第42話 大広間

大広間の扉の前に立つ。

とても大きな扉だ。両手で開ける形式のようで、結構重い。

私は両手で精一杯押した。


大広間はとても広かったが、簡素な造りだった。

床や壁はあまり主張のないベージュなどの薄い色で、天井にもシャンデリアのように目立つものはなかった。

中には今までの試練とは比べ物にならないくらい多くの人がいた。

扉が勝手に閉まる。


「はい! これで最後の参加者が揃ったね! 今からルール説明をするよ!」

テテの声が聞こえた。

参加者達は、既に慣れてきたようで、動揺している人はいなかった。

私は大広間を見回す。テテはこれで全ての参加者だと言った。

少なすぎる。それが私が持った、一番最初の感想だった。

まだ参加者はたくさんいる。

だが、最初にお城の前で見た参加者の数は、もっと多かった。

この短時間で、そんなにも多くの人が死んでしまったのか……。

私はショックを隠しきれなかった。


「さてさて、ルールはね……1つだけ!

この部屋で60分生き残ること! 以上!

では、開始!」

瞬間、何もなかった壁からいくつも銃が出てきた。

激しい音を撒き散らしながら、銃弾が次々と発射される。

私の前の人が倒れた。運悪く、胸に弾が当たってしまったらしい。

うめき声や悲鳴をあげながら、ジョークのような速さで人が倒れていく。


次は私の番だ。


本能でそう悟った。

私は反射的に倒れている人を盾にした。

銃口が私の方を向く。

私が盾にした人を通してでも、その衝撃が伝わってきた。

罪悪感がないわけではない。だが、私が助かるためにできる、唯一の方法だった。


私は盾となる次の死体を探した。今私のことを守ってくれている人の体は、そろそろ限界を迎えているからだ。

私は銃口が自分に向いてないことを確認した後、近くにある死体で自分の体を守った。

きれいごとなんか言ってられない。私はこれまでの試練で、そのことを嫌でも学んだ。

おとぎ話のように、自分だけが助かるなんて奇跡はない。撃たれたら、死ぬのだ。

対面を取り繕っていては、生きることはできない。

私は死体を探し続けた。

他の人たちも同じようにして身を守っている。

人が死んでいく速さは、一定になってきた。

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