第7話 第1章④ ツイン・アプロディーテ初勝利!?

 私が殴り、みずきが焼くことで敵はその数をどんどん減らして行く。しかし、ひたすらがむしゃらに頑張っていた私たちだけど、私はふとあることに気がついたのだ。


「みずき! 胸が……」

「は? ……って、ええ!?」


 みずきが自身の胸部に手をやる。驚くべきことに、なんとさっきのような膨らみは既にほとんどなくなってしまっていたのだ。みずきに倣い、私も急いで自分の胸を確認する。すると、私の胸もいつのまにかさっきの大きさの半分程度まで減ってしまっていた。


「ちょっと! これどういうことよ!? こんなすぐに小さくなるなんて聞いてないわ! ガッデム!」

「ちょっと、落ち着いてよみずき!」


 いつにも増して動転してしまっているみずき。胸の大きさが魔力の多さによって変わるのなら、また魔力を生成できるように胸を刺激すればいいのだろう。でもまだ敵はそれなりに残っているし、今胸を揉んでいる時間はない。いったいどうしたら……。


 そうこうしているうちにエーテル数体が私たちに迫る。みずきはなんとか気持ちを落ち着け攻撃を仕掛けようとする。しかし……


「だ、駄目よ! もう炎が出ないわ!?」

「魔力切れ!?」


 こうなったらもう私が戦うしかないわけだが、この数を私一人で攻撃するにはさすがに骨が折れる。そもそもエーテルは硬化していない場合、液体であるエーテルに私の攻撃はほとんど通らないのだ。みずきの魔法攻撃があれば一掃できるかもしれなかっただけに、ペース配分をもう少し考えるべきだったと私は後悔する。するとそんな私にセレナが再び話しかける。


『かすみ』

『セレナ、なに?』

『実は魔力をみずきに移す方法があるんだけど、やってみない?』

『そんな方法があるの!? それなら教えて!』

『おっけー』


 相変わらず軽いノリのセレナ。しかし、彼女の言葉を聞いた私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。


「ええ!? そんなの無理に決まってるじゃないの!?」

『落ち着いてかすみ。でも、あなた一人よりみずきにやってもらった方が絶対早いわよ? それにいずれは必ずこの方法を使う時がくるだろうし、今のうちに慣れておいた方がいいと思わよ。まあ、私にしては何が恥ずかしいのか全く分からないのだけど』


 いやいやいや、これが恥ずかしくないってのはさすがにおかしいって!? だって……


『おっぱいを吸わせて魔力を移すなんて、そんな恥ずかしいことできるわけないじゃないの!?』


 私は改めて、セレナの言葉のあまりの破壊力に目眩がする。それでも彼女が他に方法はないと言い張るので、私は止む無く意を決する羽目になってしまった。


「みずき!」


 やけっぱちの私は高速でみずきに接近する。


「かすみ何やってんの!? 早くこいつらなんとかしてよ!」

「そのことなんだけど、実はお伝えしたいことがありまして……」

「な、なによ改まって……? なんかすごく嫌な予感がするんだけど……」

「嫌な予感がしてくれているのなら丁度いいよ。悪いけど少し耳貸して……」

「ひゃあ!? い、いきなり耳触らないでよ!」

「あ、ごめん……ってか、みずき耳弱いんだねぇ」


 みずきの弱いところを発見した喜びで思わず顔がにやける。


「笑うな! あたしだって恥ずかしいんだから……って話逸れてる! 早く本題を言って!」

「マジですんません……」


 私はなるべくみずきの耳には触れないように例のことを伝える。その瞬間、


「はあああああ!?」


 案の定みずきは怒声をあげたのだった。


「どーどー……」

「どーどーじゃない! あんたそれ本気で言ってんの!?」

「いや、私だって無理だって言ったんだよぉー……でもセレナがやれって言うから……」

「いくらあいつにやれって言われたからって、あ、ああ、あたしがあんたのおっぱいを吸うなんて、絶対あり得ないんだからね!」

「そうなんだけどさぁ……って、みずき危ない!?」


 何かがこちらに向かって飛んできたのが見えた私はとっさにみずきを地面に伏せさせる。見ると、それはどうやらエーテルから飛んできた金属片のようなものだった。あんなのをまともに食らっていたら死んでいたかもしれない。そう考えただけで私の背中に悪寒が走ったのだ。


「も、もう時間がない! 悩んでいる時間なんてないよ!」

「え、ちょっ!?」


 有無を言わさず私はシャツを脱ぎ、そしてマイクロビキニを取り胸を露わにする。私の胸について細かいことを描写してしまうと健全な少年たちがこの小説を読めなくなってしまうのでここでは割愛するけれど、それはとても綺麗な桃色をしていたということだけは伝えておくことにしよう。


