八話

 ベーゼ大森林地帯――それは魔物の楽園。

 千年以上も他種族による侵略を許していない、魔境たるこの地は彼らにとって安息の地である。

 故にこそ侵略者たる夜光たちを排除しようとするのは当然と言えた。


「次、来ましたよ!」


 カティアの警告と同時に木々の隙間から飛び出してきたのはE位階の魔物である小鬼ゴブリンだ。

 その体躯は小さく、人の背丈の半分ほどしかない。矮小ともいえる存在――けれども侮ってはいけない相手である。

 小鬼がその真価を発揮するのは群れた時だ。わらわらと集団で獲物を囲み、追い詰めて嬲り殺しにする。小さいが故にこちらの攻撃は当たりにくく、加えて数の暴力となれば鍛え上げられた精兵ですら敗北してしまうほどだ。

 

 今も――生い茂る木々から出てきたのは一体だけではない。五、十、二十とその数は増える一方だ。

 並みの冒険者であったなら対処出来なかったであろう。安寧を貪り弱兵と化しているエルミナ西方の兵でもどうしようもなかっただろう。

 しかし、ここに居るのは王都――一国家の首都の防衛を任ぜられし強兵である。経験は不足なれど練度は十分。

 加えて――彼らを指揮しているのは広大なエルミナ王国において、たった四人しか存在しない大将軍の一人なのだ。この程度の魔物に後れを取る無様などあり得はしない。


「はッ!」


 気迫一閃。

 クロード大将軍の手に握られた剣が振るわれた――たったそれだけで数十匹の小鬼が宙を舞った。

 返す刃を放てば、信じがたいことに行った。

 

「凄い……!」


 夜光は思わず感嘆の声を上げた。

 書物を通して知ってはいたが、実際に目の当たりにするとやはり驚嘆を隠せないものだ。


 神器――〝王剣〟クラレント

 今よりおよそ千二百年も昔のこと。〝名を禁じられし王〟の手によって生み出されたのが神器だ。

 それは二百年前の〝解放戦争〟の際にほとんどが自壊したが、一部はそのまま残った。

 その内の一つが〝王剣〟であり、エルミナ王国における護国の剣である。


「露払いは我らに任されよ。勇者殿らは修練を」


 汗一つかかずにいるクロード大将軍が言えば、兵士たちが追従する。

 そんな頼もしい面々を背に、夜光たちは五体の魔物と対峙していた。


『オォオオオオオ――』


 雄たけびを上げるのは四体の中鬼オークである。

 二足歩行を行い、木を削って作り上げたこん棒を振り回すその姿は悪鬼と呼ぶに相応しい。

 加えて頭部は豚と猪を混ぜ合わせたような醜悪なもので、見ているだけで不愉快な気持ちにさせられる。

 位階はD。冒険者が正式に組合ギルドに認められる際に行われる試験で戦う程度の魔物である。

 

 これらだけなら大した危険はないといえよう。けれど最後の一体、中鬼の後ろに陣取る巨躯は油断を許さない相手だった。


『ヒ、ヒトゾク……ク、クウ!』


 片言ではあるが、人族の共通言語たるアインス語を口にする魔物。その名は大鬼オーガ

 小鬼や中鬼を従える知性を持つC位階の魔物。

 よく駆け出しの冒険者がその太鼓腹を見て肥えた中鬼と侮って殺されるのは、この世界では有名な話らしい。


 という敵の情報を夜光が語れば、勇たちは油断なく戦闘態勢を整えた。

 勇は王国から借り受けた直剣を抜き放ち、新は短剣を二振り取り出す。陽和も細剣を構えていた。

 鍛えたわけでもないのに彼らが武器を持てる理由は一つだけ。体内に保有する絶大な魔力で身体能力を強化しているためだ。

 構えがさまになっているのはこの世界に来てから毎日受けていた訓練の賜物である。


「皆さま方には中鬼をそれぞれ一体ずつ相手してもらいます。大鬼は私が押さえますから落ち着いて今までの訓練を思い出してください」


 そう告げるカティアの姿は、その内からあふれ出る翠色の魔力によって輝き、美しくも凛々しいと夜光の眼に映った。

 

