二章 運命の邂逅
プロローグ
少年は全てを失った。
平穏な場所も、穏やかな時間も、愛する人さえも。
「……殺してやる」
その時、少年が抱いたのは狂おしいまでの――憎悪。
己から奪った奴、己を利用した奴、己を裏切った奴――その全てに復讐を誓った。
「見ていてくれ、ガイア。俺は必ず成し遂げてみせるから」
かき抱いた少女が腕の中で光の粒子となって散っていく様――そのあまりに奇異な現象を映す瞳は虚無で支配されていた。その不可思議な現象に何の感慨も抱いていないのか、その双眸はどこまでも虚ろだった。
少年は遥か遠くに君臨する天に向かって逝く光に手を伸ばして、力強く握りしめた。
「奴らに復讐を――全員地に墜としてやる」
昏い怨念を抱いて、少年は回復した身体を立ち上がらせる。
愛しい人から貰った物――白銀の剣を握りしめ、地面に落ちていた眼帯を拾い上げて幽玄なる光を発する左眼を覆い隠す。
それから後ろを振り返って、愛した人と共に過ごした場所に別れを告げた。
「さよならだ……ガイア」
一瞬だけ少年は温かで穏やかな表情を見せる。
しかしそれは次の瞬間消え去って、後から顔を出したのは赫怒と怨嗟に満ちた表情であった。
「まずはここから出るとしようか……」
暗闇を往く少年の足取りに迷いはない。
一切合切の闇を喰らい尽くす光となって突き進んでいく。
――この日、一人の復讐者が誕生した。
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