理由

明治37年2月10日


ロシア帝国の最後通牒に対し、


皇國は宣戦を布告。


全てはここから始まった。




バルバロッサ作戦


蕗ノ薹ハルヲマツ作戦


勅令第227号一歩も退くな!




激しさを増す戦火、


狂気に染まる戦場、


連鎖する恐怖と憎悪。




明治38年3月12日。


大韓、皇國に宣戦を布告。


連合王国、日英同盟条約における自動参戦条項の要件を満了。

時を同じく、ロシア帝国にて市民と労働者が決起。


大韓、連合王国へ先制宣戦。


ロシア帝国、内戦へ突入。翌日に大韓参戦を容認。

連合王国、対露総動員。


共和国が対日英禁輸。

連合王国、対仏動員令。

露仏同盟に従い、共和国、対英総動員。


英仏緊急交渉、決裂。


連合王国、共和国に最後通牒。




世界は――最悪の事態へと突き進む。





「ジョンブルとカエル野郎が、だと?」


一方、その報告を歓喜の交じった声で聞き入れる者がひとり。


「はっ、陛下。このまま行きますと今週中には英仏が戦争状態に突入し、戦火はヨーロッパへ拡大するでしょう。対露復讐感情に駆られるオスマン朝や、墺露対立を踏まえて二重帝国エスターライヒも介入の隙を窺っています」

英仏敵国同士で潰し合ってくれるだけでなく、我が国には介入の機会さえあるのか」


そううなずくヴィルヘルム2世。


「はっ。しかし、まだ我が国が統一国家として総力戦をやる基盤は…。」

「どこの列強も同じだ。ジョンブルもカエル野郎も、戦争の準備など出来ていない」


カイザーは不敵に笑う。


「逆に言えば、そこに介入の余地がある。」


タン、と指先を机に鳴らす。


「ミュンヘンに各国首脳を呼べ。」

「はっ…?」

「ドイツ帝国はこれまでの大洋政策を転換し、ビスマルク時代の『善き仲裁者』としての信頼を取り戻す。」


首をかしげる側近に、彼は自身の構想を語る。


「いいや、ビスマルク時代と言えば語弊になるな。"新航路"を諦めるつもりはない。――だ。」


たった6色に分けられてしまったアフリカ大陸の地図を眺めながら。


帝国ライヒは共和国に手を貸す。」

「っ、…それは」

「逆に聞こう。帝国ライヒの今の主敵は、共和国なのかね?」


欧州の地図に目を移し、カイザーは独仏の国境地帯を指し示す。


「祖国を統一した。エルザスも取った。これ以上共和国と対立する要素はほぼ残されていないし、他に共和国から何を取る?」

「……アフリカ植民地、でしょう。モロッコ問題も未解決ですし」

「モロッコは放棄する。」


ヴィルヘルム2世は大きな決断をした。


「放、棄…ですと?」

「余が思うに、もはや共和国を目の敵にする時代は終わったようにおもうのだ。祖国ライヒの敵は海上にあり――大英帝国なのだと。」


一陣の風が吹き込む。


「敵に塩を送り、以て英国を制す。」


ばっ、とカーテンが翻る。


「少々の譲歩をしてでも、共和国をこちら側へ引き込む。」


領土請求や歴史問題は断固とした立場を取り続けるが、海上立国とし大英帝国の世界覇権へ挑戦するドイツに、共和国は英国への牽制に使う用途こそあれど、敵に回すほどの価値はないと彼は言う。

なにせ永年の独仏対立は、35年前の普仏戦争で一度決着がついているのだからと。


「モロッコを譲り渡し、対独復讐感情を少しでも低減する。共和国に同調して英仏対立を煽るのだ。中国問題、ファショダ事件の再燃、火種ならいくらでもある。」


皇國が中国分割に一番手で乗り込んで長江南岸を抑えた結果、史実と比べて英国の勢力圏は3割ほど減っており、そのしわ寄せは、香港と仏印に接する広西広東の2省をめぐって英仏が対立する、という形で表面化した。

