第65話 試練の目的

目を開けた。

意識が戻った瞬間、驚愕する。

私は、この状況で、眠っていたのか!

どのくらいの間眠っていたのだろう。

体力は、寝る前と比べて劇的に回復しているように感じた。

筋肉の疲労も大分ましになっている。

私は状況を確認するために立ち上がった。

「やっと起きたねー」

反射的に声のした方を振り向いた。

そこにはテテがいた。椅子に座り、ティーカップで何かを飲んでいる。

「紅茶だよ。飲む?」

私は首を横に振った。テテはクスリと笑った。

「毒なんか入ってないのに」

「信じられると思う?」

テテは微笑むとティーカップを置き、立ち上がった。

「じゃあ、始めようか」

「その前に教えてほしいことがあるの」

「ん?なに?」

「なんで化け物を使った?」

「どういう意味かな?」

テテの表情は変わらない。それがなんだか不気味だった。テテの雰囲気は、最初に見たときとは全く違う気がした。

「化け物を使えば、多くの人が死ぬことは、誰にでも分かる。全滅もあり得た。この試練は、試練を勝ち抜いた人が王様に上奏する権利を得るものだけど、全員死んだら、意味がないでしょ」

テテは目を閉じて、ゆっくりと開けた。

「意味は、ある。

この試練は、最後には、全員死ぬことになっているんだよ」

「どういうこと?」

私は顔をしかめた。

「この国は、『理想的』でなくてはいけない。

そうでなくてはならない。

だから、国民はなにも不自由なく、暮らさなきゃダメなんだよ。

不満があったらダメなの。

王様に上奏するような人は、危険分子。不安の種は摘んでおかないと」

「なにそれ?参加者はみんな信用して参加しているのに。

そんな身勝手な理由で、ララは殺されたの?

息をするように殺された一人一人に、大切な人がいて、これからの人生があったんだよ?

それを分かってるの?」

声が震える。意識的に呼吸をしないと、怒りで過呼吸になりそうだった。

「分かってるさ。

それでも、私は……」

テテはティーカップを手に持ち、じっとみていた。

次の瞬間、テテはティーカップを思い切り地面に投げ捨てる。

音を立ててカップが割れ、紅茶が宙を舞った。

「私は、王様の側近、テテ!

さぁて、君には死んでもらうよ!」

試練の説明をしたときのように、明るい声でテテは叫んだ。

その声が、空元気に感じたような……。

そんなことに気を配る余裕は、すぐに失くなった。

テテの攻撃は一度でも喰らうと、致命傷になりかねない。

私は広い場所に出ようと、部屋を飛び出した。

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