第2話 誕生 Bパート
「キャーーーーー!」
「誰か憲兵を呼んでこい!」
砂浜に着くと怒声と悲鳴が飛び勝手いた。そして騒ぎの中心を見るとそこには
「ウッシッシッシ!さあ泣き叫ぶがいい人間ども!そして瘴気を生み出すがいい!」
プロレスラーのように筋骨隆々で身長2メートル以上はありそうな巨大な体躯に古代ローマの兵士の鎧をきた牛頭の怪人が暴れていた。
「あいつがゾア帝国の怪人!」
「あんな異形の化物がこの世にいるなんて!」
アリアさんが初めて見た怪人に恐怖し、体を震わせている。
「うーん、なかなか良い瘴気をだす人間がいるじゃねーか。もっともっと瘴気を生み出せ!」
そう言って怪人がこちらに向かってくる。
「まずい!アリアさん、逃げてください!」
「あ、足が竦んでしまって、動けないんです!」
このままじゃ、アリアさんが襲われる。そう思った時には体が勝手に動き出し、僕は怪人に向かって走っていた。
「ウオオオオオォ!」
人生で一度も出したことのない咆哮と共に怪人にプレアーブレードで切りかかる。
ガキィーン!
金属と金属が当たった甲高い音がする。ブレードは怪人のに跳ね返された。
「ウッシッシッシ!効かないなー、おでの角は鋼鉄よりも固いんだぞ。さあて、次はおでの番だ!」
太い丸太と見間違えそうな腕から繰り出されたパンチが腹部に当たり、鈍い音共に激痛が走る。
「グフ!ゲホ、ゲホ。」
必死で息をしようとするが、息をすることができない。
「そーらよっと。」
怪人はうずくまる僕の襟元を持つとアリアさん達の方に軽々とを投げる。
「ゆ、勇気さん!大丈夫ですか!」
咳き込みながらなんとか返事をする。腹部からは鈍痛がするものの、幸い骨は折れてはなさそうだ。
「だ、大丈夫です。でもプレアーブレードが効かないなんて。」
「そりゃそうでしょ、使い方も聞かずに突っ込むからそういうことになる。君、説明書読まずにゲームするタイプでしょ。変身しないと君はただの人間なんだから効くわけないじゃん。」
そんなこと言われてもとっさに体が動いたのだからしょうがない。ちなみに説明書はしっかり読む方だ。
「じゃあ使い方を教えてください!」
「当たり前だよ、そのために引きこもりの僕がわざわざお外に出てきたんだから。まずはブレードの柄の根本に付いているトリガーが下の方を向くように持つ。」
言われた通りにブレードを持ち直す。
「次に柄の左に付いている宝玉、それスイッチだからポチっとする!」
一瞬自爆するのでは、と思ったが構わずポチっとすると柄のすぐ上にあるスロットが開いた。
「あとはそこにチェンジロザリオをセットして......」
「何をごちゃごちゃしてやがる!」
怪人の怒声がセラムさんの声を掻き消す。
「お前を倒すための準備だよ、めちゃめちゃ固くて不味そうな牛野郎!人の話の腰を折るな!」
人の後ろに隠れて罵声を飛ばすのはやめてほしいんだけどな。穴が開きそうなほど怪人が睨みつけてくるから。
「ブモーーーー!誰が不味そうな牛だ!おでを倒すだと!たかが人間ごときに何ができる!」
「勇気くん、後はトリガーを引いて君が憧れ続けてた言葉を叫んで!ただの人間じゃないってとこ、見せつけてやれーーー!」
ロザリオをセットしてブレードを頭上に掲げてトリガーを引きながら、生前憧れ続けて、でもなることのできなかったヒーローになるための言葉を叫ぶ!
