真珠湾作戦

「さぁハワイ革命の季節だ!」

「あのさぁ…、毎年恒例じゃないんだからその発言は不謹慎ですよ?」


明治31(1898)年。

合衆国移民に侵食され続けるハワイ王国は、いよいよ末期を迎えていた。


史実なら5年前の明治26年には革命が発生、白人移民によって王政が崩壊しているわけだが、どういうわけかまだハワイ王国が虫の息で生き残っているようだ。


「我々枢密院が日系移民を通じて遅滞工作を行ったからな。」

「え?なんでですか??」

「ハワイ王国国王陛下がご来日された時に、聖上陛下に史実通り『日本=ハワイの国家合同』すなわち日布連邦のご提案をされたようでな。」

「…まさか、枢密はそれに乗ったと?」

「いいや。検討はしてみたものの、どのルートでも合衆国を敵に回してしまう。」

「でしょうね」


皇國の立場で言えば、合衆国が朝鮮を州に組み入れるようなモノだ。

致命的な反発を巻き起こしてしまう。


「ではなぜハワイ革命の遅滞を?」

「米西戦争を遅らせるためだ。」

「……どういうことです??」


疑問が更に増えたぞ。


「枢密院は、米西戦争への介入を伺っている。」

「は…はぁ?」


米西戦争って、キューバやフィリピンを舞台に史実線1898年に発生、スペイン植民地帝国の没落と合衆国の列強入りを世界に示した戦争…だったよな。


「なんですか、フィリピンでも領有するおつもりで?」


いいや、と松方は首を振る。


「ウェーク島…、いや、今は大鳥島だっけか…を、8年前の明治23年、つまり24年動乱の前年に先占を宣言、東京都に編入したことに代表されるように、皇國は早くも西太平洋の外郭を構築しにかかっている。」

「その一環が米西戦争介入と?」

「ああその通りだ。」


将来的な西太平洋の制海権の確保を狙っての一歩、ということか。


「24年動乱の直後には、マリアナ諸島を『南小笠原諸島』として、16世紀に日本人が南方を探検したとき寄港したのを根拠に領有主張を立ち上げた」

「随分無理くりな発想ですね…」

「勝てばいいのだ。現状米西対立でスペインに勝ち筋はないのだからな」


実に合衆国的思考である。


「合衆国のフィリピン領有を認める代わりに、南洋諸島部を皇國が領有することを認めてもらうわけだ。」

「合衆国が納得しますかねぇ…。」

「必要ならば中国の利権もチラつかせる。わざわざ太平洋のド真ん中にグアムという飛び地なんぞを作らせる必要はない。」


史実、太平洋戦争で比較的強固な防衛陣地を作られ、駆逐艦1隻を序盤から喪失するはめになった大鳥島ウェーク、そして西太平洋における合衆国の、フィリピンへの中継軍事基地グアムを、後の皇國領になる南洋諸島のど真ん中に作りたくない、と彼は言う。


南小笠原マリアナ諸島の回復を大義名分に、皇國も合衆国側で参戦する。」

「いつですか?まさか日露戦争と並行してやるとは言いませんよね??」

「そう。それだ。」

「は??」


こいつ、ロシアとスペインあわせて敵に回す気か?


