第4話 緑の部屋
「トレーニングルームみたい」
中学を卒業し、互いに違う高校に入学して半年。久々に咲の部屋を訪れると、グリーンのヨガマットや、小さなダンベルが棚に置かれている。ハーブの爽やかな香りが、私の心を落ち着かせる。
「チアリーディングを始めたから。レギュラーになるには、家でも筋トレしたり、ストレッチとか倒立とかの練習しないとね」
咲の通う学校のチアリーディングチームは、国内トップクラスの強豪だ。時々、テレビでも取材され、特番になったこともある。卒業生の中には、本場アメリカのプロチームに行った人や、芸能人になる人もいる。
「テレビで見たけど、レギュラーになるのは大変なんでしょ?」
「うちの学校は、全部で60人いてレギュラーは12人。三年生8人、二年生4人で一年はゼロ。でも、私は一年でレギュラー狙ってるから」
さすが咲だ。もともと華やかな顔立ちで運動神経もいい。中学の時は受験の失敗を引きずって、どこか自信無げなところが本来の明るさを十分に発揮されていなかったが、高校入試でリベンジし、今は向かうところ敵なしという感じだ。
「学校はどう?」
「名門校だけあって、みんな賢くて優秀なのが揃っている。裕福な家の子が多いけど、そんなに気取った感じはしないよ。それに、10代の女の子なんて結局はどこに行ったっておんなじだよ」
昔は、上流階級の人間は、言葉や立ち居振る舞いからして下々のものとは全然違っていたが、現代の均質化された社会ではそこまでの差はないのだろう。
「一年生レギュラーになって大会で優勝したら、雑誌やテレビからも取材が来るかもしれないから、その時は、幼馴染としてインタビューよろしくね」
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