 そして勇者の面々もまた魔力を高めていた。

 彼らに余分な気負いは見られない。人生において初めて遭遇した魔物への恐怖はあれど、それを上回る安心感があるためだ。

 自分たちが危険な目にあってもカティアがいる。彼女でも対処できないのならばこの国最強の男が出張るだけ。そう理解しているからこそ気負いなく魔物と対峙できるのだ。


「……行くぞっ!」


 勇の号令を合図に新と陽和が動き出す。

 中鬼に向かって駆けながら固有魔法の詠唱を行う。


「我は影、見えざる闇なり!」


 新の固有魔法〝絶影〟エレボスが発動した――瞬間、彼の姿が消えた。

 まるで狐に化かされたが如く、眼前から一瞬にして消失したのだ。


『グオッ!?』

「残念、俺はこっちさ」


 中鬼が突如として消えた新に驚き、彼が居た場所に向かって棍棒を振り回すも空を切るだけ。

 その隙に背後に回り込んでいた新が跳躍、中鬼の背を二刀で切りつけた。

 圧倒的な手数、乱舞に中鬼の身体が耐えきれるはずもなく、至る所に切り傷が生まれ鮮血が吹き荒れた。


『ゴァアアア!!』


 新が固有魔法を用いて巧みに翻弄している時、陽和もまた一体の中鬼と戦っていた。


「我は天、英雄の血流れし者なり」


 固有魔法〝天剣〟アイテール――それは光の加護である。

 陽和が細剣を持たない左手を振るえば、虚空に光が生まれた。それらは集い固まりて無数の剣を形取る。

 

「お願い、行って!」


 陽和が手を振り下ろせば、宙に浮かんでいた無数の光の剣が中鬼に殺到。瞬く間に串刺しにしてしまう。


『ウガァアアアアッ!』


 叫びとも悲鳴ともわからぬ声を発しながら中鬼が地に倒れ伏す。圧倒的な数による暴力に個は抗えなかったのだ。


「我は光、大いなる輝きなり!」


 続いて聞こえてきた詠唱は勇によるものだった。

 固有魔法〝光輝〟ゼウス。それは神による祝福である。

 勇の意志に魔力が応え、生み出されるのは七つの魔法。

 四大元素と呼ばれる基本的な魔法――火、水、雷、風に加え、習得困難な土、光、闇の三種を合わせた七つが生み出された。

 

 これは本来ならばありえないことだ。通常、どのように優れた魔法使いであっても精々三種までしか同時使用できない。それ以上は魔力が足りないし、何より魔法を構築する脳の容量を超えてしまうからだ。

 魔法を発動する際には想像が必須だ。脳裏にこうしたい、ああしたいと思い描き、その上で魔力を操作することによってのみ魔法は発動する。

 

 その理論ならば七つの魔法を同時に使用している光景を想像すれば発動できるだろうと、初めは夜光も思っていたが、すぐにそれが無理であることを悟った。

 何故なら、複数の魔法を発動する光景というものは――混迷としすぎているからだ。

 魔法を色と例えればその光景はさしずめあらゆる色を混ぜ込んだ虹色といえよう。

 それではごちゃごちゃしすぎていて明確に描けない。魔法は明確な想像でないと発動しない。

 故に複数の魔法の同時使用は困難を極めるのだ。


 しかし勇の固有魔法はその常識を覆す。あらゆる魔法を使うことができ、しかもそれらを同時に使用することができるのだ。

 七つの属性魔法による同時攻撃は凶悪の一言であった。


『グギャ!?』


 中鬼に許されたのはたったそれだけ。反撃も防御も逃走も出来はしなかった。

 炎に焼かれ、氷に凍てつき、雷に穿たれ、風に切り裂かれる。

 土に動きを止められ、光に視界を奪われ、闇に侵食され――その体は最終的に爆散した。 

 勇が放った夥しい量の魔力に耐え切れなかったのだ。その末路は無惨なものといえよう。


 そして――最後の中鬼の前に一人の少女が立ちふさがる。仲間があっさりとやられたが故に逃げようとした中鬼であったが、その前に何も持たない明日香が立ちふさがったことで怒りの声を上げた。


