第一章 それが伝説の始まり。になるとは知らずに―――

第1話 冴えない主武器の育て方

 朝日が燦々と降り注ぎ、小鳥のさえずりが聞こえてくる気持ちのいい朝がやってきた。

 寝心地のいいベットで寝ていたカズマは眩しさに目を覚ました。が、もう少し寝たかったので寝返りをうった―――


「おはよう。吾輩、地蔵菩薩である。」


「ぎゃっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!。」


「ハァーハッハッハ、吾輩の出番があれで終わりだとでも思ったか。残念、まだまだ出るぞ。いっぱい出るからしっかりと受け止めるがいい。」

「言い方が下品。」



 どうやら異世界転生云々のあれは夢ではなかったようである。

 そのことをカズマは喜ぶことか嘆くべきかで悩んだ。

「して少年よ、せっかくお主が寝ている間見守り続けていた吾輩に対して下品とは失礼ではないのか。」

「むしろお前に見られていたことに危機感があるわ。―――大丈夫だよないたずらされてないよな。」

 カズマはおそるおそるお尻を撫でて確かめてみる。

「安心しろ。吾輩に尻を掘る趣味はない。一応は転生の不具合が無いかを確かめていたのだ。」

 なるほどと思ったカズマだがそこで気が付いてしまった。

「ぁ~~~~~~、なんか、体に違和感が。」

「ほれ鏡で確認してみろ。」


「おぉう!俺の顔が美少女になっている。」


 カズマが地蔵菩薩がどこからか取り出した姿鏡を覗き込むと、言う通りの美少女になっていた。

「まさか30過ぎの冴えないオッサンから美少女に転生できるとは。」

 鏡に映っている姿は身長140センチくらいの女の子であった。

 ここがファンタジー世界だろうと思っていたが、少女の髪を見たところそれは間違いないだろう。

 なんてったって少女の腰まである金髪は不思議なことに光の加減で赤いきらめきを持つときがある。これは、金髪に赤い髪が混ざってるのでは無く、プリズムみたいに角度で赤く見えたりする。

 その不思議な髪を鏡越しにいろんな角度から見比べていたけど、この髪は長くサラサラなうえに毛の量が多い。加えて、寝起きなものだから髪が広がってしまっているから顔にかかってしまっている。

