虜囚
第47話
「着いたぞ」
その言葉と共に取り払われた
籠の鳥状態で生活してきた沙耶にとっては、全く見知らぬ風景だ。しかし移動時間と、砂糖商の言動から、だいたいの候補は頭の中に浮かんでいた。
(皇都の外れには、辺境貴族達の別宅が点在していたはず……)
砂糖商が出入りするのだから、
その中のどれか、だろうが……。
「さっさと出ろっ」
砂糖商が急かすように声を上げ、近くの馬房に馬を繋いだ2人の男も近付いて来た。
モタモタしていると引き摺り出されかねない状況に、沙耶は一瞬、どう動くべきか思考を巡らせる。
というのも、衣服が着崩れたままなのだ。このまま立てば、女だとバレる可能性が高い。
(……けど、彼らが私たちを連れてきたのは、砂糖の現状を、中央政府に知られたくないからだ)
役所に訴えかねない
ここまで連れて来てどうする気なのかは全く不明だが、すぐに危害を加えるつもりならあの場でやっているだろう。何かの目的があると見ていい。
……であれば、男だということで警戒されるよりも、女だとバレて油断してくれる方が、事実を掴みやすいんじゃないだろうか。まぁ……別の意味で面倒な事態になる可能性はある、が、最悪の場合はなりふり構わず一縷に頼ると決めていた。
「おいっ、引き摺り出されてぇのか!?」
「今、出ます」
男達の面倒そうな声音に、静かに返答した沙耶。そして後ろ手に結ばれたまま、よっこいしょと立ち上がった。
……のだが、
「いえいえっ、俺が先にっ……!」
「……ぇ……?」
沙耶を押し退けるように、突然
「あ、
もしかして女だとバレないように庇ってくれたのか……とも思ったが、ここまであからさまだと逆に怪しい。不器用か。
「おい、お前……何か隠そうとしてるのか?」
「い、いえ、まさかっ! 俺が先に出たいだけで……」
男達が不審そうに背後を覗こうとするが、
「あ、ちょっ、ぅわぁああっっ……っ……!!」
「――なんだよ、やっぱ女じゃん」
抵抗むなしく、荷台から引きずり落とされた
その向こうで、男達が沙耶を見つめて口元を歪めた。
「んだよ、俺ら間違ってなかったじゃねぇか」
「紛らわしい格好すんなよなー」
わざとらしく嘆く2人に反して、沙耶は毅然と立ち上がり、自ら荷台を降りた。
「……っつ……沙耶さん……」
「大丈夫ですか、
「や、大丈夫です……あの、すみません……」
地面に膝をつき身体を案じてくれる沙耶に、
すると、その様子を見ていた砂糖商が、沙耶を上から下までしげしげと見つめる。
「……女……? ……つーことは役人じゃねぇのが確定する……のか……。ちっ、連れて来ちまった……」
忌々しげに舌打ちをする砂糖商。お屋形様に確認するしかねぇな……とため息混じりに呟き、出迎えにやってきたらしい下働き風の女達に指示を出し始めた。
どうやら沙耶は、彼女達に連れて行かれるらしい。
心配気に見つめる
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