第12話 仮説

トトの家が燃え尽きた後、私達は近くにある小屋に向かった。小屋といってもかなりの大きさで、普通の家より少し小さいくらいだった。

火事のように、家を突然失った時の保険で、カラ国では最初から家を2つ造っておくらしい。


新しい家に着いた後も、頭の中にはあの考えが浮かんでいた。

カラ国の住民は感情がないのではないか、という仮説だ。

この世界に来てから、色々な人を見てきた。

どの人にもこの仮説は当てはまるような気がした。迷子や火事の時ほど大きくはないが、日頃から少しずつ違和感を感じていたから。

しかし、もし勘違いなら?

こんなに失礼な勘違いはない。

確証がないのだ。今の根拠は私の感じた違和感のみ。つまり直感のようなものだ。

そんなに不安定な根拠でなぜこんなにも悩めるのかと自分でも疑問に思う。

だが、心の真ん中で確信しているのだ。

理屈とは無関係に、自分の考えは正しいといっている自分がいるのだ。




「茜、何か悩んでいるみたいだけど大丈夫?

私で良かったら気軽に相談してね。」

「うん、ありがとう…」

トトは考え込んでいる私を心配してくれた。

一度トトに相談してみようかとも思った。

しかし、やはり確証がない。

トトだってカラ国の住民だ。

確証もないのに、この仮説を言って、いたずらにトトを傷つけたくはない。


私は何日も考え続けた。

仮にこの仮説が正しかったとして、自分に何が出来るのか分からない。

だが、そんなことは関係なしに気になるのだ。

そして私は自分が思っていた以上に気になったことを放っておけない質だった。


私は行動をするしかないと思った。考えていても埒が明かない。

私はこの仮説を証明していくことにした。

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