 髪が顔に掛かっているのに美少女と断言したのは、こういうシチュでは美少女と決まっている。という願望からである。

 髪をどかそうとしたとき、カズマは右手にみすぼらしい剣を持っていることに気が付いた。

 これはカズマが地蔵菩薩に驚いたときに身を守ろうととっさにつかんだものだ。

 正直、鏡に映る姿を見るのには邪魔だ。けど、地蔵菩薩に対しての不信感はぬぐいされたわけでないので身を守るのに持っておきたい。

 結局、剣は右手に持ったままで左手で顔にかかった髪をどかす。

 髪の間からのぞいた顔はチラリズムだからだろうか、願望どうり美少女であった。

 小ぶりな口元にちょっと眠たげになっているが大きな目、特に瞳は不思議な輝きをした銀色をしていてとても魅力的だった。

 カズマはよりしっかり顔を見るために片手で髪をまとめて後ろにかき上げた。

 そしたら小ぶりな顔と、―――長くとがった耳が現れた。

 エルフの少女か、と思うカズマに地蔵菩薩がもう一つ姿鏡を持ち出してきた。

 それを覗き込んだら―――。


 お髭の似合う精悍な顔立ちの叔父様が少女の右手と手をつないで立っている。


「なにこれ。怖い。」


 カズマはその鏡に映っているダンディーな叔父様が隣に立っていないのを確認して、改めて鏡の自分と実際の自分の体を見下ろして比べてみた。

 見下ろした自分の姿は見事なっぺっターンだ。

 着ている服も鏡の中の少女と一緒で、肌や黒い下着が透けて見えるほどの薄い生地でできている水色のネグリジュだった。

 そんな恰好で知らない上に見えない叔父さんと手をつないでいると思うと、言いようのない恐怖感が襲ってきた。

 ちなみにカズマはこの格好で地蔵菩薩と二人きりだったのだが、美少女の自分に夢中になっていたので気づいていなかった。

 2つ目の鏡に映っている男はカズマが動けば無表情でついてくる。

 カズマが止まれば男は直立不動でたたずんでるだけ。

 その意味の分からない行動にSAN値が削られそうだった。



「ハッハッハ、落ち着くがいい少年。吾輩からしたら少年なのか少女なのかややこしいことこの上ないのだがな。」

 だがとりあえずは少年と呼ぼう。

 そう言う地蔵菩薩は最初の鏡に手をかけてカズマに説明する。

「まずこちらの鏡はただの鏡だ。それに対してこちらの鏡は、真実を映し出す魔法の鏡だ。」

 そう言われたカズマは鏡に映ったダンディーで不気味な叔父様とつないだ右手を見る。

 そして、鏡でなく実際に右手に握っている物を見る。


「このみすぼらしい剣のホントの姿がこのオッサンだと。」


「ハッハッハ、みすぼらしいとかオッサンとか自分のパートナーにひどい言いようだな。」

「どういうことだよ。」

「ナニ、その剣こそがお主の前世の恋人の姿なのだよ。」

「はぁー?どういうことだよ。」

 訳が分からないことなどで二回言った。

「順番に説明しよう。まずお主が転生した姿は本来はこの二つ目の鏡に映っているオッサンだったのだ。」

「聞いていいか、なんで転生したらダンディーなオッサンになることになったんだ。」

「そこはお主の彼女の趣味だ。吾輩はそのリクエストに応えただけだ。」

「……それで何で体が入れ替わっている上に、本来俺の体になるはずのモノがみすぼらしい剣になっていっるんだ。」

「そこはな…ぶっちゃけるとお主たちの『親より先に死んだ罪。』はチャラになったわけでは無いのだよ。」

「はぁ?」

「そんなわけで試練が与えられることになったのだ。あれだ、賽の河原での石積の代わりだ。賽の河原があのざまだから異世界で行うことになったのだ」

「その試練を越えなければ俺は恋人との意思疎通もできないってのか。」

「そこは安心しろ。このチューリトリアル…もとい、地蔵菩薩のありがたい説法を聞き終えればその徳で意思疎通が解禁される仕様だ。」

「…仕様って、まるでゲームのように言いやがって。」

「いいところに気が付いたな。」



 おほんと一つ区切って、

「お主は我々が出す神クエストをこなすことで双方に掛かった制限が取り除ける徳ポイントを得ることができる。」

 それこそゲームのようにな、とのたまう地蔵菩薩。

「神クエストは吾輩が窓口となって執り行われるわけだが、それをクリアーしたら徳がたまるようになる。」

「ネーミングセンスが安直、というかツッコミどころみたいだな。」


「…最初、企画部から上がってきたときは『石積ッションイシツミッソン』と『積んだ石の数」だったが、そっちがいいならそうするぞ。」


「神クエストでお願いします。」


「よし、続けるぞ。徳ポイントは貯めて任意で使うことができる。お主らに掛かっている制約の解除やアイテムやスキルの獲得。」

「スキルがあるのか。…じゃぁレベルアップもあるのか。」

「ゲーム仕様だからな。それについては後程説明してやる。今は神クエストについてだ。―――改めまして、徳の使い方は神クエストやお主のコンソールの機能拡張にも使える。」

