第6話 火炎 Bパート
先導するドローンについて行くと森の一歩手前の開けた草原で両腕が大きなチャッカマンでつるっとした皮膚に腰巻をまいたオオサンショウウオのような怪人を発見した。
「チマチマと街で火を着けて瘴気を集めていたがもういい加減めんどくせー。この山燃やしてどかんと瘴気を集めてやるぜ!」
怪人のやる気が具現化したかのように腕のチャッカマンから火が噴き出している。
「そんなことはさせない!」
「誰だテメエ!人間ごときが俺様の邪魔をしようってか。テメエも燃やしてバーベキューにしてやろうか!」
上空に向けて炎が吹き上げ、怪人が脅してくる。
「僕がこんがり焼かれるのはごめんかな。どうせバーベキューにするなら牛肉が良いかな。」
「うるせええええ!このサラチャッカー様に焼いてもらえるなんてありがたく思いな。」
怪人が両腕のチャッカマンから火炎弾を発射してくる。スピードはドッチボールくらいでたいしたスピードが出ていないので避けるのは簡単だ。炎のドッチボールを避けながらブレードのスロットにチェンジロザリオをセットしてトリガーを引く。
「変身!」
僕の体の前面に展開した鎧が、襲いかかる火炎弾を弾きながら装着される。
「テメエ、いったいナニモンだ!」
「シールセイバー、お前たちを封印するものだ!」
「ケ、たいそうな鎧を着てやがるな。蒸し焼きにしてやんぜええ!」
叫びながら、狙いをろくに定めていない火炎弾を乱射してくる。
「く、さっきよりも球数が多いうえに速い!」
さっきまでの火炎弾は本気じゃなかったってことか。剣で弾きながら間合いに入ろうとするが数が多すぎて近づけない。
「オラオラオラオラー!いつまでそうやってられっかな!」
先生との稽古のおかげで体力が上がったとはいえこのまま防戦一方ではじり貧で先に倒れるのはこちらだろう。こうなればイチかバチか突撃するしかないか。そう思ったときセラムさんから通信が入った。
「ユウキくんごめぇん、この前の亀を封印したロザリオ、浄化終わってたのに渡すの忘れてた。」
「ちょっと、そういうのは忘れないでくださいよ!」
「テヘペロ。」
「テヘペロ、じゃないですよーーーーー!」
空しく僕の絶叫が兜の中で響かせているとドローンが僕の頭上に飛んできてロザリオを落としてきた。
「それを使えば逆転できるはず!」
「了解です。」
ロザリオをブレードにセットして発動させる。
「シールドロザリオ、ロード、サモン、シールド。」
目の前に大きな亀の甲羅に似た大きな盾が出現した。
「おうおうおう、次はつぼ焼きにされてえってことだなーーー!」
「だから焼かれたくないっての。」
とっさに盾を正面に構えて体を守る。火炎弾が盾に当たって爆ぜるが、熱が伝わってくるどころか当たった衝撃さえない。
「このまま一気に距離を詰める!ウオオオオオオォ!」
盾を構えたまま一気にサラチャッカーに突っ込む。
「な、なんで俺の火が効かねえんだ、クソ!ゾアッパ兵!」
突っ込む僕の目の前にゾアッパ兵達が現れるが構わずそのまま突っ込みゾアッパ兵達を盾で吹っ飛ばす。
「ゾアッパーーーーーー。」
「簡単に吹っ飛ぶなよーーー!」
哀れに大の字で飛んでいくゾアッパ兵を横目に突撃を続行する。
「お前も吹っ飛べええ!」
「どわあああ!」
とっさにサラチャッカーは両腕をクロスさせて身を守ろうとするが耐え切れず吹っ飛んだ。
「いでででで、てめえ跡形もなくもやしてやるーーー!」
ボガン!という音と共に火炎弾を放とうとしたサラチャッカーの腕が爆ぜる。さっきの突進で腕のチャッカマンがひしゃげてしまい、無理に火炎弾を放とうとして壊れて暴発したらしい。
「な、なんでだあああああああああ!」
「これで終わりにしてやる。」
