第74話 振り返って
私は、いつもレレさんと話していた木の近くに穴を掘った。
深い穴が掘れたら、そこにレレさんを埋めた。
作業をしている間は、少し気が紛れた。
でも、今はやることがなくなってしまった。
私は泣き腫らした目をこする。
ふらふらとその場を離れたが、振り向けばいつもと変わらずにレレさんがいるような気がして。
でもいなくて。涙がまた出てきた。
トトの家には帰りたくなかった。
私はよろけながら、吸い込まれるように、お城へ向かった。
門を目の前にして、どうしてここに来たんだろうと思った。
広場で急に針が飛び出した時の衝撃が、変に懐かしく感じる。
私は、思い出を探しに来たの……?
お城の中に入った。
控えの間。食堂。大広間。
順に回っていった。
ほとんど焼けてしまっていたが、私は自分を過去に投影することができて、少し気持ちが楽になった。
礼拝堂に入ろうとしたとき、床が崩れた。火事で脆くなっていたようだった。
私はそのまま、長い間落ちていた。
体を所々ぶつけて痛かったけれど、どうでもよかった。
私は木の床に、尻をうちつけた。
紙と埃が宙を舞う。
「ここは……?」
古い書物がたくさん本棚にあった。
一通り見ると、その中に、極めて古い本があった。
表紙には蛇が描かれている。私はその本を破れないように、慎重に開いた。
既に破れていて読めない部分もあったが、ほとんどは読むことができた。
『古来より、神在り。其れ、森羅万象を司るも□なり。人これ□従う。干渉すること、甚だ難し。
神に選ば□しものの存在在り。その姿清廉潔白、尊き生□物によく変化す。その者、神の声聞き、神と人とを媒介し、國を治□るもの
黄ばんだ薄い紙には、それしか書いてなかった。だが、重要な手がかりだった。
テテが言っていた国のトップは、この本に書かれている人だ。
日本で言われている「天使」のようなものなのだろうか。
とにかく、その人を探さなくては。
私はお城の一部一部に足をかけて登り、なんとか大広間まで戻った。
しばらく、そこでぼーっとして過ごした。
なにもせずにいると、大広間の試練が終わった後を思い出す。
あのときはちょっと焦ったな。次の指示があるまで、皆でお話ししたんだよね。その時に私の本名もバレちゃって。
皆戸惑っていてけど、私の話を信じてくれて嬉しかったな。
当時の様子をしみじみと思い出した。
衝撃で、私の体の機能が一瞬止まった。
「そうだよ……。普通は……」
私は思考を巡らす。
「そうだ……。今思えばあれは変だった……」
私は駆け出した。お城の出口へと向かう。
そうか。分かった。
あの人が、『天使』だ。
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