第6話 真っ赤な部屋
赤、赤、赤。
部屋に飛び込んだ私が感じだのは、赤だった。冷静に視界を捕らえることができていれば、赤は部屋の風景のほんの一部でしかない。だが、私の目には、部屋全体が濃厚な真っ赤な色で染められているように見えた。
咲は椅子に座って机に上半身を臥せっている。そして、だらんと垂れ下がっている左手の手首からは赤い血が滴り落ち、カーペットに黒い染みを作っていた。
その後の記憶は疎かだ。『おばさん、救急車を呼んで』と叫んだ声が聞こえた記憶があるが、はたして私が本当にそう叫んだのか、それとも、後から記憶が捏造されているのか。咲の血を見た瞬間、言葉にできない恐怖で私の思考は停止した。
赤く染まった部屋と救急車の赤いサイレンの光が、いっしょになって私の記憶を作っている。
すべてが現実のことなのか、それとも夢の中のできごとなのか、実際に目の前で起きたことなのか、想像でストーリーを作っているのか。
担架に乗せられた咲は、泣きながら咲に寄り添う母親といっしょに救急車で病院に運ばれ、一命をとりとめた。
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