第6話 第1章③ 魔法少女たちの実力
「もしかしたら揉めばもっと大きくなるかも……って、あんた! そのサイズどうなってんの!?」
「え?」
みずきに指摘されて初めて気が付いたのだが、私の胸はいつしかマイクロビキニがはち切れんばかりに巨大なサイズになっていたのだ。でも私の本来の胸のサイズはFだ。これはいくらなんでも大きすぎると思うのだけど……。
すると、そんな私の胸をセレナがまた思い切り触って来たのだ。
「こ、こら、勝手に、触っちゃ……」
「うーむ、どうやらかすみの胸は感度が凄いみたいね。もともと大きいけど、揉んだだけでここまで大きくなる子もなかなかいないわ。それだけ大きければやつらとも十分戦える! 胸が大きいってことはそれだけそこには魔力が詰まってるってことだからね! ほらかすみ、あなたは早くみずきのサイズをもう少し大きくしてあげなさい! こんなに差をつけられたら、いくらなんでも彼女が可哀そうだわ」
「あんたに憐れみをかけられる覚えはないわよ!」
みずきは怒りに吠えながらも、私に胸を揉まれることを拒まなかった。もしかしたら、彼女はこの機に乗じて本当にバストサイズを大きくしたいと思っているのかもしれないと私はこっそり思ったのだ。
散々私がみずきの胸を揉んであげると、みずきの胸は更に膨らみを帯びた。そして彼女は満足げに自身の胸を弄りながらこう言った。
「よし、これできっとDぐらいはあるわね」
嬉しそうにそう呟くみずきにセレナがポツリと言う。
「それでも私の通常サイズよりは小さいけどね……」
「セレナ! あんた一々五月蠅いわよ! ほら、ボサッとしてないで行くわよ!」
「分かった!」
みずきに促され私たちは走り出す。走り出してみると、あまりにも巨大に育ってしまった胸が痛いほど揺れているにも関わらず、私の身体は驚くべき程の軽さを感じていたのだ。
「ど、どうして身体がこんなに軽いのかな?」
そんな私の疑問にセレナが答える。
「魔法少女の身体能力は通常時の数倍になるの。それに今、あなたは無意識のうちに身体強化の魔法を使っているみたいだから、それで余計に身体が軽く感じるんだと思うわ」
「わ、私、そんなことができるんだ……」
こっちは完全に無自覚なだけに、自分が魔法を使っているなど俄かには信じられなかったのだ。
と、そうこうしているうちに私たちは魔物へと接近する。このままではあと数十秒でこの街の大通りに出てしまうくらいのところにやつらはいた。走りながらみずきはこう愚痴る。
「このまま大通りに出たら、あたしたち明らかに変態扱いされるわよね……」
「う、うん……」
これから初の実戦って時に考えることではないのだろうけど、私たちは魔法少女である前にうら若き乙女なのだ。こんな姿を見られたら、私たちの高校生活にロクな影響がないことだけは、あまり良くない私の頭でも十分理解することができた。
「まったく、仕方ないな! そんなに恥ずかしいならこうするわよ! せいっ!!」
セレナが何やら叫びながら両手を広げる。その途端、なんとあらゆる物の動きがストップしたのだ。
「な、何が起こったのよ!?」
「この空間に結界を張ったわ! 結界内にあなた達以外の人間は入り込めないから、これで心置きなく戦えるわよ!」
そう言って親指を立てるセレナ。できれば最初からそれをやっておいて欲しかったけど、今はそんなことを言っている場合じゃない。誰にも見られていないのなら心置きなく戦えると、私は思うことにしたのだった。
「さ、あとは任せたわ! 頑張ってね、『ツイン・アプロディーテ』!」
「って、あんたは戦わないの!?」
「私は今力を二人にあげちゃって霊体になってるから戦えないのよ! しっかりサポートするから頑張ってよ!」
「ったく、あんたは後出し情報ばっかり……ええい! こうなったらもうヤケよ! 行くわよかすみ! 一発ぶちかましてやりましょう!」
「うん!」
私たちは並んでエーテルに突撃する。何かアイデアがあったわけじゃないけど、今の私たちならなんとかできるような気がしていた。そしてまずは私が、怒声をあげながら敵に殴りかかったのだ。
「はああ!!」
私たちに気付いたエーテルがあの時と同じように形を変えて私たちに襲いかかる。だが、今の私の勇気は死の恐怖をも上回った。
私の拳が硬化したエーテルの腕のようなものと衝突する。見た目に似合わず確かにそれは硬い。だがそれでも私に砕けないレベルではなかった!
「うおおお!」
私の攻撃に対し、エーテルはぐぎぎと悲鳴のようなものをあげる。苦しいのかどうかは知らないけどこっちは一度殺されているのだ。躊躇うことなどあり得ない。
そしてついに、エーテルの硬化した腕は粉々に砕け散ったのだ。
「やった! ナイスよ、かすみ!」
「ありがとうみずき! でもまだまだ敵はいるよ!」
「分かってるわ。こうなったらあたしもやってやるわ!」
そう宣言し、みずきは右手を前に出す。私が何をするのかと思っていると、
「くらええ! この気持ち悪いスライムもどきが!」
驚くべきことに、なんとみずきの掌から炎の球体が発射されたのだ。まさかの展開に私は衝撃を受ける。
炎は一直線にエーテルへと向かう。そしてそれと衝突すると、なんと直撃した部分が見事に弾け飛び、その場で蒸発したのだ。
「おお!? めちゃくちゃきいてるよ!」
『エーテルは水属性なので、強烈な炎を浴びせれば気化させることができるわ』
『うわっ!? びっくりした……。セレナ、突然脳内に話しかけてこないでよ……』
『あー、ごめんね。さっきこれをみずきにもやったらあの子にも怒られちゃってねぇ』
そう言いつつ、あまり悪びれる様子もないセレナ。
『みずきにもやったんだ……』
『そうそう。あの子もあなたと同じようにエーテルを殴りに行こうとしていたから、そうじゃなくて今みたいに炎を飛ばす方が向いてるよって教えてあげたのよ』
セレナ曰く、人によって得手不得手があって、私が打撃攻撃、みずきは遠距離攻撃が得意であるとのことだった。
すると、私がセレナと頭の中で話し込んでいると、みずきが少し怒った表情でこう言った。
「何ぼさっとしてんのよ! どんどん次行くわよ!」
「あ、ごめん……。それにしても今のすごかったね! いきなりあんなことができるなんてビックリだよ!」
「べ、別にこれくらい大したことないわよ! でも今のでできることは分かったから一気に片付けましょう!」
「うん!」
そうして再び私たちはエーテル達に立ち向かうのだった。
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