリーノ、何やってんの。」
「キャリーノもマーマと一緒に戦う。」
そういうキャリーノの両腕は赤い灼岩となっており、130㎝の身長に比べて明らかに大きくなっていた。
「えぇ~、あぁぁ~、―――――ッえぇい、サリー、俺はこっちの獣をサッサと倒すからキャリーノのこと見てやってくれ。」
「…分かりました。」
■■■
これがなかなか手ごわかった。
獣は強いのでなくすばしっこいものの為に攻撃が当たらないのである。
カンパネッロの攻撃力がいかに高かろうと当たらなければどうと言うことはないのである。
「くそう、すばしっこいな。」
「カッズッマく~ん。こういう時は相手の動きの1手、2手先を読めばいいんだよぉ~。」
「知ってるよ。それ有名なヤツ。でも誰もができたるほど簡単じゃないから。」
「ぅん~、そうかな、あっそこを右。」
「ハイ?」
ブゥンッ――――ドカッ!
「ギャァイン!」
「ほら、当たったし。」
「マジか~。真剣で先が見えるのか~。」
「どうする?私が指示出そうか。」
「いや、それじゃぁ男の子の意地が通りませんので自分でやるよ。」
「カズマ今女の子。」
「言うなぁ。」
カンパネッロの一撃を食らった獣だが、不意の一撃だったために魔力のノリが悪く、また、複数の盗賊が合体したようなナリなだけあってダメージによる動きの低下は見られない。
その為、カズマくんの意地もむなしくまた避けられ続けることになり、ついには反撃が―――
ブゥンッ――――ドカッ!
「ギュゥガァァァァァァ!」
「おぉ、反撃が来たかと思ったら攻撃が当たったぞ。」
「ふふぅん。どうよ。」
「今のところ解説をよろしく。」
「タネは簡単、ただ【戦斧の心得】ってスキルを使っただけなんだなぁ、これが。」
「そのスキルは特定の武器の装備時に動きを効率化してくれるだけのはずだが。」
「ところがどっこい、効率化された動きを自分でもできるようになればスキル使用時はより効率的に動けるようになるのさ。」
「つまりはどうゆうことですかな。」
「つまりはスキルのON・OFFを使い分けることで攻撃のテンポや間合いを変えることで見切ったつもりになってる相手にカウンターのカウンターを食らわしたのだよ。」
「なるほど、そうゆう戦い方もあるのか。」
「それじゃぁキャリーノが心配だしさっさと止めを刺しますか。」
流石に合体魔獣(仮)といえどもカンパネッロの攻撃を二度ももらっては死に体と言える有様、もはや逃げることもできずに地面ごと爆散されて黒いモヤとなって散って行った。
止めを刺し終えたカンパネッロはキャリーノは大丈夫かなぁと(結構軽い気持ちで)振り返った。
「マーマ、皆やっつけたよ~。」
満面の笑顔で手を振って来る娘にカンパネッロたちは――――――――
「わぁ、すごいねぇ。」って褒めてやることしかできなかった。
キャリーノは傷1つないどころか、カンパネッロをもしのぐ破壊をまき散らしていたのだから。
■■■
カンパネッロが合体魔獣(仮)と戦っている間、キャリーノも
両手は真っ赤な岩塊でできた腕になり関節部分からは紅蓮の火柱が噴き出していた。
背中の羽も尻尾も気持ち大きくなっているように見える。
この世界には基本的に異種族間でのハーフが存在しない。
例外がエルドルフたるカンパネッロと、ドラゴンとヒューマンのハーフであるドラグーンだけである。
前者は世界に一人、目の前にいる。
が、後者は幾人かいるがここにいるもので見たことのある者はいなかった。
それゆえにキャリーノの姿にドラグーンと見間違うあまりに、助けに入るものが居なかったのである。
しかしそれは正解であった。
まず、盗賊はドッペルゲンガー系の「異界型」の魔物で1体1体が強く、一撃で倒せる冒険者は少ないほうだろう。
それが数をそろえて行動するため、脅威度はかなり高かった。
それをたやすく打倒してしまえるキャリーノの剛腕と炎の前には、下手な冒険者では巻き込まれたらただでは済まないものだからだ。
キャリーノの変化は両腕と羽と尻尾の巨大化だけである。
本体の愛らしい少女の姿はそのままで、可愛く笑いながら、両手の拳をぶつけるだけで灼熱の炎がまき散らされる。
その姿に恐怖と言う感情の無い盗賊たちですら気おされていた。
「そっちから来ないならこっちから行くよぉ~。――――ぐ~るぐる、ドッカーン!」
正面ど真ん中にぐるぐると振り回した拳が振り下ろされる。
この一撃で盗賊2体が蒸発した。
もはや黒いモヤも確認できないくらいに見事の消し飛んだ。
さらに拳がめり込んだ地面は砕けるどころか―――溶けていた。
こ~う、赤くてドロリとした熱々でエロくないアレである。
だが派手な攻撃なだけあって、素早い盗賊はこの隙にと回り込んで、左右と背後から攻撃を仕掛けた。
「フゥッアチョォォォォォォ!」
どこで覚えたのかキャリーノは中国拳法にある左右に同時に裏拳を放つ技を使い、左右の盗賊を粉砕する。
さらに背後の盗賊は尻尾を叩きつけてつぶす。
一瞬でこれである。
流石に個々では相手にならないと判断した盗賊たちは合体しようとした。
それを待たずにキャリーノは前かがみになって両手で地面を掴む。そして、胸をそらしながら大きく息を吸い込み、羽も尻尾もピッンと伸ばした。
キャリーノがそこから思いっきり顔を前に突き出すと左目が蒼く輝いて、――――――目から蒼いビームを撃ちだして、合体中だった盗賊をまとめて焼き払った。
「マーマ、皆やっつけたよ~。」
キャリーノを見ていてと言われたサリーはホントに見てるだけしかできなかった。
■■■
「ハイ、それでは反省会をしたいと思います。」
「キャリーノ、何か悪いことしちゃった?」
「悪いことは無いよ。失敗があっただけさ。」
今馬車の外では「サガの風」の者たちによって盗賊がドロップした「魔石」やアイテムを回収しているところである。
カンパネッロはその間、戦闘担当のカンパネッロと、戦闘要員でない子供だったキャリーノ、そして今はまだ「サガの風」のメンバーであるがカンパネッロたちをゲスト待遇するためのホスト役を買って出ているサリーを入れた3人で反省会を行うことにした。
「ではまず聞かせてもらおうか、サリーは何で俺の背後に魔法を放った。」
「…カンパネッロさんの背後に奇襲しようとした獣がいたから。」
「俺、【虫の調べ】ってアイテムのおかげで奇襲が分かるんだよ。…知ってるよなぁ。だから視線で後ろは自分でやるって言ったんだけど。」
「…すみません気づきませんでした。」
「うん。それが最初の俺達の失敗。意思疎通をできるようにしてなかった。―――で、2つ目が。」
「…キャリーノちゃんが戦闘に出ちゃった。」
「止められなかった?」
「…間に合わなかった。…てかあれはムリ。」
「つまり今回の反省点を踏まえると、………サリー、付いてこれんの。」
「…ついていきますとも。たとえ雑用係でも。」
カズマの何月何日か分からない日記の最初のページにはとりあえずこう書かれていた。
キャリーノが戦闘可能になった。
サリーが仲間にしてほしそうにこっちを見ている。
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