「いや違う違う。問題はタイミングだ、って話だ」

「ですよねうわぁびっくりした…」

「日露交戦中は勿論、少なくとも日露戦争前はダメだ。対露戦への準備で手一杯、とてもじゃないがスペイン相手に戦争する余力はない。」


まぁ、ロシアとは国力差40倍以上の戦争をするわけだからな。

スペイン蹴ってる場合ではなかろう。


「そのためには最低でも、日露戦争後まで米西戦争勃発を引き伸ばさなければならない。その為…様々な遅延工作を仕掛けて勃発を10年ほど遅らす。」

「とすると、開戦時期は1908年ですか。」

「ああ。勝つことが出来れば…だが、日露戦の傷も癒えて来ている頃だ。タイミングとしては最高だろう。」

「そのための一手として…ハワイ革命の遅滞工作ですか。」


ハワイ併合に手間取れば、次のステップである米西戦争も必然、遅れることとなる。


「ああ。史実知識をふんだんに投入してハワイにおける合衆国移民のクーデタ計画をモスクワ日報を通じて国際社会に暴露しておいた」


へぇ、どうやら皇國諜報機関も優秀らしい。

ロシア名義で晒し上げれば、合衆国には反露感情の楔が打ち込まれる。

次の戦争を優位に進めるために様々なイベントを使ってるわけだ。


「合衆国と対立するスペイン王国を先鋭とし、英独など新大陸に警戒心を抱く欧州列強は、門戸開放政策への牽制も兼ねて合衆国を非難。ハワイの革命クーデタを今年まで5年ほど引き伸ばしてきた。」


だがそれもそろそろ限界だろう、と松方は言う。


「ハワイ王国の抵抗虚しく、もうまもなく滅亡のとき…といったところでしょうか」

「そうっ、そんな感じっ!」


秋山くん親指を立てて割り込みっ!


「秋山少佐、遅刻して来たんなら報告しましょうよ。」

「まだ議題のコアまでは入ってなかったから遅れたことにはならない、セーフ。」

「何だその理屈」


僕は至極まっとうなことを言ったはずだが、どうやら秋山の中では常識ではなかったらしい。


「少佐に普通を求めるのは間違いだぞ、大尉?」

「松方蔵相、貴方は人のこと言えません」

「私は一番普通という言葉が似合う大蔵役人だろう?な?」


彼は満足した表情で続けた。


「さて、増税の話だな?」

「どうしてハワイの文節からそこに行き着くんです???」

「馬鹿なっ!?」


松方は怒鳴る。


「このまま大蔵省の税収を増やして――という話では!?」

「そんなこと誰も言っていない」

「そんな…、その為だけに、必死に話を進めようと……していた…のに…。」


ダァン!!!

豪快な音を立てて松方は机に突っ伏した。

僕は戦慄した。


(駄目だッ、こいつら……!)


話が回らない。これ以上妥協におかしなやつが増えたら、ここは珍獣動物園になる。今後変な奴との接触を可能な限り避けようと誓った。


「…そろそろいいか?」


伊地知が咳払う。

その両肩には昇進したことを示す陸軍大佐章がついている。重そう。

というわけでとりあえず静かになった。


「さて、現状のおさらいから始めようと思う。松方蔵相閣下、ご説明を。」


松方は顔を上げた。


「面倒くさいのでこれで」


彼は懐からやけにでっかいレコード?みたいなものを取り出した。

それで、どこから持ってきたのか、ラッパ状の蓄音機に接続したのだ。

流れてくるのは、どうやら電話の呼出音のようだ。


「これ何です?蔵相閣下」

「しっ!!静かに!不敬だぞ!」


いや、静かにというのはわかったけど、不敬ってなんだ。

まさかこいつは蓄音機でも敬っているのだろうか。異端者だ、殺せ。


「――、――、――、――」


しばらく呼出をかけていると、呼出された人物が電話に出た。

そして、流れてきた音声に耳を疑った。


『……はい、ハワイ第8代女王・リリウオカラニです。皇國第122代天皇、睦仁陛下でよろしいですね?』

『ええ、お久しぶりです女王陛下。朕が睦仁です。』


「なに盗聴録音してるんですか松方さん!!??」

「不敬罪不敬罪不敬罪」

「秋山少佐は黙って!蔵相閣下あんた逮捕されるわよ!?」


裲でさえ困惑している。荒れまくりだ。


「玉音だぞ、不敬であるッ!」


松方はそう叫んで、周囲を黙らせた。

ひどい手段を使うもんだ。

伊地知なんて怒りか恐怖かで震えてるぞ。


『先のご来日時、女王陛下が仰られました提案――”皇國と王国の連邦化”についてなのですが………。現在、貴国との同盟でさえも国際情勢上不可能であると朕及び内閣は結論づけました。』

『そう、ですか。』


沈んだ声で女王はそう言った。未だフランスすら抜けていないとは言え、合衆国の国力は尚も皇國を遥かに上回る。合衆国を相手にして勝利するプランが一ミリも見えてこない。


『…王国は危機に瀕しています。感染病を持ち込み、王国国民を激減させた移民の侵略は、とどまるところを知らず、今やハワイ人を奴隷のように酷使し、我が国の産業を着々と蝕んでいます。どうか助けていただきたいのです。』