『ウガァアアアッ!!』


 大気を震わせる咆哮――されど直撃を受けた明日香は微塵も揺るがなかった。

 これが勇や新、陽和であれば揺らいだであろう。しかし、元の世界で曲がりなりにも武の道を歩んできた明日香は微動だにしなかった。


「我は鋼、一切合切を切り払う剣なり」


 静かに紡がれた詠唱が顕現するは固有魔法〝剣神〟カーリー

 明日香の両腰に二振りの刀――日本刀が現れる。彼女が二刀をゆっくりと抜き放てば鋭利さを感じさせる銀色の輝きを発する刀身が大気に触れた。

 

「行こうか――〝髭切〟〝膝丸〟」


 明日香の言葉に夜光は息を呑んだ。それはありえないと思ったからである。

〝髭切〟と〝膝丸〟はどちらも元の世界にある刀だ。それがこの世界にあるはずもない。

 しかし――明日香の固有魔法ならばありえると即座に考えを改めた。


 彼女の固有魔法である〝剣神〟は、所持者がこれまで見たあらゆる剣と剣技を再現することができるというものだ。すなわち明日香が過去に元の世界でその二振りを見たことがあるのならば――再現は可能だろう。


『ガァアアアアッ!』


 明日香が放つ静かな、されど苛烈な闘志を悟ったのか中鬼が突進した。

 眼前より迫りくる暴力の塊――しかし、明日香は気圧されずゆっくりと二刀を構えた。

 それは元の世界で明日香が得意としていた構え。剣道の世界ではあまり見られない二天一流の構えであった。

 そして中鬼がある一定の距離――一足一刀の間合いまで迫った時。

 明日香は動いた。


「――フッ!」


 鋭い声が聞こえた――夜光がそう知覚した時にはすべてが終わっていた。

 いつの間にか明日香と中鬼はすれ違っており、彼女は静かに佇んでいる。

 対して中鬼は戸惑いの声を上げ――次の瞬間にはその体はバラバラになった。

 四肢が切断され、首が鈍い音を奏でて地面に転がり落ちる。遅れて鮮血が辺り一面を染め上げた。


 この光景に夜光のみならず勇たちも、カティアや遠目でこちらを伺っていた兵士たちさえも戦慄した。

 明らかに他の勇者とは隔絶した武力、武威に畏怖を感じたのだ。


(やっぱり明日香は強いな)


 単純な武力だけでもそうだが、それ以前に命の奪い合いに躊躇していない。元の世界でも剣道の立ち合い時にことから薄々察してはいたが……やはり彼女には武人としての資質があると夜光は思う。

 生まれる時代を間違えたと実の父にして師範たる存在にも言わしめた明日香の本領発揮であった。


 そして――最後に残ったのは大鬼である。

 