極東における英仏の勢力圏が確定できず、紛争を遺したまま第二次ボーア戦争は遅れに遅れ、1902年にやっと始まった南アフリカでのオランダ人との衝突は未だ継続中。当然、英仏協商など夢のまた夢で、エジプトを巡ってまだ英仏は争っている。


「それに……あの極東の新興国も気がかりだ。黄禍に立ち向かうニコライのヤツには、余の共感するところもある。英国を牽制することで、助けになればな」


史実では日露戦争中には確立された英仏の協力関係は、この世界ではその影すら見えていない。百年戦争依頼の禍根を未だに英仏は解決できていないのだ。

ここに帝国ライヒのつけ入る隙が生まれる。


「3B政策も懸かっている。大英帝国から主導権を奪い取るのだ!」


ばっ、と右手を広げたカイザーの勅命に、側近はハッと跪いて、忙しなく廊下へと飛び出す。


一人になった執務室。

部屋に飾ったビスマルクの遺影を眺めながら、彼はふっと笑った。


「見ていろ、ビスマルク。」


幾ばくの勝算とともに、彼は賭けへ出る。


「貴様のような外交術…余にも、できないことはない。」




・・・・・・

・・・・

・・




もうもうと立ち籠める朝霧と硝煙の中を小隊が駆け抜けていく。

今日も殺伐としたウラジオストクの朝に、太陽は昇らない。


伸びをしてみる。

気が滅入って少し席を外し、総長地下壕から出てみたものの、あいにく壕内とあまり環境は変わらないらしい。


総長地下壕の入口がある広場には、忙しなく兵士たちが駆け回り、一方では、兵士たちが疲労困憊といった顔で休憩をとっていた。

ふと、くらっと強烈な目眩が襲ってきた。

崩れてしゃがんで、苦笑を漏らす。


「……はは、4時間は仮眠を取るようにしてるんだけどなぁ。」


不眠とまでは言わないが、そんな前線連勤もこれで2週間。身体はそろそろ限界らしい。苦し紛れに回りを見渡せば、兵士に紛れて瓦礫に腰掛ける将校の姿が見えた。


見覚えのある顔だったので、覚束ない足を無理やり上げながら進み出る。


「これは…、」

「…なにか用か、若造」


疲れ切った様子ながらも、不満げにそう返す将校。

泥と灰で汚れきった襟元には、辛うじて三つ星がくすむ。

大将章だ。


われを嘲りに来たのか?」


そう言いながらも、あの時より少しやつれた顔を見せる陸軍大将、黒木為楨。

旧沿海州総軍、司令。磯城に心酔して、参謀長でしかなかった彼に総軍のほぼすべての権限を委ねてしまった迷将であり、――かつての名将だ。


「それで戦局が好転するなら躊躇なくやりますけどね。」

「……言ってくれる」

「戦局の暗転をあなた一人の責任にして罵ろうと、敵の突撃は止みませんよ。」


この有様を招いたのは、奉天攻撃以来の、僕と、枢密院と、磯城と、その他諸々の無連携が最悪の方向へ連鎖した結果に過ぎない。誰が、などと論ずのは不毛だ。


寒々しい3月の沿海州の朝に、ちょっとした湯気が立つ。


「炊き出しですよー!」


向こうのほうで叫ぶのは糧食班の若娘。このところ生活リズムなどないようなものだから、朝餉というものの存在を思い出して、少し新鮮な感覚を覚える。

ふと僕は黒木に声をかけた。


「食べに行きません?」

「自ら引きずり下ろした将を、貴様は飯に誘うのか?」

「そのつもりですけれど」

「冗談もその辺にしろ。腹も空かん」


これ以上押し問答をやっても無駄だと悟って、踵を返す。

もう少しいったところで振り返ってみれば、わずかな休養に飯を掻き込む兵士たちに囲まれて、やはり孤独に黒木だけが、何も食わず、崩れた建物の残骸に腰掛けていた。


「……はぁ、」






「ラーメンですよ。寒い朝には一番効きます」


両手にカップ麺を持ち、うち片方を黒木へ差し出す。


