Data.5 最初のフィールド探索
「うおおおおおおおおお!!!」
迫り来る巨大な熊フォレストベアをぶった斬る!
腹を切り裂かれた熊はドスンと地面に倒れ伏し、光となって消えた。
後にはメダルが一枚残るのみ。
このゲームにグロ描写はほぼない。
「よし! マテリアルメダル【森熊の毛皮】ゲット!」
『やったー! やっとドロップしたにょん!』
俺はチャリンに導かれ、初期村からPK禁止エリアの街道を通り『加護の森』に来た。
ここももちろんPK禁止エリアだ。
初心者でも安心して冒険がたのしめる。
さすがにこういう場所も用意してあるよな。
『これで【毛皮の鎧】メダルを生成できるようになったにょん!』
「なかなか手間取ったな。このゲームにはレベルとかないから、目当てのメダルがドロップしなかった時の無駄骨感がすごい」
『でも、戦えば戦うほどプレイヤースキルは上昇するにょん! それもまたレベルアップだにょん!』
「まあ、そうかな」
『さあさあ! 次のモンスターを狩りに行くにょん! 良い剣とドロップ率を上げるメダルを持ってるんだから、文句ばっかり言ってたらバチが当たるにょん!』
次に狩ったのはグリンスライム。
緑色のぷよぷよしたゼリー状の生物だ。
物理攻撃無効なんてこともなく、何度か切ったら簡単に倒せた。
落としたメダルは
メダルの絵柄を見てるだけでも口の中が苦くなる。
雑魚が落とすメダルでもデザインがしっかりしてるのはこのゲームの良いところだな。
お次は耳の部分が大きな葉っぱになっているウサギ、ハーブラビット。
こちらもコレクトソードの敵ではなかった。
落としたメダルはMメダル『ヒールハーブ』。
そして、
「モンスターがマテリアル以外のメダルを落とした!?」
『落とすモンスターもいるんだにょん! 基本的にマテリアルよりもドロップ率が低いからゲットできたらラッキーだにょん!」
いわゆるレアメダルってやつか!
それは男心をくすぐるなぁ……。
すぐにチェックだ!
◆ハイジャンプ
ブロンズ/スキル
属性:肉体
基礎攻撃力:0
最大使用回数:1
インターバル:0秒
使用回数回復:30秒
(TE回復化)
=効果=
高く跳躍する。
「あ、レアといってもブロンズなのか……」
『でもでも、これは結構便利なスキルだと思うにょん! 移動にも役に立つにょん!』
確かに高く跳べるというのは移動にも戦闘にも応用がききそうだ。
それに再使用までの時間は30秒ときた。
気軽にぴょんぴょんできるな。
効果テキストは短くシンプルなほど強いなんて言うし、案外当たりかも。
「よし、目的のMメダルはゲットできたし帰るとするか」
『そうするにょん!』
● ● ● ○ ○ ○ ○
加護の森の近くにある街『パーラ』。
初期村から街道を通ってすぐ着く中規模の街だ。
ここは初期村と違って俺以外のプレイヤーも普通にいる。
やっと、オンラインゲームが始まった感じがするな。
『さあさあ! そこらへんのベンチにでも座ってメダルの生成を開始するにょん!』
プレイヤーに姿を見られたらまずいチャリンは消え、脳内に声だけが響く。
「ベンチに座ったらメダルの生成は出来なくないか? それ用の店とかに行かないと」
『ちっちっちっ~。このゲームはそんなリアルな生活感を
なんでも、このゲームには武器屋、防具屋、素材屋などのお店はほとんど存在しないらしい。
だがしかし、それは建物が存在しないというだけだ。
街エリアに入れば自動的にプレイヤーのメニュー画面にメダルの購入ができるページなどが追加される。
購入できるメダルが街によって違うなどのRPG要素はしっかり残っているため、まさに楽しさそのまま手間だけ省いていると言えるな。
『建物の中で武器を選んで買うというのも確かにVRゲームならではの楽しさだけど、何百万人も遊ぶ可能性があるオンラインゲームだからこそストレスになることもあるにょん!』
「シンプルさ……メダリオン・オンラインの理念はこういうところにも生きているのか」