「変身!」
「チェンジロザリオ、ロード、アーマー、アクティブ」
ブレードからガイダンス音声が鳴り、体が黒いウェットスーツに似た物に覆われる。体の正面には動きやすく、簡素化された銀色に輝く鎧が展開され、自動で体に装着され行く。
鎧の装着が完了したとき、そこにいたのは病弱で、ヒーローに憧れていただけの少年ではなく、人々を邪悪な魔の手から守る本物のヒーローだった。
「そプレアーブレードの変身機構により纏ったその鎧とスーツは君を守り、身体能力を飛躍的にアップさせるんだ!そしてそれを纏った君はゾア帝国の魔の手から人々を守り、邪悪を封印する戦士、シールセイバーとなったのだ。」
セラムさんがものすごいナレーター口調で説明してくれた。でも確かに全身から力が沸き上がるのを感じる。
「ウッシッシッシ、人間が鎧を着たくらいでおでに勝てる訳ないだろ、かかってこい!」
「ウオオオオオオオ!」
もう一度怪人に切りかかる。身体能力が上がっているおかげで一瞬で距離を詰めることができ、攻撃はクリーンヒットした。
「ブモッファーーー!」
今度は効いた、さっきとは違い、威力が何倍にも上がっていて怪人が悲鳴を上げて後ずさる。今がチャンスと思い連続で切りつける。最初は急激に上がった身体能力に完全に油断していた怪人はついてこれず、ダメージを与えることができた。
「痛えじゃねーか!もう怒ったぞ!ブモ!ブモ!ブモ!」
大振りの頭を狙った攻撃を角ではじき返され、体勢を崩したところを今度は向こうが腕を大振りで何度も攻撃してくる。なんとかブレードで受け止めるが、一発肩に食らってしまう。
「グッ!ってあれ?」
反射的に声が出てしまったが、思ったよりも痛くない。この鎧、軽くて動きやすいのに、防御力もしっかりしている。
身体能力が上がったものの、戦闘経験など一切ない僕の攻撃では致命傷が与えられず、怪人も怒りと焦りで攻撃が雑になっていてなんとか僕でも防ぎ、かわす頃ができるため、お互いに決定打に欠けたまま戦闘が続く。
「クソ、人間ごときがおでとまともにやり合うなんてどうなってるんだ!」
怪人が頭上で手を組み合わせてハンマーのように振り下ろしてくる。
「今だ!さっきのお返しだ!」
スキだらけの怪人の腹に全身のバネを使ってタックルする。体勢が崩れたところに渾身の一撃を叩き込む。
「ブモッハアアーーー。」
怪人が吹っ飛び転がっていく。すぐに立ち上がるが、足元がふらついている。
「勇気くん、今だよ!トリガーを引いて!」
「チャージ、ファイナルブレイク。」
トリガーを引くとブレードから光が迸る。ここから先は言われなくてもわかる、これが必殺技だとことが。
その光を解き放つように怪人に向けてブレードを振り抜く!
「セイヤーーーーーーーーーー!」
ブレードから斬撃が飛び、怪人にヒットする。
「このバッファロス様が人間なんかにやられるなんて、だがおでは瘴気があれば蘇れる。次はお前をぶっ殺してやるーーーー!」
断末魔にそう叫びながらバッファロスはド派手に爆発した。
「蘇ったって何度でも僕が倒す。」
「いやいや、カッコつけてるとこ悪いんだけど、僕が何の為にプレアーブレード作ったと思ってんの!蘇らないように封印するする為でしょうが!あれ見て!」
そう言われて爆発した後を見ると、黒いもやの塊が浮かんでいた。
「あれを放置すればまた怪人が復活するんだ。だからこれを使って。」
セラムさんが銀色のロザリオを投げてくる。変身に使った物と違ってシンプルな形の物だった。
「それをチェンジロザリオをセットしたのと反対のスロットにセットしてトリガーを引いく。」
言われてた通りにセットしてトリガーを引く。
「ブランクロザリオ、ロード、アブソープション。」
ブレードの刃の一部が変形し、タービンが現れた。タービンがすごい勢いで動きだし、黒いもやの塊が吸い込まれる。
「それがプレアーブレードに付けたゾア帝国を倒す為に僕が作った封印機構、すごいでしょ。」
めっちゃセラムさんがどや顔してる。
そうこうしている内にもやを全て吸い込み、黒く変色したロザリオがスロットから排出された。
「封印完了、そのロザリオは僕が預かって浄化しとくからパスしてー。」
できるだけキャッチしやすいように投げたつもりだったが、わたわたしながらキャッチしようとして、結局失敗して頭に直撃した。
「もっとふんわりキャッチしやすいよう投げろー!」
僕のせいにされてるけど、今のはセラムさんの運動神経に問題があるような。
「まあいいや、こいつを浄化したらいろいろ実験してやる、ってラボが無いんだったーー!僕の聖域が!うわーん。」
ロザリオを見て喜んだかと思ったら今度は泣き出した。忙しい天使様だなあ。
「お、落ち着いてください、セラム様。何か大切な物を失われたのですね、お辛かったでしょう。」
アリアさんがセラムさんを抱き締めて慰めている。二人にかなり体格差があるので、はたから見るとまるで子供をあやす母親だ。
「ひぐ、ぐす。ん?この感触は...貴様でかいなああ!」
急にセラムさんがアリアさんの胸部をぽこぽこ叩き始めた。
「ちょ、ちょっとやめてください。」
「クソーーー!聖域を失い、デカ胸に慰められる屈辱!ニ方塞がりだーーー!」
六方向は大丈夫ってことは割りと平気なんじゃ。セラムさんに力がないからあんまり痛くはなさそうだけど、そろそろ止めた方がいいな。
「セラムさん、落ち着いてください。」
首根っこを捕まえてアリアさんから引き離すも、暴れ続ける。
「怒ってないで、変身の解き方教えてくださいよ。」
「それならチェンジロザリオをスロットから抜けばいいだけ!」
ロザリオをスロットから抜くと、変身が解けた。
「なんとか勝てたけど、結構危なかったな。もっとブレードの使い方とか戦い方を学ばない...と...」
あれ、目の前が、ぼやけて、意識が......
「ゆ、ユウキさん!ユウキさん!」
「あー、初めての変身の疲れと、戦闘のダメージで気絶しちゃったかー。」
こうして僕の初めての変身と戦いはなんともしまらない形で終わったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます