第2話【雨宿り】

【 今でも昨日のことのように思い出すことが出来る。それほど僕にとってアレは、衝撃的な出来事だった】



父が運転する車の中。


僕は、後部座席でぼんやりと外を見ていた。今日は、朝から雨が降り続いていた。



母「どうして、また喧嘩をしたの? 相手の子、骨折までしたって言うじゃない。どう…して………」



喧嘩の理由…………。考えてみたけど分からない。



父「こんなに母さんを困らせてっ!! 二度と喧嘩はするなよ。これ以上、親に迷惑かけるな」


母親「ぅ………」



いつになったら、この雨やむのかな。



父「……ッ!!」



父が、また何か怒鳴っている。もう……聞き飽きた。車を止めて、早く僕を解放してよ。この空間は、息苦しくて気持ちが悪い。



その時ーーー。



逃げ道を探すように車窓から外の世界を見ていた僕の目にある女性がうつった。


背が高く、美しい人……。でも僕が衝撃を受けたのは、どしゃ降りの中、傘もささないで一人でバス停に立っているという状況だった。傘は、手に持っている。壊れたわけでもないだろう。全身が濡れ、綺麗な服が肌に張り付いていた。



ほんの一瞬だったけど僕には見えた。この女性の泣き顔。


泣いていた理由は、分からない。



そんな女性に僕は、一瞬で恋をした。他の人に話せば、きっと笑われるだろう。だって、何年もたった今でも僕は、彼女の幻を追いかけているのだからーーー



【 あの時の一瞬の恋は、僕の一生の思い出になった 】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る