『prologue』



『TIME IS MONEY』


 太平洋のど真ん中に位置している人工島。それは、およそ四十年前に造られた。

 日付変更線の真上に造られたその人工島は、世界で一番時間の早い土地として知られることになった。

 世界にたった一つしかない時の水晶の入力機のあるその島はどこの国にも属さない絶対の中立域として浮かんでいる。

 一か月に一回。月替わりに一日だけ観光客が訪れることが許されており、島へ向かうクルーズには数々のセレブが乗っている。


 そのクルーズに乗るために払うものは、莫大な金。

 確かに金ではあるが、その出どころはおそらく誰かの余命だろう。

 そういう世界になってしまった状況を、ほとんどの人は、納得していた。喜びもしていた。

 ただ、それはほとんどの人、だ。

 世界自体を憎んだ人だっていた。

 たった一人、とても有名な思想家がいた。

 

 佐々木冬至。

 たった一人で世界に牙をむいた革命派の中で最も有名な人物。

 様々な人間の心をうった異端の人。

 


 そして、その佐々木冬至が動き出したのとほぼ同時に誕生した更級華憐。

 通称、神の子。

 時によって豊かになったこの世界に、二万年の余命という世界を変えうる力をもって生まれた少女。

 


 余命をあらゆるものに変換できる。

 

 このたったひとるのルールにより、明かに変化した世界で、人々は、それぞれの信念で、やり方で、目標へと向かう。

 これは、たった一つ。

 神の子の願いが叶うまでのお話。




 

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