第75話 答え合わせ

私はトトの家に帰った。

トトはわたしを見ると嬉しそうに走ってきた。

「良かった……。茜、もう戻ってこないかと……」

私は沈黙を貫いた。なんて話しかけていいか分からない。

トトはそんな私を見て焦ったのか、一つ提案をした。

「ねえ、湖の周りを散歩しない?」


私たちは特に話すこともなく、湖の畔を歩いた。

「茜、上奏権獲得試練はどうだったの?

王様には会えた?」

「一応は……」

「良かった。怪我の具合はどう?」

「別に……」

私はトトの方を見ることができなかった。

私は立ち止まる。トトが驚いたように振り返った。

「茜、どうしたの?」

「ねえ」

口に出しずらい。でも言わなければ。

「トトが、この国を支配しているんでしょ?」


トトは、ぱちぱちとまばたきをした。

「どういう意味?」

「そのまま。トトが王様に指示を出していたんでしょ?」

「………なんで?」

「お城の中で、本を見つけた。そこには、神に干渉できる人は神聖な動物に変わると書いてあった。

玉座の間、その本の表紙にも、蛇が描かれていた。玉座の間に描かれていた蛇は、王様よりも上の位置にあった。

玉座の間は玉座から上の位置のデザインは質素なものだった。

玉座も高い位置にあったし、権力を示すために王様よりも上の位置にいるものがないようにしていたんだと思う。

でもその蛇だけは、玉座よりも高い場所にいた。だから、蛇というのはこの国にとって大切な、上位的な存在なのだと考えた。国民の中に蛇に変わっている人も、一人もいなかったからね。トト、あなたを除いて」

「なるほど……。だから私を疑ったのね。

でもそれは勘違いだよ。私以外が蛇になっていなかったのも、偶然だよ」

「それだけじゃない。

そもそもおかしかったんだ。トト、あなたは私を最初に見つけた時、私になんて言ったか覚えてる?」

トトはゆっくり首を横にふった。

「覚えているわけがないよ。随分と昔のことだから」

トトは困ったように笑った。

「トトはね、私の安否を確認した後、『ここはカラ国』って言ったんだよ。

私は気が動転していて、特に気にしていなかったけれど、その言葉っておかしいよ。

だって、湖で溺れている人を見たら、カラ国の人が溺れていると思うでしょう?

でもあなたは、この国の名前を教えた。

まるで、私が別の世界から来たことが分かっていたみたいに」

「もしかしたら、溺れたショックで、この国のことを忘れているかも知れないと思って」

私はトトの目を見た。

「でもトト、私が日本から来たって言ったときに、すんなり信じたよね。

他の人に話したら、皆しばらく理解しなかったよ。日本という国の発音もかたことで、上手く言えていなかった」

「発音は、偶然だよ」

「それに、私が流されてきたかと質問をしたときに、落ちてきたって即答したよね?

でも変だよ。水に落ちる音がしてから湖に来たのではなく、落ちる瞬間を見ていたとするならば、トトはあらかじめ外に出て、私が落ちてくるまで待機していなければならない。なにか外に用事があって出てきたという可能性もあるけど、私が湖に落ちてから私を助けてくれた早さから考えて、トトは元々湖の近くにいたんだよね?トトの近くに、用具がなにもなかったから湖に用事があったとは考えにくい。

私が上から落ちてくるのを待っていたんでしょ?」

「……」

トトは表情を固くしたまま、何も答えなかった。

「もう一度聞く。トトが神様と繋がっていて、この国を支配している、天の使い、『天使』なんだよね?」

トトは微笑し、私に向かって歩いた。

「正解」

瞬間、トトが目の前から消える。

本能的に後ろに跳び、顔をあげると、爪を鋭く変えたトトが立っていた。

「一回で楽にしてあげようと思ったのに」

残念そうに、トトは目を伏せる。

私はトトを見つめた。

「あなたはレレさんのかたき

でも私を助けた恩人でもある。

だから……今日、ここで決着をつける!」

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