第4話 鉄甲 Bパート
「おねえちゃーーん、神父様ーーーーー!」
砂浜の方からこの間の事件の時に礼拝堂に飛び込んできた子供たちが走ってきた。
「大変なんだ!今度は牛じゃなくて亀の怪物と全身真っ黒の変な人がいっぱい暴れてるんだ!」
「みんなケガは無いかい?」
「うん、大丈夫。」
「アリア、この子たちを教会へ連れて行きなさい。私はユウキ君について行く。」
「わかりました。皆、ついてきて。」
アリアさんに子供たちを任せると、僕とエレンドルさんは砂浜へと急いだ。
砂浜に着くと、鈍い光を放つ大きな甲羅を背負った人型になった亀のような怪人と黒い全身タイツに身を包んだ人が暴れていた。
怪人たちは人々が逃げ惑うさまを見ながら挑発を繰り返す。
「カーッメッメッメ、どいつもこいつもわしらを見るなり逃げ出すとは情けない。この鋼鉄の甲羅に挑もうという輩はおらんのか。」
「ここにいるぞ!」
怪人達の注意を引くために叫んだのだが、つい、格好つけて答えてしまった。
「ほほう!おもしろいじゃないか、貴様は何者だ。」
ブレードに懐から取り出したロザリオをセットしながら答える。
「お前たちを封じる者だ!変身!」
ちょっと格好良いかなと思って決め台詞っぽく言っちゃったけど、結構恥ずかしいな。
「チェンジロザリオロード、アーマー、アクティブ」
全身がスーツに包まれ、鎧が装着される。
「これがユウキ君の、戦士としての姿なのか。」
「エレンドルさん、下がっていてください。」
「ああ、すまない。」
「ふん、見えを切るだけあって、ただの人間ではなかったか。どれ、試してやろう。行け、ゾアッパ共!」
亀の怪人の後ろにいた割れた髑髏を模した仮面をつけ全身黒タイツを着た怪人たちが前に出てきた。
「そいつらはゾアッパ兵、ゾア帝国の使い捨ての兵隊みたいなやつらなんだ。倒せば霧散して復活することはないから一々封印しないでいいよー。」
頭上からセラムさんの声がする。見上げると小型のドローンが飛んでいる。モーターの音も何もしなったの全く気付かなかった。
「ユウキくんのサポート兼戦闘を記録するためのドローンだよ。君の頭上をチョロチョロ飛んでるけど気にしないで。」
あの天使様、ラボから出てこないことを除けばめっちゃ優秀なんじゃ...
「ゾア!ゾアゾアゾアーー!」
ゾアッパ兵が安直な叫び声をあげながら襲いかかってくる。
あっという間に周りを取り囲まれてしまい、四方八方から攻撃され、乱戦になる。
ただ、使い捨てにされるだけあり、戦闘力はバッファロスに比べればかなり低いく、一撃で倒せる。
だが、数が多い上に仲間がやられているにも関わらず、怯むことなく次から次へと襲い掛かってくるので体力が削られる。
「これで、最後!」
「ゾアアアアアア!」
10人ほどいたが、最後の一人となったゾアッパ兵を袈裟切りにする。
「カーッメッメッメ、なかなかやるじゃないか小僧。このタートスチール様が直々に相手をしてやろう。」
「ウオオオオオオォーー!」
ブレードで切りかかるが、タートスチールは避けようともせず、それどころか背後向く。
カキーーン!