「吾の話を聞いていなかったのか?」

「腹が減っては戦はできぬ、ですよ」


一瞥して立ち去ろうとした黒木だが、湯気立つ匂いに誘われ、鼻をひく付かせてしまう。結局のところ人間は食欲に逆らえないのだ。


「……。うまい」

「でしょうね。3日も飲まず食わずの後は戦闘糧食ゲテモノすら美味く思えるんですから」

「貴様も、なのか?」

「攻防戦の最初の3日は水以外何も口にしませんでしたね。市街戦は序盤と終盤が肝ですので」

「……、そうか」


瓦礫の上に腰を下ろすと、二人並んで麺を啜る。

負傷者が続々と運ばれてくる総長地下壕の広場は、今朝も慌ただしい。


その中で、僕と黒木の間だけは、時間だけが静かに過ぎてゆく。


「何が、あなたを突き動かしたんですか?」


ぽつりと訊いてみた。


「あなたほどの名将ならば、理解できたはずです。」


主語も目的語も何もないけれど、伝わるはずだから。


「……奇跡だったからだ」


彼は手短にそう返す。


「見せられた…、いいや、魅せられたと言っても過言ではない」

「何をですか」

「わかるだろう?この国は、たった30年前まで封建制の未開国家だった。」


「吹けば飛ぶような弱小赤字国家が、30年で、列強と対等に張り合う?出来の悪い御伽噺だ。…この戦争が始まったときは、そう思っていた」


事実は小説より奇なり。と、黒木は言う。


「有色人種でありながら、列強国に引けを取らない唯一の国家。そんな英雄譚のような夢へ、皇國を導いてきたのが……維新の英傑、『皇國枢密院』だった。」

「なる、ほど」

「それを思ったのはきっと吾だけではない。だから…、磯城元参謀長の着任のときは、沿海州総軍の誰もが熱狂した。兵卒から将校まで、誰もが舞い上がった。」


どこか遠くで雲雀ひばりが鳴く。


「雲上の存在だと思っていた英傑の一角が、前線に舞い降りた。まるで勝利の女神

が直接援護してくれているような錯覚に陥った。沿海州総軍全体が、だ。」


けれど、それでも不自然だ。


「『英雄ノ凱旋』作戦は、素人目の僕から見ても…あまりにも無謀で、お粗末でした。いくら周囲が酔いしれた空気でも、黒木大将、あなたは一緒になって酔うほど凡人ではない。」


「――ッ、気づいていたとも…!」


奥歯を噛み、目をカッと見開いて彼は述べる。


「目を疑った。戦術の常識を、定石を全て投げ捨てたような、そんな印象だった」

「ならばなぜ…」

「貴様は、どうしても手が届かない存在というものを持ったことはあるか?」


唐突にそう聞かれた。


「自分の理解する範疇を超え、驚異的な実力、実績を残す存在を」


少し悩む。

けれど、僕は頷いた。


「……あります」


「身を委ねれば、無条件に信頼を置けるか?」


『分かたれることなき双冠』――そうだよな、あの誓いも14年目か。

そう、ふたり身を委ね合えば、何だってできるから。


「はい」


揺るぎない声でそう返すと、黒木は頷いた。


「それだ。」


首を傾げると、彼は続ける。


「それなのだ。吾が…当てられたのは」

「当て、といいますと?」

「身を委ねていれば何の心配も要らない。実に楽な話だ。だから、吾は――旧沿海州総軍はそれに甘んじた。」


悔やむように言葉を継ぐ黒木。


「磯城元参謀長の、貴様が"英雄気取り"と称したあの態度も、あの自信も。我々から見れば、英雄譚に出てくる主人公そのままだった」


今となってはただの虚勢でしかなかったあの態度も、本物に見えたのだと。


「枢密院議員の一角として、磯城元参謀長を維新の英傑と同列に考えていたのだ。誰もが元参謀長の影に――『明治維新』の成功を、あたかもそれを彼の実績のように、映し見ていた。」