「コンソール?」

「ソレも後だ。―――神クエストは最初は一つしか提示されないが、その数を増やしたり、提示されない隠しクエストのヒント提示、交換対象の増加などがある。」

「本当にゲーム仕様だな。」

「お主らが神クエストをこなすことは吾輩のほうにもメリットがあることなのでな、せっかくだし楽しんでもらえた方がはかどるだろう。」



「続いてはコンソールの説明に入ろう。」

 神クエストについては実際に使ってみての質問があれば、暇、があれば教えてくれるそうだ。

「コンソールはワードを詠唱すれば開くことができる。」

「なる、で、そのワードは?」

「お主、地蔵菩薩である吾輩に態度が砕けすぎではないか。―――まぁ、よいか。」

 カズマとしてはこの地蔵菩薩に今更かしこまる必要性を感じなかった。

 地蔵菩薩のほうも今更かしこまられてもバカにされてるような気になりそうなのでこれでいいやとなった。

「最初は仮設定になっているが、こうだ―――


「オン カカカ ビサンマエイ ソワカ。」


「オン カカカ ビサンマエイ ソワカ。」


 カズマが地蔵菩薩に続いてコードを唱えると、フォンという軽い音と共に水色のお馴染みのコンソールが現れた。

「おぉ~、ほんとうにでた。……ところで今のワード何だったんだ。」

「そっちの方が気になるのか。今のは地蔵菩薩である吾輩を崇め奉る真言である。」

「えっと、ワードの変更は……

「それならそっちの設定のコマンドからワード変更で可能である。」

「ではさっそく。」

「ちなみに、よく使う言葉にするとしょっちゅうコンソールが開いてしまうからな。それとコンソールはお主たちにしか見えないから変なのにすると周りから奇異の目で見られるぞ。」

「お前の真言でも同じだと思うが。」

「吾輩こっちでも信仰されているから問題はない。あと、ワードを忘れたら、「地蔵菩薩様どうかお助けください。」とひざまずいて祈れば教えてやる。が、一応は分かりやすいのにしておくほうが良いぞ。」

 お前の真言もわかりずらいぞ。と思いながらカズマは後でじっくり考えて設定することにした。



「まずはマイページを開くといろんな機能を使うためのコマンド一覧が出る。ここのカスタマイズがしたければ神クエストの徳ポイントで拡張するがいい。」

「それすら追加が必要なのか。」

「おまけ要素は自分で集めるがよい。それよりまずはステータスの部分を開け。」

「これか。」

 カズマが言われた通りにするとコンソール画面が切り替わる。

「マジでゲームみたいになってるんだな。ん、ネームがカンパネッロってなっているな。」

「ソレはこの娘の名前だ。」

「なるほど、で、種族名のエルドルフってのは何だ。エルフじゃないのか。」

「半分はエルフだな。この娘は世にも珍しいエルフとドワーフのハーフなのだ。」

「えっ!エルフとドワーフって仲が悪いんじゃなかったっけ。」

「もちろんめっちゃ仲が悪いぞ。百年戦争中のイングランドとフランス並みに仲が悪い。」

「つまり殺し合うほどってことだろ。」

「だからこそエルドルフはこの娘一人だ。いやぁ、道ならぬ恋の果てに心中した片割れが道ならぬ恋の結果に生まれた娘とは、なかなかに面白い因果だとは思わんか。」

「それをお前が言うか。」

「いやいや、マジでたまたまだって。」

 ニヤニヤ笑いで手を振るその姿としゃべり方から改めてこいつが地蔵菩薩だってことが信じられないものだ。

「この世界の基準が分からないからなんだが、このステータスの数値ってどれくらいなんだ。」

 コンソールに映し出されたステータスは抜きん出た数値は無くバランスよくまとまっている。


  ◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□


カンパネッロ

 Lv,1   HP100/100  MP100/100


 [STA 60]  [VIT 40]

 [AGI 30]  [DEX 35]

 [MAG 40]


  ◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□


「この世界にはもともとステータスの概念は無かったからゲーム仕様にするための概算なのだが………この娘は片手で30㎏は余裕で行けていたはずだぞ。」

 カズマの居た世界では成人男性が筋トレに使うダンベルの推奨は5㎏~10㎏である。

「Lv,1でそれだと結構すごいな。」

「レベルもお主と入れ替わってからのものだからであって、この娘にはそれまでの人生があり、その中で培ったものだ。」

「そうか。」

 世界に一人の種族。その人生は楽なものではなっかただろう。

 そのことに気づいたカズマ複雑な顔をする。



「その娘についてはあとで本人にでも聞くと良い。今は吾輩の話を聞け。」

 次はイベントリを開いてみろ、との言葉で言われた通りにするカズマ。

「なにも入っていないな。」

「これはお主の転生特典の一つと言える。装備などは普通にコンソールを介さずに行うが、このイベントリは手に持っている物を収納することができる。周りから見ればユニークスキルに見えるだろうな。」