『ニ、ニゲ……!』

「させませんよ」


 大鬼は戦況の不利を悟り、逃げようとしていたが――それは許されなかった。

 対するカティアが固有魔法を用いて大鬼の周囲に結界を展開し、内部に閉じ込めていたからである。


『オォオオオオオ!』


 大鬼は雄たけびを上げて手にする棍棒で何度も結界を叩くも、全て弾かれてしまう。結界はびくともせずただ緑色の魔力光を輝かせているだけだ。


「これがカティアさんの固有魔法――〝不動金剛〟ミネルヴァか」


 カティア・サージュ・ド・メールが持つ固有魔法〝不動金剛〟。

 それは魔力による強力な結界構築である。

 その強度は計り知れず、かつて飛空艇の主砲さえ防いで見せたという。

 飛空艇の主砲は要塞すら破壊する威力だと言われている。それを防いだとすればカティアの作る結界は恐るべき強度を誇っているということだ。


「勇者の皆さま、私が合図を出したら結界を解除致します。その一瞬で勝負を決めてください」

「分かりました!新、僕と一緒に行くぞ。陽和さんはそこで見てて」

「一瀬さん!?」

「勇、お前ってやつは……まあ、今はいい。合わせるぞ」


 大鬼に向かっていく勇に驚いた声を出す陽和、呆れ交じりに返事をしながらも走り出す新。

 連携がまったくといっていいほど取れていないが――、


(それでも押し切れるはずだ)


 大鬼はカティアの結界に囚われたことで動揺と興奮に包まれ、その動きは精彩を欠いている。

 対して勇たちは初の実戦で上手く敵を倒せたことで戦意が高揚しており、士気が高い状態だ。

 加えて彼らの武力は非常に高い。故に何の問題もないと夜光は判断した。


「――今です、ユウ様!」


 勇と新が大鬼に迫った時、カティアが合図と共に結界を解除した。

 あれほど強固であった結界があっさりと消えたことで大鬼が戸惑う。それは明確な隙であった。


「オォオオオオオッ!!」

「――――ッ!」


 正面から勇が七属性魔法を従えて切りかかり、背後からは姿気配を完璧に消した新が襲い掛かる。

 必殺の攻撃――勝利は確実かと思えたが。


『ウガァアアアア!!』

「っ!?」

「何っ!?」


 野生の本能というやつか、はたまた新の殺気が漏れていたのか。

 大鬼は背後から迫る新に振り向きながら棍棒を振るった。


「ガッ!?」


 姿を消すことはできてもそこにいるという事実は変わらない。

 新は棍棒による強烈な一撃を受けて吹き飛び、一本の大樹に激突して血反吐を吐いた。

 親友がやられたことに動揺する勇。そのせいで魔力操作がおろそかになり、発動中だった魔法がすべて消えてしまう。

 しかも勇はかなりの勢いをつけて駆けており、急に止まることができなかった。

 故に何の強化も施されていない剣での一撃だけが大鬼に当たった。


『グォ?』

「え――そんな……」


 気迫を失った一撃など大した効果は生み出せない。

 勇の剣は大鬼の左腕を浅く切りつけただけに留まってしまい、勇自身は硬直してしまう。

 

 ――それは致命的な隙であった。


『コ、コロス!!』


 片言で殺意を表明しながら大鬼が眼下の勇に向かって棍棒を振り下ろす。

 岩をも粉砕する一撃、脳天に直撃してしまえば魔力によって強化されているとはいえ無事では済まないだろう。

 思わず駆け出した夜光や魔法を発動しようとするカティアだったが――間に合わない!



「気を抜きすぎだよ、勇くん」


  

 ――刹那、その言葉と共に一陣の風が吹いた。

 あまりにも速すぎて、だからこそ夜光の眼には明日香が突然勇と大鬼の間に出現したように映った。

 明日香の二刀と大鬼の棍棒が激突したことで突風が吹き荒れ、次いで激烈な音が響き渡る。

 これだけでも驚きだが、次いで起こった出来事に夜光は瞠目した。


「アスカ殿の言う通りだ。戦場で呆けるなど許されぬぞ」


 古めかしい言葉と共に、大鬼の心臓部から銀が生えてくる。

 大鬼の背後を見やれば、そこには全身に風を纏ったクロード大将軍が立っていた。


『ガァア……』


 彼によって心臓を剣で貫かれた大鬼が弱々しい声を上げて――ゆっくりと倒れていく。

 攻撃を防いでいた明日香は勇と共に後退すれば、大鬼がドサリと地面に伏せた。


「今のは……」

「……クロード大将軍の固有魔法〝風神の加護〟アネモイです」


 唖然とする夜光の疑問に答えたのはカティアであった。その言葉を受けた夜光は王城でカティアから聞いたクロード大将軍のことを思い出す。


(〝風神の加護〟……確か風魔法の強化だったか)


