第43話 王座の間にて

その部屋はとにかくきらびやかだった。

床には赤い絨毯が敷かれ、天井にはシャンデリアがある。天井は玉座に向かうほど高くなるように傾いていた。窓ガラスは赤、青、黄色などで彩られたステンドガラスで、一番高い位置に蛇が描かれている。

そして、部屋の中央奥、階段を挟んで、高い位置に置かれている、金で縁どられた豪奢な椅子に1人の男が腰かけていた。

その男はまだ年若い。椅子に片ひじをつき、退屈そうに座っている。

しばらくして大きな部屋の扉が開き、1人の女が部屋に入った。女は片膝をつく。

「御呼びにより参上しました」

「忙しいのにすまないね、テテ」

テテに声をかけたのはヲヲ。この国の王だ。

「早速だが、聞きたいことがある」

「なんなりと」

「例の試練の進捗はどうなっている?」

「参加人数964人のうち、517人が脱落。残りの447人は第3の試練に取り組んでおります。

例年と同様、銃や毒を使用した試練となっております」

「なるほど……」

ヲヲは口を閉じて、なにかを考え始めた。

テテを微動もせずに、続きの言葉を待つ。

「いつもより状況が悪いな」

テテは体を少し強ばらせた。

「去年は、この時点で200人くらいには絞れていただろう?

なぜ今年はその倍の人数が残っている?」

「も、申し訳ございません。今年はなぜか知恵のある者が多く参加しておりまして……」

「それは理由になっていない。知恵あるものが参加しているのならば、それに対応した試練を用意するのが君の役目だ。

確かに、この城には少数しか働いていないが……。だからといって、仕掛けに頼りきるのは感心できることではないな」

テテの額に冷や汗がつたった。

「それに……、あの方も催促しておられる」

ビクッ、とテテは体を震わせる。

「今年は17才の体でこの国に来たものがいる。例年にはないことだ。

そして、小さな綻びから、全てが崩れるように、世の中はできている」

テテの顔は青ざめていた。

「あの方は憂えておいでだ。

この国が『理想的』であるためには、少しの綻びも許されない」

分かるな?とヲヲは問いかける。

テテは声を震わせながら肯定した。

「なにをしても構わない。

試練を無事に遂行してくれ」

ヲヲは優しく声をかける。

しかし、その目は笑っていない。

「しょ、承知致しました。

このテテ、命に代えましても任務を遂行致します」

ヲヲは口角を少し上げた。

「頼んだよ」



テテは王座の間を出て、管理室に向かった。

その足は自然と速くなる。

「まずいまずいまずいまずい」

テテは爪を噛む。

「王を、あの御方を、失望させてしまった。このままじゃ消される!

どうにか、どうにかして……」

管理室に着き、テテは椅子に座る。

管理室の中には、様々な機械が置いてあった。

その中で、部屋の隅にある、赤いボタンを見る。

「まだ試作品だが、仕方がない……!」

テテはそのボタンを勢いよく押した。

ビーっと低いサイレン音が鳴る。

「動くかどうかは賭けだが……、これさえ出せば、一般人が敵うものではない!

そして、私のために、国のために、どうか……死んでくれ!」

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