僕は息を呑む。なるほど、そういう心理か。


「極めつけは、これだ」


彼は懐から一枚の紙切れを出す。


「それは?」

「元参謀長が吾に語ってみせた戦術構想だ。これを読み…吾は、元参謀長に総軍の指揮権を譲渡した。」


手渡されたそれを開いてみる。記された日付は明治37年8月10日。

奉天を攻略、敵司令部を取り逃がしたあたりの頃か。


「っ、……これは」


そこには一面、磯城の字で戦術の解説が書き込まれていた。


「理解の範疇にないだろう?けれど事実、戦争はこの通りになった。」


塹壕戦の解説と、敵の通信施設を破壊していく電撃戦の分析。消耗が主体となる総力戦の概念の説明。

間違いない。僕が満州に再現した戦争が書き込まれている。


「戦争が進むにつれ、彼が記したこの構想が次々と現実のものになっていく。先見の明どころじゃない。これは予知の域だ。恐怖したが……それ以上に、心酔した。」


違う。

それは違う。

磯城が書き込んだその文章、一語一字に目を凝らす。

これは、どこかで読んだことがある。いいや、頭に入れたことがある。


「もはや我らを超越しているとしか思えなかった。」


そう言いながらもう一枚、彼は紙を渡してきた。

そこにまた磯城の筆跡で――


『塹壕戦の解決』

・第1フェーズ "砲撃"

 注意深く調整されており短いが強烈な砲撃により、敵の撲滅ではなく敵を混乱させ、防御システムを無力化させることを目指す。

・第2フェーズ "突撃隊"

 攻撃の先鋒を務める大隊は、敵の強固な陣地を攻撃できるよう特殊部隊を編成。

・第3フェーズ "迂回"

 突撃部隊は敵の抵抗の中心を迂回して突進させる。小部隊指揮官には自分の側面を顧みることなく、敵防御のすき間へと前進する権限を与える。

・第4フェーズ "敵後方の撃滅"