「嘘でしょ!? あんた馬鹿なことを……」

「いいから、咥えて!」

「んぐぅ!?」


 これまた詳しくは書かないけど、私はもがくみずきの口に桃色のそれを無理やり突っ込んだのだ。みずきは最初こそ顔を真っ赤にさせて抵抗したものの、しばらくすると諦めたのか、今度は積極的に私の魔力を吸い出した。


「あ、あ、ちょ、みず、き、ま、待って……!」

「ふぃふぁふぉ(嫌よ)」

「みずき、ちょっと、それは、上手すぎるって……!?」

「ふっふぁふぃ。ふぁふぁっふぇふふぁふぇふぇふぉ(うっさい。黙って吸われてろ)」


 魔力を吸っている間のみずきはとにかくドSだった。でも、それがまたいいなと私はこっそり思ったものだった。


 吸い尽くされた私はそのまま地面に倒れこむ。私の胸は今や完全に真っ平らとなり、かつての面影など全く残っていなかった。しかしその代わり、私の魔力を吸ったみずきの胸は、なんと再びDぐらいの大きさまで戻っていたのである。


「はあ、はあ、あ、あとは、頼んだよ」


 そう言う私に対し、みずきは無言のまま着ていたシャツを私に掛けてくれる。そして小さな声で「分かってるわよ」と言ったのだった。


 みずきがエーテルの前に立ちはだかる。すると彼女はまず大きく息を吸う。その瞬間、なんとみずきのおっぱいが光り出したのだ。

 次に彼女は胸の前で腕をクロスさせる。彼女の胸にとんでもない量の魔力が集まってきているのが遠くで見ている私にも分かる。そして彼女はこう叫んだのだ。


「全部消し飛べ! ブレストライト・ブレイカー!」


 みずきはそう叫ぶと同時に、なんと私と同様にマイクロビキニを外し、思い切り両手を広げる。そして彼女の露わになった二つのおっぱいから、青色の熱線が放たれたのだ!

 二本の光が一直線にエーテルに向かう。そしてそのうちの一匹に直撃する!


 ぐおおおという叫び声のようなものを残し、エーテルが消し飛ぶ。みずきは熱線を照射したまま他のエーテルにも照準を合わせる。


「おらああああ!」


 もはやヤケクソ気味なのか、みずきは既に手にしていたマイクロビキニを投げ捨てている。そして残っているエーテルにどんどん熱線を浴びせかけていく。

 次々蒸発していくスライム状の魔物たち。そしてついに、全ての敵が跡形もなく消え去ったのであった。


「はあ、はあ、はあ……」


 みずきは力尽きたようにその場に倒れこむ。私自身も体力は既につきかけているが、なんとか立ち上がり、彼女の元へ駆け寄った。


「みずき、大丈夫?」


 私は彼女を抱きかかえそう問いかける。見ると、彼女の胸はやはり完全にまっ平になってしまっていた。明らかに青ざめた顔で彼女は尚も虚勢を張る。


「……これぐらい、なんとも、ないわよ」

「ぜ、全然なんともないようには見えないけどね……。それにしても今の凄かったね! まさかあんな攻撃ができるなんてびっくりだよ!」


 私は素直な気持ちでみずきを称賛する。しかしみずきは、急に自身の顔を両手で覆い隠してしまったのだ。


「い、今見たことは、絶対誰にも言うんじゃないわよ……。言ったらコロスから……」

「は、はーい……」


 声が明らかにマジトーンだったので、私は彼女の言葉に素直に従うことにしたのだった。するとそこに、さっきまで姿が見えなくなっていたセレナが実体のある姿で私たちの前に姿を現したのだ。


「はーい、二人ともお疲れ様! 早速力を使いこなしていて素晴らしかったわよ。かすみも良かったし、特にみずきのおっぱいレーザーは最高だったよ!」

「あ」


 気付いた時には遅かった。みずきは私の腕から抜け出し、いつに間にかセレナの胸倉をつかんでいたのだ。もちろん上裸の状態で。


「今度それ言ったらマジでコロス……」

「お、落ち着いてって……。あれはN76星系では立派な必殺技よ。恥ずかしがる必要なんてないし、あのセンスを持っていることを誇るべきだわ」

「そうだとしたって、あたしはあんなの本当はやりたくなかったの! もう二度とあんなことやらないからね!」


 みずきはよっぽど嫌だったのか、セレナを放すと蹲って顔を抑え「もうお嫁にいけないわよ……」と半泣きの状態になってしまったのだ。

 私は黙ってそんな彼女の肩を抱きしめる。また怒られるかなとも思ったが、みずきは私を邪険にすることはなく、肩に触れる私の手を触ってくれたのだった。


 かくして、私たちの「ツイン・アプロディーテ」としての初戦は幕を下ろした。これからまたこんなことが起こるのかと考えるだけで私たちは暗澹たる気持ちになったが、今はとにかく街を救えたことを喜ぼうと私は思うのであった。

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