女王は日本への合邦を目指していると公言しかつ、減り続けるハワイ民族を危惧、白人に対抗するため大和民族を新たなハワイ人として迎え入れようとしていたのは史実通りだ。


『……我が国の情報機関は――失礼を承知で申しますが、貴国について…、最悪2,3年後には、合衆国白人移民がクーデターを起こし、女王陛下を強制退位させて合衆国への併合に踏み切るとの結果が出ているのです。』

『………ッ!』


奥歯を噛みしめる音が聞こえてきかねない、向こうの悲痛な雰囲気は、蓄音機を通じても伝わってくる。薄々わかってはいるのだろう。止まらない白人の増加、日に日に膨張していく傍若無人な要望と不満。もう時間の問題なのだ。


『なら、王国臣民14万の守護者たる私は…、一体どうすれば……。』


責任感に押しつぶされ頭を抱えていることだろう。

そこで天皇は場面を展開すべく、話しだした。


『朕――いえ、我が国から一つ提案をよろしいでしょうか?』

『……はい?』


女王は意外そうな声で返事をする。


『女王陛下が進めていらっしゃる、皇國移民のハワイ人化ですが……、我が国から人民を移民させるのではなく、貴国から一時的に貴国民の一部を。』

『我が国民を貸す!?』

『そうです、ハワイ民族を白人移民と連中が持ち込んだ感染症から守るためには…我が国も一役買わせていただきたく思いまして。

 極めて気候が貴国と似ていて、面積もそれなりに広い諸島がここより1860km南西、東シナ海に浮かんでいます。その名を―――』


陛下は、遥か未来、日本にとって因縁のある島となる、

その名を淡々と読み上げた。


『まさか…に我が国の国民を移住させると…?』

『全員ではありません。規模は…たったの100人弱。』

『……たった一部、ですか』

『ええ。ハワイから脱出するという形を取る以上、数は限られてしまいます。

 それでもいい、と仰って頂けるのなら自治権は当然、年金も保証します。もしも貴国に何らかの異常事態が発生しても遥か離れたまでは影響は及ばない。』


の情報を陛下は提示した。

しばし考えて、女王は決意した。


『…、いいでしょう、貴国に我が国民を貸し出します。

 その代わり、必ず返してくださいよ?』

『ええ、大丈夫です。は後々大規模に産業を開発するので、返さざるをえないでしょう。』

『………?』


大規模産業開発―――この言葉に女王が疑問を持つのは仕方ないだろう。女王にとっては、大して産業を開発する価値の無いような孤島でしかないのだから。

僕はその思い切った提案に、思わず感嘆の息を漏らす。


(女王陛下はついぞ知り得ることはないだろうな……)




―――尖閣諸島。


ハワイ人が住むことになるであろう、沖縄本島から西に410kmの絶海の孤島は、古くからそう呼ばれる。女王は、最期まで海底油田・鉱床の存在を、領土問題を踏まえた、皇國側の真の思惑まではたどり着けまい。


「…こりゃ面白いことを仕掛けたなァ、枢密は」

「違うぞ秋山少佐。ハワイ革命の遅滞は枢密院がやったが、あくまで米西戦争を先延ばすため。ハワイ王族の亡命など、枢密は端から考えていない。」

「は?じゃぁ僕らは何をやってるんです??」

「独断専行だ。」


松方は一切悪びれることなく、そう言った。


「は…はい??」

「布石だ、布石。」


松方はふぅと息を吐く。


「枢密院では基本的な歴史改変方針が決定している。…『第2次世界大戦において、皇國は連合国側に立って参戦する』とな。」


対米非戦の方向で歴史改変方針は一致している、だから万一にも合衆国と対立するような事件を起こしてはならない、それが枢密院の下した決断だと彼は語った。


「ええ…。そもそも日露戦争で勝てるかも怪しいですよ、2次大戦だなんてその賭けに勝ってからの話…取らぬ狸の皮算用もいいとこじゃ」


日露戦争の話をした方がいいと思うのだが。

ロシアの植民地になったら第2次大戦に参戦どころじゃないだろう。大祖国戦争に巻き込まれて一億特攻スターリングラードさせられるぞ。


(随分枢密院は『史実』を信頼してるようだな…。)