 クロード大将軍の固有魔法は決して派手なものではない。元来得意とする風魔法を強化するといった、カティアや勇たちと比べると目劣りしてしまうものだ。

 けれども実戦での汎用性は眼を瞠るものがある。

 強化された風魔法で飛来する矢や魔法を逸らしたり、時には竜巻すら生み出して攻防に使用する。

 そして先ほどのように自身に風を纏わせることで驚異的な加速を行うことだってできるのだ。


(地味だけど有用な固有魔法だ。……けど、それよりも凄いのは)


 そのクロード大将軍すら超える速度で戦闘に割って入った明日香の存在だ。

 一体どのような技なのか……中鬼を一撃で仕留めたことといい、やはり明日香は戦闘においては他の勇者より数歩抜きんでていると夜光は再認識した。


「た、助かったよ明日香」

「気にしなくていいよ、友達だもん。それより新くんを助けにいかなくちゃ」


 戦闘時は鬼神の如き覇気を放っていた明日香だったが、刀を鞘に納めた今は平時の元気溌剌とした雰囲気に戻っていた。


「カティアさん、新のところにいきましょう」

「ええ、もちろんです」


 そんな彼女の変化に驚きながらも夜光はカティアを促して新の元へと向かった。

 勇たちと一緒に向かえば、そこでは大樹に背中を預け兵士たちに介抱されている新の姿があった。


「新、無事か!?」

「新くん!」

「新さん!」


 頭から血を流す新の姿に心配そうな表情を浮かべる勇者たち。

 夜光もまた心配からカティアに尋ねる。


「カティアさん、新は大丈夫なんでしょうか」

「ちょっと待っていてください」


 するとカティアは新の傍に屈みこみ、慎重に彼の容態を診始めた。

 

「命に別状はありません。ただ額に切り傷があるのと……肋骨が折れています」

「っ!?だ、大丈夫なんですかそれ」

「このままでは不味いです。けれど……大丈夫です」

「何が大丈夫――!?」


 憤る勇の言葉が途切れる。理由は明白で、カティアが新にむけて両手を突き出し魔力を放ったからであった。

 優しさを感じる翠の魔力光がカティアの両手から生まれ、それは新の身体を覆っていく。

 するとみるみるうちに新の外傷が治っていった。頭――額からの血は止まり切り傷すらも消え、他の部位に生じていた傷さえも消えていく。

 折れていた肋骨も治ったのか、荒々しかった新の息が正常なものへと戻っていった。


「これは……」

「回復魔法です。光と風の複合魔法ですよ」


 回復魔法――それを使用できるということは、光と風の二種類の魔法を同時に使用できるということである。これは一部の優れた魔法使いにしかできない芸当であり、カティアの優秀さを物語ることであった。


「……う、勇……?」

「新、目覚めたか!」

「良かった~、もうっ、心配したんだからね、新くん!」

「良かったです、新さん……」


 目を覚ました新を見て勇たちが喜びの声を上げる。

 周囲にいた兵士たちも安堵の色を顔に浮かべ、カティアもホッとしたのか笑みを浮かべた。

 武骨なクロード大将軍も僅かではあるが笑みを見せ、夜光もまた喜色を浮かべていた。


「無事に目覚めてくれてよかったよ、新」

「夜光まで……悪かったよ、心配かけちまったみたいだな」


 もう回復しきったのか、新は普通に立ち上がって見せた。

 その姿を見てカティアが口を開いた。


「回復したとはいえ、すぐに動くのは危険です。他の皆さまも疲労していることでしょう。今日のところはこれまでにして拠点に戻りませんか?」

「……カティア殿の仰る通りだな。皆、拠点に帰還するぞ」


 カティアの提案に同意したクロード大将軍が命じたことで帰還が決定する。

 こうして実践訓練一日目にして初戦闘は幕を閉じたのだった。

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