お宝

ギイィィ……と音を立て、ミリタリーショップのドアを少し開いたところで違和感を覚える。僕の経験が警鐘を鳴らした。


軽い。

普通、1年近く使われていなかったドアは多少は固くなっているものなのだ。

にも拘わらず、このドアは想定以上にスムーズに動いた。

要するに、ここにいまだに出入りしている者がいる可能性が高いということだ。


ゾンビなのか、生存者なのか。


前者ならこの中にいる可能性は高いだろう。うまく行けば気付かれずに倒せるかもしれないが、転倒する際に大きな物音を立てられた場合は厄介なことになるかもしれない。周囲のゾンビ達が集まってくるかもしれないからな。


特に問題なのは後者だった場合だ。

ミリタリーショップは生存者にとってはホームセンターと勝るとも劣らない宝の山である。

銃刀法がある日本とは言え、ここには人体を破壊したり隠密行動したりするのに間接的に役立つ物品……例えば暗視スコープや迷彩服、ナイフが通らず素手で車のガラスを割れるグローブ等があるからだ。

品揃えの良い店ならば、届けは必要だが大型の刃物が売られてたり、何故か届けすら必要ないボウガンや機械弓コンパウンドボウ等の直接人体を破壊できるものまで置いてあったりする。

余談であるが、時間ができたら機械弓を習得したいと思っている。以前自衛隊員のひとりがコレを使ってゾンビを倒したのを見たことがあるが、その威力、飛距離、狙撃の正確性には目を見張るものがあったのだ。彼曰く、メンテナンスさえ覚えればアーチェリーよりこっちのほうが習得は早いし強いよ、とのことだったな。


話を戻そう。

そんな宝の山を、他者に奪われて気持ちのよい者などいないだろう。罠ぐらいは仕掛けてあるかもしれない。気を付けなければ。


……と、ここまで考えて思い直す。まあ、生存者の線はほぼ無いだろう。

中にいるにせよ不在にせよ、そんな大切な場所なら普通はカギをかけておくだろうからね。それを思いつかないアホなら、このゾンビだらけの都会で生きていけるはずはないしな。

……であれば、ゾンビか。

しかしながら、ゾンビがミリタリーショップに用があるとは思えないし……。


何にせよ、ケチがついたな。

普通ならここでこの物件はパスするのが賢明なのだろうが、少し開いた扉から暗視スコープごしに見える店内のお宝たちを前に、僕は判断を間違えたのであった。


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アキノヨゾラ こねこちゃん @coneco

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