秋山と松方の会話から枢密の内部事情が垣間見えた気がした。

しかし、皇國が連合国側で参戦、か。まぁ架空戦記の王道ではある。


(けれども…初っ端から24年動乱で千島を喪失、3年後にまさかの北京空挺降下、そして今からハワイ女王を拉致しようとしているこのハチャメチャ火葬戦記がテンプレ展開を辿るなんて…、にわかには信じ難いな。)


この調子ならいっそ吹っ切れて革命エンドにさえなりそうだ。

そんな軽口を脳内に巡らしていると、松方がごほんと咳払う。


「史実通りに行くなんて保証は全くもってないからな。ハワイ王族も、なにかの役に立つかもしれない。」

「ですね。何かの布石になりうるものは打っておき、今できることは全てしておく。最善を尽くし続けないと潰れかねない…、なんたって帝国主義世界ですから。」

「まぁそうよね。これをこうしときゃよかったー、なんていくらでも後から悔やまれるのよ。」


だから一世紀後の世界でも架空戦記がいくらでもあるんじゃない、と裲は言う。

全くもってその通りだ。


「ではそろそろ始めましょうか。

 妥協立案の初軍事行動…、ハワイ王室脱出作戦を計画します。」


僕はそう言ってまとめた資料を配る。

それでもって、円卓の上に地図を広げた。

一面ほぼ青色で、一番右に鎮座する巨大新大陸、中央に点が数個、そこに小旗が挿してあり、さいごに左端に5つの主要島から成る列島が申し訳程度にくっついている。


「今回のハワイ王室亡命作戦は、合衆国に発見されれば対米関係に亀裂が入るかもしれません。というわけで超極秘裏に行うことになります。」


僕は、北海道から斜めに伸びる弧状島嶼のうち、屈辱の明二四年動乱・真縫領土協定でギリギリ喪失を免れ、皇國の主権が及ぶ最北の地となった島を指した。


「一年中濃霧に閉ざされ、しかも村落どころかここにたどり着く交通手段すら存在しない。合衆国の工作員が入り込むにはあまりに厳しすぎるここ―――択捉島単冠湾より、救援艦隊を出撃させます。」


駒を5つ置き、詳細が書かれた紙切れを添える。


・布哇救援戦隊 司令:秋山真之中佐

 旗艦 防巡『浪速』

    防巡『高千穂』

    戦艦改装潜水母艦『松島』

    戦艦改装潜水母艦『厳島』

    戦艦改装潜水母艦『橋立』

    装巡『浅間』

    装巡『常磐』


「なんで俺?」

「当然じゃないですか、妥協アウスグライヒの海軍将官といえば貴方しかいないんですよ。」

「は?は?意味わかんねぇ」

「意味わかんねぇのはお前のいつもの行動だ」

「蔵相閣下あなた人のこと言えませんよ?少佐はとりあえず諦めてください。」


話が迷走しかけたのでそう静止させる。


「…『戦艦改装潜水母艦』って何よ」

「知ってる?松島型っていう日清戦争で活躍できなかった軍艦」


松方が唐突に机を殴る。


「ほんとだよッ!マジでッ!!百数万ッ、払ってッ!これかよぉぉぉ!!!」


彼は再び机に伏せた。怖いよ閣下?


「明治18年に、今は亡き清朝北洋艦隊が就役させた定遠級戦艦2隻は皇國海軍にとって大きな脅威となったんだ。主砲30.5cm連装2基4門、装甲厚305mmは皇國海軍はもちろん、列強海軍が東アジアに配備していたどの大型艦をも凌駕してた。」


富士型戦艦でさえも主砲口径は30.5cmであり、精々互角であったわけで、圧倒などできない。しかも相手は千数百年の朝貢相手、中華なのだ。


「市民ぐるみで定遠級に怯えて、艦政本部も小口径主砲の搭載を拒否したからなぁ。それで機関出力や装甲を切り詰めてでも32cm砲を装備することにこだわった結果、単装砲とかいう無能装備晒すことになったわけだ。」