ブレードが甲高い音ともに甲羅ではじき返される。体勢を崩したところに背後を向いたままのタートスチールが後ろに飛んで体重のかかった体当たりをしてくる。
まともにそれを食らい、数メートル吹き飛ばされる。
「その程度の攻撃では私のこの鋼鉄の甲羅には傷一つつかんなあ。」
タートスチールは背中の甲羅を自慢するように叩き、挑発してくる。
素早く起き上がり、もう一度攻撃を仕掛ける。だが、鋼鉄の甲羅ではじき返され、一切ダメージを与えることができない。
「いくら攻撃したところで無駄だぞ小僧。さて、お前に一つ聞きたいことがある。わが同胞であるバッファロスが先発隊としてここに来たはずだが行方不明となっている、何か知っているんじゃないか?」
「ああ、そいつなら僕が倒したよ。」
「ほほう、それが本当ならあの筋肉バカは油断でもしたんだろう。そうでなければ人間ごときに負けはせん。だがおかしなこともある。わしらは瘴気さえあればいくらでも復活ができるはず。なのに奴が復活していないのはおかしいだろう。」
「このブレードで封印したんだ」
先ほどのお返しにブレードを突きつけ、挑発する。
「なんだと!どうやら貴様事態は恐れるに足らんが、その剣、それは我らゾア帝国の脅威となる。貴様を殺してその剣も破壊してやる!」
先ほどまでは防戦一方だったタートスチールが攻めに転じてきた。ヒレのような手で激しく殴打してくる。反撃しても亀の割りに素早い動きで背中を向かれ、全て甲羅ではじき返される。攻撃を続けながら突破口を探っていると耳元で電子音が鳴り、セラムさんの声がする。この兜、通信機能あったんだ。
「ユウキくん、ドローンからの映像の分析が終わったよ。そいつの攻略方法は二つ。一つは甲羅を向けらる前に素早く本体を攻撃する。もう一つは、そいつの甲羅の強度はブレードの強度よりは低いんだ。だからさっき君に渡したパワーロザリオを使って甲羅ごとぶった切るか、好きなようにやっちゃって」
「好きなようにって言われても、グ!」
話に気を取られてもろに攻撃を受けてしまう。
二つの攻略方法の内、相手の動きを見切って素早く攻撃するなんてことは剣を握って間もない僕には技術的に無理。だから僕に残った選択肢はこれしかない。ブレードの右のスイッチを押してスロットを開き、パワーロザリオをセットして発動する。
「パワーロザリオ、ロード、エンチャント、アーム」
ブレードのガイダンス音声が鳴り終わるとともに、ロザリオの効果で腕に力が沸き上がるのを感じる。
「いくぞーーー!」
ブレードを上段に思い切り振り被り、攻撃する。タートスチールは余裕のある表情を浮かべながら、甲羅で攻撃を受け止めようとする。
ビキ、ビキビキィ!
今度はブレードが弾かれることは無く、逆に攻撃を受けた甲羅にヒビが入る。
「な、なにい!ワシの甲羅にヒビが入るだとぉ!」
「効いた!ならこれで決めてやる!」
「チャージ、パワーファイナルブレイク」
「小細工をしようが貴様の攻撃なんぞ効かんわーーー!」
タートスチールが焦りながらもひび割れた甲羅でもう一度攻撃を受け止めようとこちらに背を向ける。
「オオオオオオオオオオオオ!」
必殺の一撃を受けた甲羅は無残にも砕け散り、ブレードがタートスチールの本体を切り裂き吹き飛ばす。
「こ、この、鋼鉄の甲羅が破壊するとは!これではすっぽんぽんではないかーー!」
断末魔を叫び、倒れながらタートスチールが爆発する。
「ユウキくん、これで早く封印して。」
撮影しているドローンとは別のドローンが飛んできて、ブランクロザリオを落としてきた。
「ブランクロザリオ、ロード、アブソープション。」
ブレードのタービンが起動し、タートスチールの瘴気の塊を吸引し、ロザリオに封印する。
「セラムさん封印完了です。」
「オッケー、今回は倒れずにちゃんと戻ってきてねー。」
変身を解くと足元がふらついたがなんとか気絶はせずに済んだ。少しは体が慣れたようだ。
「おっとっと、大丈夫かなユウキ君。」
フラフラと歩いているとエレンドルさんに肩を支えられる。
「す、すいません。」
「構わないですよ、さあ教会に戻るとしましょうか。かなり体力を消耗しているようですから今日はゆっくりと休んでください、明日から忙しくなりますよ。」
「え、それってどういう...」
「ほっほっほ、それは明日になってのお楽しみというやつですよ。」
この時の僕はまだ知らなかった、エレンドルさんの笑顔の意味を。そして、あんな地獄が始まるだなんてことを。
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