第3話 いろは坂
あの頃の私は、少しおかしかったのかもしれません。
数人の男性と知り合うきっかけがありましたが、今なら絶対付き合わないだろうな……というような人ばかりに目がいって、不幸不幸を呼び寄せていた気がします。
それが何のせいなのか、誰のせいなのかはわかりませんが、そんな中でお付き合いするようになった彼とのお付き合いは、楽しいこともありましたが、そうじゃないことも多かったです。
彼は仕事も続かず、お金もいつもギリギリ。そんな彼でしたが、色んなところへ連れて行ってくれました。
といっても、私の車で、宿など決めない旅行でしたが。
今では思い出せないくらい、色んな場所へ行き、二人で写真を撮りました。デジカメとか持っていなくて、あの頃は使い捨てカメラを使っていたのですが、現像してみると、かなりの確率で丸い玉が写っていました。
一枚とか二枚ではなく、しかも場所も違うのにです。
その頃、友達とも毎週のように写真を撮っていましたが、オーブのような玉が写るのは、その彼との写真だけでした。
その彼と、栃木県を旅行で訪れた時のことです。
とにかく車で観光し、一日で色んな場所へ行きました。もちろん宿は決めていなかったし、ラブホテルに泊まるつもりだったので、夜遅くまで彼の運転でうろうろしていました。
彼が夜のいろは坂に行ってみたいと言ったのか、たまたまホテルを探していたらそっち方面に行ってしまったかは覚えていませんが、夜中の0時はとうにすぎた時刻、真っ暗な中いろは坂を通っていました。
私は助手席に座り、ヘッドライトの照らされている前しか見てませんでした。
そんな時、道の脇に人が二人立っていました。
車ですれ違った近辺にキャンプ場なのか、旅館なのか、その辺の記憶は定かではないのですが、そんな場所への入り口があったように思われ、勝手にそういう場所の宿泊者なんだろうと思い、そんな時間にも関わらず、あまり気にしませんでした。立っていた人間も私達の車に何のアピールもなく、渡りたいのを待っているように感じました。
「追いかけてきてる」
彼の一言に、私は振り返ったのか、バックミラーを見たのかは忘れましたが、後ろを確認しました。
すると、確かに走ってきてるんです。
手を振るとか何かアピールすることなく、ただ走ってきてるんです。
「とまるか? 」
彼は車を減速させました。
「やだ、とまらないで!! 」
「でも、何か困ってるなら……」
「大丈夫! ほら、後ろから車来てるから!! 」
バックミラーに車の光なのか、眩しい光が映り、彼は再度アクセルを踏みました。
その十数秒後、普通なら人間は追い付けない筈だし、振り切っただろうと後ろを振り返ったら……、何も見えませんでした。
人も、いる筈の後方車両も。
曲がる道があったようには思えませんでした。もしかしたら、走っている人間に気がついて停車したのかもしれませんが、ライトを消すでしょうか?
その後は、とにかく怖くて怖くて、何度曲がっても終わらない道に、彼と二人でこんなに長かったっけ? とより恐怖を覚えました。
もしかしたら、本当にただの人間だったのかもしれないし、何も怖い話しではないのかもしれません。
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