「ほんと!!それまじで!!!ゆっるさねぇあいつらぁっっ!!!」

「蔵相閣下落ち着いてください、あなたは市民を敵に回すつもりですか。」

「砲塔を左右に旋回すれば砲身の重みで艦が傾斜で仰角が取れず、発射すれば反動で姿勢変化、針路に影響を及ぼす超欠陥艦!艦政本部馬鹿やろぉォォッッ――!!」

「まぁそういうわけで日清戦争じゃ呉に引きこもってたわけですね。」


枢密はこれを受け、日露戦争前には32cm単装砲を降ろして、20cm後半クラスの砲を積む高速防護巡洋艦として改装就役させる予定であった。


だが、今次のハワイ作戦の妥協の作戦上奏において、ハワイ作戦に必須の新型艦種への適性が認めさせ、32cm単装砲2基2門を降ろし、内火艇昇降機の巨大バージョンを1機追加。そこに今回の、もうおわかりであろう新兵器を搭載した。


「ハワイに接近した後に、潜水母艦の昇降機クレーンによって、新兵器を海面に降ろします。」


僕は木片の如き小さな駒をハワイ海域にぶち撒ける。


「しかし、船が海を潜るとは…。こんな兵器をもうフランスは実用化しているのか…。」


伊地知がそう続けて呟いた。

3隻に搭載された計12艇の潜水艇。これを第一次突入隊5艇と第二次突入隊7艇に分けて、ハワイオアフ島へ突入させるのだ。


決戦兵器たる『潜水艦』をなんとしても開発すべく、皮肉にもこの作戦で敵対することになる合衆国から、近代潜水艦の父と呼ばれた造船技師Johnをお雇い外国人として召喚したのだ。ついでに潜水艦ドクトリンを研究しているフランス海軍に金を積んで技術者を数名皇國へ呼び、3年という酷く短い時間だったが、なんとか実用的な潜水艇を完成させるに至る。




『三十年式潜水艇甲型』

排水量 水上:260トン

    水中:270トン

長さ 48.5m

幅  3.1m

推進  新型揮発油内燃機関ガソリンエンジン2基

   360馬力電動機 x 2基

   蓄電池75個

速力 水上:9ノット

   水中:6.5ノット

航続距離 水上:5.5ノットで320海里

     水中:4.5ノットで140海里

乗員 12名

兵装 35.5糎短魚雷1基

   25糎艦外短魚雷2基


『三十年式潜水艇乙型』

排水量 水上:260トン

    水中:270トン

長さ 52.5m

幅  3.3m

推進  新型揮発油内燃機関ガソリンエンジン1基

   360馬力電動機 x 2基

   蓄電池68個

速力 水上:9ノット

   水中:6.5ノット

航続距離 水上:5.5ノットで300海里

     水中:4.5ノットで132海里

乗員 22名

兵装 12.7mm単装機銃1基




「言うなれば甲型は武装潜水艇、乙型は輸送潜水艇ですね」

「第一次突撃隊は潜航時間の長い甲型を、第二次突撃隊は潜航時間の短い乙型を中心にして編成するってわけ?」


特筆すべき点としては、推進方式を、主機のガソリンエンジンと電動機の直結方式にしたことであり、これは内燃機関によって推進する近代潜水艦の元祖になる。


「ちなみにこれアホみたいにカネかけてるからな。潜水母艦への改装と潜水艇12隻もの建造だけで軽く500万圓は吹き飛んでるんだぞ」

「ま、まぁ先行投資、もしくはノウハウの蓄積代金だと思って堪えてください…。潜水母艦も潜水艦も、使。」


将来への準備金だと松方をなだめる。

なにせ500万圓もかかっているのだ、これで失敗でしたじゃ枢密院に再追放されても文句はいえまい。


「さて少佐閣下。作戦大綱は以上です。王室救出は貴方の双肩に懸かっています。ですが――、お願い致します。」



立案作戦徹底死守厳命、それが枢密院のやり方。

現場自主裁量独断遂行、これが妥協のやり方。



「…そんなの承知の上で、やらせてもらおうじゃねぇか。」


秋山はニヤリと笑って敬礼した。

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