 出し入れの仕方はコンソールを開いた状態で右手ならライト、左手ならレフトと頭に付けて入れるイン出すアウトと唱えればいいらしい。

 カズマは試しに右手に持った剣を収納してみた。

「【ライト イン】。おぉ、本当に入った。」

 一度しまった剣を今度は取り出してみた。

「こいつはなかなかに便利な能力だな。」

「補足しておくが、生き物や持ち上げることのできないものなどは入れられぬからな。あと、当たり前だが神様基準で犯罪に当たるものもキャンセルされるから。」

「OK。それよりこの数字はなんなんだ。」

 30個あるイベントリの欄の中、0から3までの数字が付いているものがある。

「0はその剣、メインウエポン専用の欄で他はそこにセットしてある奴を出すときに最初に番号を付けて唱えれば出せるようになる。」

 番号を付けなければメインウエポンが取り出せるようになるとのこと。

「番号がないやつは片手でコンソールの出したい欄を押しながら反対の手に取りだす。」

 つまり番号はショートカットキーになるわけだ。

「これ、両手に持つやつはどうするんだ。」

「それこみでイベントリの拡張は徳ポイントの交換で行うことができるぞ。」

 そこもゲーム仕様というやつらしい。



「そしてここからが目玉だ。お主の彼女であるメインウエポンの育て方である。」

「いょ、待ってました。」

「その方法は大きく分けて3つ。一つはメインウエポンで敵を倒して経験値を稼ぐこと。」

「はい、質問です。カンパネッロのレベル上げとの違いはありますか。」

「ない。と言うかメインウエポン=カンパネッロなので連動する。」

 つまり、経験値が溜まれば両方レベルアップするということである。

「もう一つが徳ポイントの利用による強化。最後が貢ぐことだ。」


「……ぇえと、なんだって。」


「最後の強化方法はだ!」


 彼女に貢ぐ、それは日本人男性にとってはある意味恐怖ワードだった。

「具体的にはどのように―――。」

「それはコンソールの貢ぐコマンドから行う。貢ぐものによって効果は変わるが貢げるものはイベントリにしまえるアイテムに限る。と、言うのも貢ぐ際はイベントリから選ぶ必要があるからである。」

 試しに貢ぐのコマンドを選択してみるとイベントリの欄が開いた。

 しかし、今は何もないので行うことができない。

「では最初のお試しとして吾輩の用意したこの素材アイテムで試してみようか。」

「この瓶に入った液体は何だ。」

「化粧水の原料だ。」

 なるほど、女性に貢ぐ―――プレゼントするものに化粧水と言うのはアリなのだろう。そう思ったカズマは素直にそれを受け取った。

「まずはそれをイベントリにしまえ。」

「【レフト イン】。」

「そしてそれを貢ぐコマンドで貢いでみろ。」

 言われた通りコンソールを操作して貢いでみる。

 するとコンソールの画面に映っていたメインウエポンの映像にエフィクトが掛かって画面下部にテキストが出てきた。


『メインウエポンは艶が増した。』


「……これだけ?」

「そりゃぁお試しの素材アイテムだからな。とはいえ武器のメンテナンスも必要なことだからな。まして、この武器は生きている上に中身はうら若き乙女であるぞ。手入れは怠らぬように。」

