第5話 第1章② 感度良好? 魔法少女の秘密

 セレナの求めに応じるように、私たちを覆っていた殻が割れていく。気付くと私たちは、共に地面に両足をついていた。

 辺りは水を打ったように静まり返っている。私はふと今の自分の姿を確認する。すると、私たちの身に起こっていた驚くべき事態の全容が明らかになったのだ。


「ちょ!? 何よこの格好!?」


 叫び声をあげるみずき。それもそのはず、私たちはあまりにもとんでもない格好をしていたからだ。

 足を覆っていたのは、黒色のニーハイ。そしてスカートは今にも中身が見えてしまうのではないかと思えるほど短く、その間の太ももがやたらと強調されてしまっている。だがそれはまだ序の口に過ぎない。問題なのは上半身の様子だ。

 今私たちは白色のシャツを羽織っている。だがそのシャツはシャツとしての機能を全く果たしておらず、身体の前部分を全く覆い隠していなかったのだ。


「どういうこと!? こんなの、ほとんど胸が出ちゃってるじゃないの!?」


 みずきの言う通り、ブラなのか下着なのか分からないそれは、私たちの乳首を隠すだけの役割しか果たしていなかった。だがそんな絶賛混乱中の私たちとは対照的に、セレナは自身の長い髪をかき上げながら実に冷静なトーンでこう言った。


「それは、この星の言葉で言えばマイクロビキニという代物ね。大丈夫よ、乳首は出てないし、無駄に肌を布で覆うよりもこの方が軽くて動きやすいわ」

「そ、そういう問題じゃない!? こんな格好ただの変態じゃないの!?」


 怒るみずきに対し、セレナは本当に理解できないといった表情でこう切り返す。


「変態? この格好の何が変態なの? 我々N76星系人の魔法少女は皆これに似た格好で戦っているのよ。私も戦闘時はこんな感じの格好だし。初めて会った時に見なかった?」


 そう言えばそんなものを見たような気もしなくもないけど、残念ながら今そこに反応している余裕はない……。戦う為の力を目覚めさせるはずが、こんなハレンチな格好をさせられるなんて一体誰が考えるだろうか? 今すぐもっと普通の格好に変えるようにセレナに言わなければ、気になってしまって戦いどころではなくなって……って、あれ?


「みずき」

「何よ!? 今はそれどころじゃ……」

「いいから、目を閉じてみて」


 私がそう言うと、みずきは嫌々ながらも目を閉じてくれる。私は胸に手を触れながらみずきにこう尋ねる。


「なんか、さっきよりも物凄いエネルギーを感じない?」

「ええ!? そんなまさか……」


 そう言いつつ再び目を閉じるみずき。すると彼女は私と同じように、自分の身体の中を縦横無尽に駆け回るとある「力」の存在に気が付いたようだった。


「うそでしょ……なんで、こんなハレンチな格好なのに……」

「ハレンチなんて人聞きの悪いこと言わないで! さっきから言ってる通り、これは我々N76星系人のユニフォームと同タイプもので、『ツイン・アプロディーテ』である二人の為の衣装なのよ!」

「ってさっきからその『ツイン・アプロディーテ』って何?」

「だから二人の新しい呼び名だって。魔法少女は神聖なものなの。だからそれ相応の名を冠しないとダメなのよ。二人には、今日からその名前で戦ってもらうからね!」

「はあ!? 嫌よ! なんか凄くダサくない!? かすみだってそう思うでしょ?」

「うーん、私はそうは思わなけど……」

「思ってよ! うそでしょ!? この中でまともなのってあたしだけなの!?」


 そう言いつつ、みずきはあたしの胸に思い切りツッコミを入れてくる。だが彼女のツッコミを受けた時、あたしの胸に電撃の様な衝撃が走ったのだ。


「ひゃうん!? い、今のは何!?」

「え、ちょ、ちょっとかすみどうしたのよ!?」

「な、なんだか分からないけど物凄い刺激が……お願いみずき、私の胸を思い切り触ってみて!」

「はあ!? 何を馬鹿な……って勝手に人の手を!?」


 嫌がるみずきを無視して、彼女に私の胸を掴ませる。するとやはり、さっきと同じように私の胸にこれまで感じたことのない刺激が走り抜けたのだ。


「くふぅ!? こ、これ、すごくヤバいよ……」

「ちょ、ちょっと!? へ、変な顔しないでよ!? そ、そんなエッチな顔されたら、あたしだって変な気分になっちゃうじゃない……」


 みずきは真っ赤な顔をしている。すると、そんな彼女に対しセレナがこんなことを言う。


「ふーん、だったら遠慮しない方がいいんじゃない?」


 言い終わるや否や、今度はなんとセレナが思い切りみずきの胸を揉んだのだ。胸を揉まれたみずきはあまりの刺激に堪えきれず、唇の間から悲鳴にも似た声を漏らした。


「んひいいいい!? な、何よこれぇ!? どうしてこんなに胸が痺れるのよ!?」

「これが魔法少女の力よ。あなたたちの胸の先端には魔力を司る『コア』がある。魔法少女は胸を刺激することで核を刺激し、『魔法』の元となる『魔力』を生成することができるの。そして更に、体内で創り出した『魔力』を消費し『魔法』に変換することができる。本来であれば、『魔力生成』と『魔法変換』は順番に行わなければならないけれど、魔法少女はそれを一度に成し遂げることができるわ! それほどまでに、魔法少女は特別な存在なのよ!」


 セレナ曰く、胸が痺れるということは、胸の中で魔力が大量に生成されているということらしい。魔法少女はこうやって胸を刺激し、体内に『魔力』を生成することができるのだとか。


「ほら、さっきから気が付かない? あなたの断崖絶壁の胸が、さっきよりも大きくなっていることを」

「誰が断崖絶壁か!? ……って、本当だわ!? あたし、サイズはAAなのに……」

「やっぱり断崖絶壁じゃないの……」

「だからうっさい! 確かに普段は小さいけど、今のこれはBぐらいあってもおかしくないんじゃないかしら!?」


 見ると、確かに今のみずきの胸は膨らみがあり、先ほどよりもサイズが大きくなっているのは間違いなさそうであった。

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