 攻撃準備射撃により通信と指揮所を破壊し、浸透する歩兵も同じような施設を破壊しながら前進する。これにより、敵に士気崩壊を誘発させ、無秩序に後退させる。


「……浸透、戦術。」


声が漏れる。

黒木が振り返る。


「は?しん、とう?」

「そうだ、思い出した」


僕は口を抑えて声をひねり出す。

間違いない。磯城が予知ができるのは当然だ。

だって、これは――。


「世界史参考資料、287ページのコラム2」


一緒にこの世界へ転移してきた、あっちの世界では開きもしなかった資料集。

教科書の付随品で、義務教育セットとともに配布されるあの時代では全国の中学生が持っているはずの本。

磯城も僕も、この明治世界へ来てから、生き残るために、近代史の部分を重点的に、何度も何度も繰り返し読んだはずだ。だからこそわかる。


「丸写しだ」


この文章も、文体も、資料集から頭に叩き込んだものだ。

彼はそれを紙へ書き写し――あたかも彼が作り出したかのように、未来、史実で行われる戦術を、黒木為楨に語ってみせたのだ。


僕と磯城が手にする資料集は全く同じモノ。ゆえに、同じ展開をたどる。

必然、それは予知となる。


史実知識の力を、自分の実力にすりかえて見せて、魅せる。


「そっか。磯城――、同じなんだな。」


乾いた笑いを虚しく空に漏らす。

黒木は溜息をつく。


「その戦術は、塹壕戦の解決策としてあまりに完成されすぎている」


当たり前だ。史実の結果なのだから。


「これを一人で生み出した元参謀長の知性を、吾は今でも疑っていない。」

「知性、ですか。」

「ああ。予知……いや、予測だとしても、実力は本物だ。こんなもの、吾では到底思いつかぬ。」


風が吹き込み、粉塵を舞い上げる。


「元参謀長…いいや、あのは、貴様も、吾をも、遥かに超越している」

「………。」

「だからこそ、時々本気で思ってしまう。」


灰煙の中から、ギロリと僕に強い視線を向けて。


「あれ程の方が、『英雄』だの、『物語』など……あのような愚言を吐くはずがない。他国や誰かの策謀で引きずり降ろされたのだと――そんな陰謀論をな。」


あのとき、英雄ノ凱旋が失敗に終わった時の話か。

僕が降ろしたとも言えなくはないが、どちらかといえば磯城の自爆だろう。


「僕が磯城を嵌めた、というわけですか」

「明言はしないがな。そういう風説もある。特に、元参謀長と込み入った話をしたことのある人間はそう考えがちだ。吾とて、例外ではない」


右の掌を握りしめる。


「吾だけではない。新聞も見――」

「たった一枚切れの作戦構想ですが」


懐から手帳を取り出して、紙面を見せる。

一瞥して、黒木は絶句した。


「これは……っ!?」


ずっと頭の中で温存してきた反撃構想を、晒す。


作戦―――仮称『一号』。」


浸透戦術。

ずっとずっと、この戦争のシメに使おうと思っていた戦術。

不毛な塹壕戦を終わらせる、唯一の手段。


磯城とはまた別に構想した『浸透戦術それ』を、黒木に見せつける。


「待て…!元参謀長の予知をなぜ貴様が!?」

「予知じゃないからですよ。」


断じて予言の類じゃない。

これはただの盗作だ。


「なら元参謀長から聞かされたのか!この超越した戦術構想を」

「違いますよ。これは僕が個人で、年明けから立案してきたものです」

「っ、そんなはず…!」

「僕も磯城も酷いズルをしてるんですよ」


肩をすくめる。本当に簡単な話なんだ。


「この戦術を組み上げたのは僕ではなく、磯城でもありません。名前も顔も知らない天才の産物を、勝手に僕らが盗用してるだけです。」

「……馬鹿な」

「僕にも磯城にも、超越だなんていう実力はありません。あなたがたと同じ人間で、断じて無条件の信頼を置ける人間なんかじゃないんです。」


立ち上がって銃を降ろし、指で示す。


「僕らが一方的に信じていいのは、この銃と、自分の頭だけ」


身を委ね合うならわかる。けれど、自分だけ寄りかかるのはお門違いだろう。

そういう意味では、きっと――。


「『英雄』なんて、いないんですよ」






「……待て」


そのまま去ろうとする僕の背に、黒木が声をかけた。


「仮に貴様の言うことが真実だったとしても……忠告しておく。」


立ち止まって耳を澄ます。


「大衆は楽な方を選びたがる。例えそれが、間違ったものだとしても」

「間違い、ですか。楽の究極が、文明の発展だと思うんですけどね」


2度の追放開拓を経て、楽は正義であると身をもって理解したんだけどな。

そんな僕の言葉には答えず、黒木は口を開く。


「新聞を読んでおけ。銃後の大衆が今何を考えているか、嫌でもわかる。」


何を言うかと思えば。溜息をついた。


「遠慮しておきます。前線でプロパガンダに酔うのは御免ですよ」


変なふうに持ち上げられると、間違った自信が増幅する。冷静さを欠き、判断が狂いかねない。内地のプロパガンダを前線へ持ち込んではいけないのはそういうことだ。


「貴様は少し、国内の情勢に興味を持つべきだ」


そう続ける黒木に、失礼します、と断って足を踏み出す。


磯城が、いいや、皇國枢密院が絶大な支持を集める理由。

それを持ち上げる心理の正体を、理解できた気がしたから――収穫としては十分だ。


だからこそ。

去りゆく僕の背中に、黒木の声は届かない。


「……このままでは破滅するぞ、初冠藜。」





―――――――――

うおおおお☆300まであと少しなんです!!

お願いします…星を、星をください…(レビュー星頂けると作者の更新速度が爆上がりします)

星付く限り、絶対、エタらず、この長編を二次大戦まで書き上げて完結させるぞ!!

占冠 愁

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