　実況解説コンビが、新規ステージである海賊島について解説した。

『なぜ海賊島のランダム性が強いかというと、島のあちこちに海賊の財宝が隠されていて、一つあたり500ゴールドの価値があるからですね。二つ集めれば、キャラクターのレベルを一つ上げられるぐらい貴重です』

『しかも財宝は、特定の場所に埋まっているわけではなく、完全なランダムでステージのどこかに出現します。500ゴールドもの価値があるオブジェクトが、ランダムで発生するとなれば、運要素が強めに出てくるわけですよ』

『山崎さん。運要素の強いステージって、遭遇戦とか少数戦が起きやすくなるから、個人技の強いチームが有利に試合を運べるわけですけど、この対戦カードの場合、どちらが有利なんですか？』

『間違いなく東源高校です。なんたってkirishunがいますからね。この東京大会における個人技最強選手です』

　東源高校の試合席では、部長の尾長が、爬虫類の顔でニヤリと笑っていた。

「都市の廃墟をbanすれば、我々は海賊島を選ぶだけだ。次の試合で海賊島をbanするなら、今度は都市の廃墟を選んでバトルアーティストを使えばいい。これがステージ選択における戦略さ」

　東源高校は、この一週間、ひたすら海賊島の練習をしていた。

　すでに花崎高校とは、予選で対戦しているから、なにが長所で短所なのかもわかっている。

　だから花崎高校とBO3をやるための戦略を組めたわけだ。

　これはBO3の強みでもある。

　予選やBO1の本選で、海賊島が出てこなかった理由は、ランダム性が強すぎるため、選択した学校までもが下振れする確率が大きすぎるからだ。

　しかしBO3なら、もし下振れしても、残り二本で勝てばいいため、こういうランダム性が強いステージを使って駆け引きができるようになる。

　東源高校は、むしろ予選で花崎高校に敗北しているからこそ、戦略の幅が広がっていた。

　ヴィジュアル系の加奈子は、親友である吉奈からもらったタロットカードを意識しながら、ひとりごとをいった。

「わたしは、もっと大きな舞台で戦ってみたい。だから、この試合に勝つ」

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