第13話 観察

私は用事がないときに町へ行くようになった。

カラ国の住民の様子を観察するのだ。

時には人の前にわざと物を落としたりして反応をうかがった。

しかし今までとあまり反応は変わらず、仮説を否定する出来事は起こらなかったが、肯定できるほどの決定的な何かも起こらなかった。


私は王様についても尋ねた。

この国の一番の権力者は王様だ。

なにか知っている可能性が高い。

しかし、住民達は口々に王様のことを誉めるばかりで有益な情報は一つもなかった。

私は不自然だと感じた。

一人くらい、王様のことをよく思わない人がいてもおかしくないのに、誰一人として悪口を言う人はいなかった。それどころか、王様のことをべた褒めするのだ。

印象操作をされているのかもしれないな。

そう思う程、明らかに不自然だった。



何日も町へ出向いたが、毎日あまり状況は変わらなかった。

そもそも、仮説が正しければ、住民達は社会を上手く回し続けるための歯車のようなものだ。決められた行動をし続けているのだから、なにか大きな動きがあるわけがない。



ここ数日間、町を観察し続けて、仮説通りの行動を住民がしていると感じていた。

しかし、それでも、思い込みだといわれてしまえば反論できない状態だった。

私は決定打が欲しかった。


迷った末に、私はある人物に会いにいくことにした。

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