「パワーロザリオ、ロード、エンチャント、アーム。」
シールドロザリオをパワーロザリオに交換する。盾が消え去り、代わりに腕に力が沸き上がる。
トリガーを引き必殺技を放つ。
「チャージ、パワーファイナルブレイク。」
「セイヤーーーーー!」
「どああああああああああ!」
下段からの切り上げる一撃でサラチャッカーが錐もみしながら吹っ飛ぶ。顔から地面に落ちたものの、サラリーマンはよろよろと立ち上がった。もう一撃する用意をする。
「まだだ、まだまだ燃やしたりねえええー!」
だが、サラチャッカーはそう断末魔を叫びながら爆発した。後に残ったのはあちらこちらで火が燻ぶる野原と瘴気の塊だけだった。どこかで水を汲んできて消化しないと。
「ユウキくん、今消火剤を搭載したドローンを向かわせたからさっさと封印して戻っといでー。」
「わかりました。」
さっきシールドロザリオを落としてきたドローンが今度はブランクロザリオを落としてきたので瘴気の塊を封印する。
「ブランクロザリオ、ロード、アブソープション。」
封印が終わるのを待って変身を解き教会へと家路につく。
「セラムさーん、戻りました。これ、封印したロザリオです。」
「おつかれー、じゃあまた浄化しとくね。」
「次は渡し忘れないでくださいよ。」
「はいはい、わかってるって。」
作業しながらの生返事が返ってきたので少し心配になる。
「本当ですかー。」
「大丈夫だって、しつこい男はモテないよー。」
そういう問題じゃないんだけどまあいいか、言い争うだけ無駄そうだ。
地下のラボから礼拝堂に戻るとアリアさんが待っていた。
「ユウキさん、お疲れ様でした。お怪我はありませんか。」
「はい、大丈夫です。ケガは無いんですけどもう体力がなくなっちゃってヘロヘロです。」
「ふふふ、ご無事で何よりです。そうそう、宿舎の裏で神父様がお待ちですよ。」
なんだかとても嫌な予感がする。
「わ、わかりました。行ってきます。」
「今日の夕飯は精がつくものにしますね。」
アリアさんの気遣いが僕の嫌な予感に裏付けをしてくれる。
「先生、戻りました。」
「ほっほっほ、お疲れ様。無事怪人を封印できたようですな。では終わっていない稽古の続きをしようか。」
「あ、あのー、さっき変身して戦ったんでもう体力が…」
「疲れているからと稽古を怠ればそれは戦いの時敵に足元を掬われる原因になりかねん。というわけで張り切って続きをしようじゃないか。」
抵抗空しく稽古が始まってしまった。どうやら僕に拒否権はないようだ。
「お、お願いしまーーーす。」
こうして僕はこの後師匠に稽古をつけもらい、翌朝また生まれたての小鹿になるであった。
しかしこの戦いで僕はあることを見逃していたのだ。シールドを使って吹っ飛ばしたゾアッパ兵の一体が消えずに戦線を離脱していたことに。
ラグナの街の近海に浮かぶ名もなき無人島、かつてこの島は緑にあふれた自然豊かな島だったが今は草木が枯れ果て今では生き物の気配すらない。この島には30年前、ゾア帝国がヴァルキリーズとの決戦の末封印されている、はずだった。だが島の中央にある山中の洞窟、その中の広いスペースに数名の怪人たちがいた。
「ゾア!ゾアゾゾゾアゾア。」
怪人たちはシールセイバーに吹っ飛ばされながらも帰還したゾアッパ兵の報告を聞いていた。
「あらあら、瘴気集めに行かせた奴らがいつまで経っても戻ってこないとおもったらそういうことだったのねー。アタシ達を封印する剣を持つ騎士様、一度ご挨拶に行かないとねぇ。」
怪人たちの中央に座ったリーダー格の怪人の妖艶な声が洞窟の中に響き渡るのだった。
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