「つまり武器であるけど女の子扱いしろということか。」

「貢ぐ際の注意点だが、言ったように乙女であるからにはモノによっては悪影響が出たりするからな。」

「難しいな。」

「まぁそこは本人と相談しながら貢いでいけばよい。」

「なぁ、その貢ぐって言うの…何とかなんない。」

「残念ながらこれはキャッチワードだから変えることはできん。なぁにすぐに慣れるさ。ハァーハッハッハ。」



「ではこれにてチュートリアル―――もとい、ありがたい説法は終いである。」

 という地蔵菩薩の言葉と共に『パンパカパーン!』とファンファーレが聞こえてきた。

「今のファンファーレが神クエストをクリアした合図である。ちなみに設定で音量の調節やミュートにもできるぞ。」

 本当にゲーム仕様だな、と思いながらも便利ではあったりするカズマであった。

「それでは最後に徳ポイントの使い方だが、コンソールの神クエストの機能を開いてみろ。」

 開いてみればそこには現在の徳ポイント数が提示されていた。

 その下にはポイント使用と、提示クエスト閲覧のコマンド欄があった。

「とりあえずまずは徳ポイント使用のコマンドを押せ。」

「……言われなくてもわかっているよ。」

「吾輩はお主がひねくれ者だということも解っているぞ。」

 返す言葉の無いカズマは素直に言われた通りにした。

「今のお主は1ポイントだけだがクエスト次第では手に入るポイントも変わって来る。」

 コンソールの画面にはポイントの使用対象を選ぶための画面が開いた。

 そこにはメインとサブの欄があるのだが、今はメインに一つだけがあるだけだった。

「これだが、メインの欄にあるものを習得することでサブの対象が増えていくという仕様だ。では、満を持して最初の機能開放と行こうか。」



 コンソールの画面には【会話機能チャット】と提示されている。

 しかし、ここにきてカズマは緊張してきてしまった。

 前世の恋人。

 と言っても、今の自分にとっては初対面になる。

 彼女いない歴=年齢に加えて、カズマには合コンとかに参加した経験もないのでどう切り出したらいいのか分からないのである。

 と、言うか、いきなり前世の恋人だからと初対面の人(武器)をあてがわれても困る。

 と、ホントーーーーーに今更になってから思い至ったのである。


「えぇいこの童貞が、ここにきて何を童貞らしくヘタレておるかこの童貞。そんな童貞だから今まで童貞だったのだ。ここで童貞だとこの先も童貞のままだぞ。さっさとしろ童貞。」


「童貞童貞五月蠅わ。ヤレばいいんだろう、ヤレば。」


 流石に童貞童貞と連呼されれば頭にも来るもので、カズマは勢いでコマンドを押していた。

「………これで会話ができるんだよな。………………えぇと、もしもーし、カンパネッロさーん。」

「………………………………。」

「………………………………。」

「………………………………………………………………。」

「……これ、壊れてない?」

「そんなはずはないのだが。」

 問われた地蔵菩薩は首をかしげながら剣をつんつんする。

「おぉーい、娘っこよー。」

「………………………………。」

 グリッ、グリッ。

「ぅ~~~~~~~~ん、もう食べらんないよ。」

「こやつ、寝てやがるな。」

「…寝てますね。」


「―――ッファ、寝てない。寝てないで御座るよ。」


 この時点でカズマは残念な気持ちになってきていた。

「……何で御座る?」

「大方、寂しさを紛らわすために前世の記憶をもとにした一人芝居が癖になってしまって、つい出てしまったのであろう。」

「ぎゃぁー、なんでそんなこと知ってるんですか。」

「吾輩は地蔵菩薩である。汝のような報われぬ者はいつも暖かく覗き見て見守っているからに決まっておろう。ハァーハッハッハ。」

「ヤメロー!」

「無理である。なんてったって地蔵菩薩であるからにして。」

「なら!せめて人に言いふらすなー。」

「失敬な、それくらいわきまえている吾輩である。今回のは汝が寝ぼけてやらかしたのだろうが。」

「………ハイ、すいません。」



 こうして、地蔵菩薩のありがたいチュートリアル説法を聞いたカズマは、冴えない武器に宿った残念な彼女との残念な出会いとなったのである。

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