第10話 私の過去

家に帰るとトトのお母さんが安心したように息をついた。

「ごめんね、私が買い物を頼んだばかりに。

茜に甘え過ぎちゃったかも」

「いや、違うの。遅くなったのには訳があって……」

私は迷子の男の子について具体的に話した。

話し終わると、いいことをしたね、とお母さんは言ってくれた。


夕飯を食べ終えて、トトの部屋でおしゃべりをしているときに、突然トトが私の過去について知りたいと言い出した。

「今日の迷子の男の子の話を聞いたときに、茜はどんな子供だったのか気になって。

無理にとは言わないんだけど」

遠慮気味にトトは言った。

トトになら話してもいいと思った。


15分後、私はトトに、私はどんな生活を送っていたのか、どうしてこの世界に来たのかを全て話し終えた。

トトは自分のことのように親身になって話を聞いてくれた。

私が話し終わった後、トトは一つ質問をした。

「茜はその茜をいじめていたやつに背中を押されて落っこちたんでしょ?

そうしたら、自殺ではないんじゃないの?」

「いいや、自殺なんだよ」

私は断言した。

「確かに、あいつは私の背中を押した。

でも私は、あいつが力を加える前に自分で床を蹴ったの。

最後まで、死ぬ瞬間まであいつの思い通りになってたまるかってね。

せめて少しは清々しく死ねるように」

「そう、だったんだ……」

トトは私を傷つけないように言葉を選んでいるらしかった。私は気を使わなくて良いと言った。同情してもらうために話した訳じゃない。




この日、私達はさらに仲良くなった。

私は自分のことを人に話すことができて、心の枷が、少しとれたような気がした。

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