『まあ、実際はお店の店員NPCを作るのが面倒ってのもあるんだにょん。運営は極力AIを使わない方針だから……』
「トラブルも多くなるし仕方ないんじゃないの? リアリティを重視しない俺にとっては、現実みたいに店の前にぞろぞろ並ばなくて済むからありがたいけど」
『そう言ってくれるとありがたいにょんねぇ~。さあさあ! メニューを開いてメダル生成のページを選ぶにょん!』
メダル生成のページには、今持ってるMメダルで生成できるメダル一覧が表示されている。
メダルの生成には対応するMメダルとお金であるコインメダルも必要だ。
コインメダルはモンスターを倒せば必ず落ちて、勝手にボックスに入る。
Mメダルが落ちるのは確率なので、確実に落ちるコインの方が余り気味だ。
『生成するのは【毛皮の鎧】と【ヒールポーション】だにょん! 序盤で作れるメダルの中では断トツでおすすめだにょん!』
「了解!」
素直にその二つのメダルを生成する。
というか、これを作るために素材を集めたから他に作れるものがない。
◆毛皮の鎧
シルバー/アーマー
属性:鎧
基礎防御力:20
「これは……普通の防具か」
『そうだにょん! 序盤で手に入るMメダルから作れる防具にしては防御力が高いにょん!』
「それはわかってるけど、特殊効果がないとなんか味気ないな」
『感覚がマヒしてるにょん! そんなバンバンすごい効果を持ったメダルは手に入らないにょん! 普通は!』
「わ、わかってるって。それで次のメダルは……」
◆ヒールポーション
ブロンズ/スキル
属性:回復/薬
基礎回復力:10
最大使用回数:10
インターバル:0秒
使用回数回復:3分
(TE回復化)
=効果=
傷を癒やす薬の入ったビンを出現させる。
ビンは使用後すぐに消える。
「こっちは回復か! これは俺にも価値がわかるぞ」
回復ができるかできないかは大きな違いだ。
たとえその回復力が低くとも、ゼロとそれ以外では大違い。
これでフィールドでも長く安心して戦えるようになる。
『うんうん! 新しいメダルを手に入れた時はそういう嬉しそうな顔をするにょん! そして、これでメダルは6枚! あと1枚はショップで好きな物を買うといいにょん!』
俺のメインウェポンは片手剣。
それに似合うものはやっぱり盾だ。
ということで、ショップ画面で【木の盾】を購入!
◆木の盾
ブロンズ/アーマー
属性:盾
基礎防御力:12
特に語ることもない性能だが、攻撃を受け止める物があるとないでは大違い。
これで俺のメダルスロットに7枚のメダルが揃った!
●W クロガネ 【コレクトソード】
●A シルバー 【毛皮の鎧】
●A ブロンズ 【木の盾】
●A ゴールド 【強奪の勲章】
●S ゴールド 【火炎旋風】
●S ブロンズ 【ハイジャンプ】
●S ブロンズ 【ヒールポーション】
『ルーキーではありえないメダル構成だにょん! 誇っていいことだにょん!』
「これでそのルーキーコロシアムってイベントには勝てそうか? 俺はまったく詳細を知らないけど」
『初心者だけのイベントにクロガネのメダルを持ち込んで勝てないわけないにょん! でも、絶対ということはないから、これからもしばらく加護の森でメダルをコツコツ集めるにょん!』
「……コツコツねぇ。それも悪くないけど、なんかもっと強い敵と戦えたり、レアな素材が手に入る場所はないか?」
『あー! もう飽きたって顔してるにょん!』
「いや飽きてはいないさ! でも、ログイン早々壮絶な戦いを体験した俺にとって、今の戦いはぬるすぎるというか……メダル集めにしてもスリルが欲しいって言うかさ?」
『まあ、気持ちはわかるにょん。それにゲームは楽しいことをするのが一番だにょん! 仕方ない! とっておきの穴場を紹介するにょん! ちょっと移動に時間がかかるけど大丈夫だにょん?』
「ああ、時間はたっぷりある」
『それじゃあ、さっそく出発だにょん!』
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