第66話 隙

私は長い廊下を走った。何度か足がもつれて転びそうになったが、手をついて体を支え、足だけは止めないようにした。

後ろでは城の家具や装飾が壊される音がした。テテは常に殺す気で攻撃してくる。心が緊張で萎縮する。

逃げる方向、自分の視界、進む道筋。

自分の選択に間違いがないように、極限まで気をはりつめた。

突然左腕に痛みが走る。右手で抑えると、手には収まりきらない血の量が流れていた。

悲鳴をあげたかった。私は歯を食い縛って痛みを押し殺した。

手探りで傷口を見つける。それは爪痕の形をしているように感じられた。

テテにやられたのか。見えなかった……。

今、テテはどこに?

テテの位置を把握するために後ろに振り向いた。


いない。

上から何かが降ってきた。慌てて後ろへ下がる。テテが私の前に立ちふさがった。その姿が微かにぼやける。

頭がくらくらとする。出血のせいだ。

テテが前にいるから逃げることができない。後ろへ逃げても、振り返った瞬間に殺される。

戦うしかない。


「覚悟は決まったー?」

私はテテを睨み付けた。

蹴りよりも拳を使った打撃の方が、早く動けて自身の隙も生まれにくいと、レレさんが教えてくれた。

テテの隙がある場所を探して攻撃するんだ。

テテの隙……。テテの……。

あるわけがない!あったとしても私には見つけられない。

私が攻撃したときに、カウンターを喰らう未来しか見えなかった。

場の空気ははりつめ、一手もミスをできないことが伝わってくる。

私は冷や汗をかきながら、ずっと動けない状態だった。

「あれ?何もしないの?」

テテがからかうように言った。

「あー、そっか。

攻撃できないのか!」

テテは私を笑いながら、床を蹴った。

私との距離は一瞬のうちに近づいた。

テテは私の顔に右手で攻撃してきた。

テテの攻撃が私に届くというとき、私の目線は下に動いた。

見つけた、右脇腹に隙!

攻撃をするときになって、やっとテテに隙が生まれた。

私はしゃがんで攻撃を交わし、テテの右脇腹に思い切り拳をうちこんだ。

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