Data.22 確立するスタイル

「どりゃあああああああああ!!」


 満身創痍の体を無理やり動かし、今日三つ目のダンジョンのボスをぶった斬る!

 何度も斬撃を加えて脆くなっていた金属のボディは、ついに両断された。


「はぁ……やっと倒せた。メカロポリス周辺のダンジョンボスは、みな金属製だから硬くて仕方ないな」


 しかも、こいつは歯車を飛び道具として飛ばしてくるタイプだった。

 体に備え付けられた機能でスキルでもないし、やたら数も多い。

 知らぬ間に被弾しダメージが蓄積していた。

 ギリギリの勝利だ。


「でも、これでお目当てのメダルの素材は集まったんじゃないの?」


「ああ、おかげさまでね。このダンジョンは道中も難易度が高かったし、ドロシィがついて来てくれて本当に助かった」


「そうやって素直に褒められると悪い気はしないねぇ。ま、これ以上はおだてたってついて行かないけどね」


「今日はもうログアウトするのか?」


「僕のVR装置は旧式なんでね。過度の長時間プレイは体に毒さ。メカロポリスに戻ったらお別れだね」


「また一緒に冒険してくれるか?」


「そのためにフレンド登録したんでしょうが。乙女にわざわざ言わせるんじゃないよ。さ、ボケっとしてないで帰るよ。帰るまでが冒険なんでしょ?」




 ● ● ● ● ● ● ●




 メカロポリス帰還後、ドロシーは宣言通りログアウトした。

 また用があればメッセージを送れとのことだ。


「初めて会った時は胡散臭い人だと思ったけど、一緒に遊んでみてよかったな」


『こういう思いがけない出会いがオンラインゲームの良いところだにょん! リアルと違う姿になれるから、気が大きくなってトラブルにもなりやすいけど、それだけがオンラインゲームではないにょん!』


「ああ、今回の件で認識を改めたよ」


 と、振り返りが終わったところでメダル生成に移ろう。

 生成するメダルは【ビームシールド・ドライヴ】だ。

 まず名前がカッコいいし、盾の中でも特別感がある。

 それにビームって重さがなさそうだから、二刀流しながら盾も使えそうだ。


「ビームシールド……生成!」


◆ビームシールド・ドライヴ

 ゴールド/アーマー

 属性:盾/機械

 基礎防御力:20


 =特殊効果=


 ①ビームシールド

 基礎防御力100、光属性の盾を展開する。

 発動時間は3分間。

 3分経過または自プレイヤーが「クールダウン」を宣言した場合、この効果は発動できない。


 ②クールダウン

 ①の効果が①自身の効果によって発動不能になった場合に発動する。

 1分後、①の効果を発動可能にする。


 ======


 ほう、ビームシールドは最大三分間しか使用できないのか。

 その後、一分間の休みを挟まないと再発動は不可能と……。

 この仕様だと盾としての信用度は下がってしまうなぁ。


 でも、逆に言えば三分ごとに新たな盾を作り直すということ。

 耐久が下がってボロボロになった盾も、一分間待てば新品に戻る。

 これは利点と考えて良いな。


「とりあえず、一回セットして見た目をチェックしよう」


 メダルをスロットにセット。

 右腕に秘密メカ感たっぷりの腕輪が装着される。

 これが発生装置ドライヴか。


「シールド展開!」


 ブォン!

 長細い六角形の盾が展開される。

 ビームの色はロボットアニメでおなじみのピンク色だ。


 なかなかサイズはデカいぞ!

 ギリギリ体を隠すことが出来そうだ。

 それでいてビームは半透明。

 盾に隠れてもそれなりに視界は確保できる。


 そして、思った通り軽い!

 盾を展開しながら剣を振り回すのは簡単だ。

 まあ、デカいから気を遣わないと何かにぶつけてしまいそうだけど。


「弱点がハッキリしてる分、性能はかなり高いな。これはモンスター戦でも対人戦でも役に立ちそうだ。でも、アーマーメダルを二枚入れるとなるとカスタムに困るな……」


 今はスキルメダルを四枚入れてるから、それのどれかを外すことになりそうだ。

 破断粉砕撃、火炎旋風、ハイジャンプ、ヒールポーション……。

 どれも愛着があるし、悩むなぁ。


『シュウト! 目当てのマテリアル以外にもたくさんのメダルを手に入れたにょん! 他に作れるメダルがないかもチェックしておくにょん! 思いがけない強力なメダルが手に入るかもしれないにょん!』


「それもそうだな」


 メダルカスタムを確定させた後に良いメダルが生成できることに気づいたら、また考え直しだ。

 まず、いま手に入るメダルをすべてチェックしておこう。


「……ん? なんだこれ? さっき作ったビームシールドを素材にして、新しいメダルが作れるぞ!?」


『マテリアルは素材専用のメダルってだけで、他のカテゴリーが素材に使えないとは言ってないにょん。というか、説明しなかったかにょん?』


 された気もするような、しないような……。

 今はどっちでもいいか。

 それより、このメダルはかなり強力だぞ!


「迷わず生成!」


◆ビームシールド・ドライヴⅢ

 特性:トライ・ドライヴ

 このメダルの特殊効果①は三つまで同時に発動できる。

 ダメージ処理、効果処理は個別に行う。


 プラチナ/アーマー

 属性:盾/機械

 基礎防御力:20


 ①ビームシールド

 基礎防御力100、光属性の盾を展開する。

 発動時間は3分間。

 3分経過または自プレイヤーが「クールダウン」を宣言した場合、この効果は発動できない。


 ②クールダウン

 ①の効果が①自身の効果によって発動不能になった場合に発動する。

 1分後、①の効果を発動可能にする。


 ======


「性能に変化はないけど、三つシールドを展開できるようになったぞ!」


 俺を囲むように三つのビームシールドが浮遊する。

 このシールドたちは俺の意思で自由に動かせるようだ。

 ただ、あまり体から離れさせることは出来ない。

 大体1メートル強がシールドを飛ばせる限界か。


『三つに増えるだけですごく安心感が増すにょん! これにアルマジロアーマーとコレクトソードの効果も加えれば、シュウトは鉄壁だにょん!』


「ああ、それにビームシールドが三つに増えたことで、一つがクールタイムに入っている間にもう一つを使うことが出来る。一つのみの運用なら盾が使えない時間はなくなった」


 俺の防御力はとんでもない事になる。

 受け身の戦い方に変わりはないが、このメダルを手に入れたことで俺の中で答えは出た。


「チャリン、メダロシティを目指す時が来た」


 俺は……俺の道を行くぞ。

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